過去編2(カーラ視点)
柔らかい風が頬を撫でる。まぶたの外に、暖かい昼下がりの光を感じる。一面に立ち込めるのは土と、草木と、花々の香りだ。
華やかなその匂いを胸一杯に吸い込んで、カーラは瞳を開いた。
春だ。
地平線まで見えそうな広大な草原には所狭しと色とりどりの花々が咲き誇っている。さんさんと降り注ぐ日差しに温められた花の蜜が芳醇な香りを醸し出し、うたたねでもしていたようにぼんやりとしているカーラの思考に少しづつ覚醒を促した。
草原に数本立っている大きな木のうちの一本、そのふもとにできた木陰にちょこんと座っている自分に気がついて、カーラはようやく、自分の意識がそこに『ある』ことを自覚する。
――あれ?
しかしカーラは自分がいる場所に違和感を感じるよりも先に、目の前で背中を向ける人物を視線で追っていた。
後ろ向きでもわかるのはその人影がおそらく、自分とそう年の離れていない男性であるということ。たっぷりの布地を使った、古めかしいチュニックのような衣装を着ているということ。金色の糸で縁取りがされているだけでなく、ところどころに豪華な刺繍が施されたそれは明らかに、実用向きではない。しかし身分の高い人間が着るにしてはあまりにも、その服の形は古かった。まるで、古い時代を演じる俳優が着るような服だ。
花畑にしゃがみこんで何事か作業していたその男性が立ち上がる。ふと振り向いたそのソロにそっくりな姿を見て、カーラの鼓動が跳ねた。
柔らかそうな髪も、柔和な顔立ちもソロそのものだ。ただしその仮面に覆われていない瞳は、カーラの右目と同じような茶色で、だけど彼は間違いなくソロだとカーラは思うのだ。
だって、そうでもなければ、姿を見ただけでこんなに胸が苦しくなるはずがない。
『約束するよ、×××』
この世の春、人生で最良の日、とでも言うかのようにとろけるような笑みを向けて、ソロがカーラのいる方向に一歩づつ近づいてくる。
手を指し伸ばして、彼を迎え入れたいような気がする。
だけど、彼が呼びかけた、聞き取れなかった名前が気にかかる。
『僕はきっと成し遂げて見せる。竜たちの暴挙を粛正し、人間の手にこの世界を取り戻す。それでね……』
そこまで言うと、瞳の色が違うソロは明らかに口ごもった。
頬を赤く染めてもごもごと、ぎりぎり聞き取れるほどの音量で、
『この夢を叶えたときに、きみに隣にいてほしい。……だめ、かな?』
作っていた花冠をかざしてそう言った。
自分に向かってソロがそう言ったのだと思ったカーラは嬉しかった。けれどそんなカーラには目もくれず、ソロはカーラの眼前を素通りする。
『システィーナ』
カーラの真後ろにいた女性を、ソロはそう呼んだ。
『この世界が歪んでいるのは竜のせいだ。人々から搾取を繰り返して肥え太った竜族。神と崇められる彼らを、誰かが倒さなくちゃ、この先人間の未来はない。だけど、そんなことは不可能だってみんなが言うのを僕たちは聞いたね。恐れ多い、神を殺すだなんて罰当たりだって。この世界の分銅である竜を殺せば、どんな呪いが降りかかるかわからないぞって忠告してくれる人もいた』
ソロが甘い瞳で見つめる女性が頷いた。水かと見まがうほどにたおやかな、長い黒髪と透き通るように青い瞳。
その色彩だけでなく、どこか姉に似ている雰囲気を持つ女性。
カーラは疑問に思う。
なぜ二人は、自分がまるで視界に入らないかのようにふるまうのだろう。
『長い旅になるだろう。きっと孤独な道のりだ。でもそんな生き方でも、隣に誰かがいてくれて、支えあうことができるなら悪くないと思うんだ。……そう思ってしまうのは、甘えかな』
女性はふるふると首を振ってソロに向き直った。二人は手を繋いで、指を絡めて、至近距離で見つめあう。
それを見ているだけでなぜかひどく傷ついた気持ちになって、ようやくはっきりしてきた意識を操ってカーラはそこではじめて声を出した。
「ソロ? こっちを向いて。その人は、誰?」
木陰から立ち上がって二人の側に向かって歩き出したカーラの腕を、後ろから力強く掴まれて引き留められた。
「いけない。あれは幻、ただの夢だよ」
カーラは振り返って息を呑んだ。カーラの腕を掴んだその人もまた、ソロにそっくりだったからだ。
そんなのおかしい。だって今まで目の前で、ソロは黒髪の女性と語り合っていたのだ。もう一度振り返ればやはり、黒髪の女性と瞳の赤くないソロは、まるで付き合って間もないカップルのようにいちゃいちゃしている。
だから目の前の彼がソロのわけない、はずだ。
それに何よりソロと違うのは、目の前の男性はその瞳が、は虫類のように瞳孔だけが縦に長い。
カーラは驚いた勢いのまま、ほとんど無意識に問いかけた。
「誰?」
するとソロに似ている男は口許を歪めてこう言った。
「さて、誰でしょう」
ぼんやりしていた意識もだいぶはっきりしてきて、カーラは自分がどこにいるのか改めて疑問に思った。
自分は講堂にいたはずなのだ。年少クラスの演劇を見ていたはずなのだ。ソロがとなりにいて、そこでシスルが歌うのを、聞いていたはずなのだ。
なのになぜ、春真っ盛りの原っぱに突っ立っているのか。
「ここ、どこ……?」
誰に告げるでもなく、茫然と呟いてしまう。
咲き乱れた花々が、春の心地よい風が、昼下がりの暖かい日差しが、自分を包んでいる。薄暗くて涼しい講堂とはものすごい落差だ。
もしかしたら、隣に座っていたはずのソロが魔法で瞬間転移させたのではないか。そうでもないと説明がつかない気がする。でも、そうだとしても、なんのために?
