24話 不思議な依頼
朝。朝食を済ませたのち、ルベたちの見送りに行った。
「では、またどこかで。それまで、太陽も貴方も狂うことのありませんように」
「またお会いできるのを楽しみにしてますよ」
「また会おうな! ウィロー、エラルド」
丁寧に頭を下げるユーストマ先生とフェイさん。そして大きく手を振るルベ。
「太陽が皆さんの旅路を照らしますように。またお会いしましょう」
少しずつ小さくなっていく三人に手を振った。またどこかで会える、そんな気がする。
「さて、いったん宿に戻ろうか……エラルド?」
「……」
「大丈夫? エラルド?」
「あ、うん」
今日の朝から、エラルドはなんだか上の空だ。昨日の夜も体調がなんだか悪そうだったし。
「体調が悪いなら、宿で休んでていいよ? 今日は急ぎでやることもないし」
「ありがとう……でも、動いてた方が気がまぎれるから」
「そう……無理だけはしないでね」
心配だけど、本人が決めたならそれに従うまで。
宿に一度戻って、私の部屋に集まって作戦会議を始める。
「さて、これからレイファンに向かうにあたって、しなきゃいけないことをまとめるよ」
机の上に、いつもの手帳を置きながら切り出す。
手帳に書かれているのは、今から向かうレイファンに関する情報だ。
「ラゼンスクから東に向かうと、国境のトンネルがある。そこを抜ければレイファンに行ける」
手帳の上の簡易的な地図に印と線を書き込む。エラルドの赤い目がペンに沿って動く。
「ただ、レイファンはこの大陸の中でも有数の降雪地帯なの。だから、それ相応の装備が必要になってくる」
箇条書きで、手帳に必要な装備を羅列していく。どれも、アウローラにおいて使うことはほとんどないものだ。
「あとは旅の資金も。レイファンは大きく文化が違うから、依頼をすぐに受けられるとは限らないし……おーい、エラルド?」
何やらまた考え事をしているようだ。目の前で手を振ると、やっとこちらに気が付く。
「ごめん……ちょっと疲れてるのかも」
「そっか。全然出発は急がないから、今日くらい休んでおいたら?」
「もうちょっと頑張ってみるよ。足は引っ張らないようにするから」
「そう……」
覚悟の決まった顔に言い返すことはできなかった。とりあえず、話を続ける。
「つまり、やるべきことは資金集め。依頼をこなしながらちょっとずつお金を貯めよう」
必要なお金とかかる日数の概算を手帳に書き込む。進むべき道が見えてきた気がする。
「じゃあ、今日から依頼を受けよう。街の中心部に仲介所があるのは確認済みだから」
「わかった」
椅子から立ち上がり、手帳をしまう。そして、エラルドの方に目を向ける。
「さ、行こ」
「うん」
◇
仲介所に赴いた後、私たちは東に向かって歩いていた。
……なんで?
「こんな変な依頼を受けることになるなんて」
そんな独り言をつぶやきながら東……アウローラとレイファンの国境を目指す。
遡ること、数時間前。仲介所で条件に合った依頼を探していた時。
正直、良い依頼はほとんどなかった。種まきや収穫の時期でもないので、依頼のほとんどは建築系だった。当然、その方向の依頼を受けることはできず……
そんな中、見つけたのがこの依頼だった。
依頼内容は「レイファンの国境からラゼンスクまで要人の護衛」、依頼主は魔災管理局だった。
詳しく話を聞いたところ、アウローラの東側地域における魔獣の発生が確認されたため、魔獣退治のエキスパートをレイファンから呼び寄せたのだという。
でも、そんな強い人に護衛は必要ないのでは……と思ったが、そうでもないらしい。
その人物は、とんでもない方向音痴なのだという。だから、外敵から守ってほしいというより、確実に魔災管理局までその人物を連れてきてほしいとのことだった。
「国境越えたらここまでは一本道なのに……一体どんな人なんだろう」
ラゼンスクから国境までは歩いて半日くらい。エラルドの体調もあって、できれば遠出のない依頼を受けたかったのだが……
今のところは横を歩くエラルドの体調に変化はない。朝よりも元気になっているようには見える。相変わらず、静かなままだけど。
これからいったいどんな人が待ち受けているのか。半ば強敵と相対しに行くような心持だ。
そんなことを考えながら、太陽に照らされる広野の中の一本道を進んでいく。