「あー、全然違うよ」
まるで心を読んだかのように竜眼のソロが言って、カーラはびっくりして彼を見返した。
考えを口に出していたわけはない。だとしたら、この人は自分の考えを読み取れるのではないか。
「そりゃ、読めるさ。ここはキミの心の中。器の中だと言った方が分かりやすいかな? 物質界の人間は夢でしか意識の世界を知覚できないからね『夢の世界』なんて言い換えてもいいかもしれない」
「つまりわたしは……夢をみているってこと?」
「まあ、その認識で、当たらずとも遠からず、といったところかな」
「……どういうこと?」
要領を得ない返答にカーラは思わず口に出して聞いた。
「キミの器はカロルドに利用されていたんだよ」
「え?」
「ボクはずっとここにいたから知ってる。カロルドはずっと、キミの器に干渉することを試していた」
目の前の彼が、何を言いたいのかさっぱりわからない。
そんなカーラの考えが伝わったのかもしれない。彼は眉を一度吊り上げてみせると、カーラに言い聞かせるように説明を始めた。
「ここはキミの器の中。キミの魂はここに閉じ込められていて出られない。なんでそんなことになったかというと犯人はカロルド。あの子はキミに暗示をかけて器の防御機能を奪い、キミの心の深いところから魔力を根こそぎ奪うまじないを仕込んだんだ」
「ええ!?」
「器と心は同じものだっていうのは知ってるだろう? あの子はキミにちょっかいをかけることで動揺を誘って、器へアクセスしやすくしたんだよ。……たとえば、食堂での告白。キミはソロへの気持ちをアピールして平静を保とうと努力していたけれど、それ以来視線も思考もカロルドを追っていただろう? 心を操るってそういうことさ。思考に方向性を持たせて誘導して、それ以外のことを考えにくくさせる」
「……よく、わからないんだけど。つまり、最近わたしが悩んでいたカロルドの思わせぶりな行動は全部、わたしをここに閉じ込めるための罠だったってこと、よね」
「そうなるね」
かみ砕いて説明しながら、竜眼の少年はカーラが失恋した少女のように泣くかもしれないと思った。しかしカーラは、うつむいたまま身をよじり出した。よく見ると顔が真っ赤に染まっている。
「ひ、ひどい、ひどすぎる!」
カーラの思考が読み取れる彼は、この子は本当に恥ずかしがっているんだな、ということがよくわかる。それがなぜなのか理解する機能は彼にはないけれど、しゃがみこんだり立ち上がったり、ぐるぐる回ったかと思うと顔を青くしておでこをごしごしこすったりする彼女は、見ているだけでにぎやかで感心する。
そうしているうちに、カーラは後ろを向いて仁王立ちして、叫んだ。
「ほんとに悩んだんだからね、カロルドの、ばかー! 最低、変態、ファザコン男! ここを出ていったら絶対もう一回ひっぱたいてやるんだから!」
一息にそこまで叫んで息切れしたカーラの背に、冷静な声がかけられる。
「え、出られると思ってるの?」
「出られる……わよね?」
「さあ、どうだろうね?」
そのはぐらかすような物言いが気にかかった。
そもそも彼は誰なのか。ソロ本人だったらさっきみたいに『さて、誰でしょう』なんて多分言わないだろう。
それに自分はどうして閉じ込められなければならないのか。
わからないことは山積みで、それでも目の前の彼は何事かを知っている様子を隠さない。
なんにしても、まずは解説するつもりがあるんだかないんだかはっきりしてほしい。
「あなたは何か知っているんでしょう、もったいぶらないで教えてちょうだい」
苛立ちを隠さずにそういえば、片手を振って彼は応じた。
「言ったはずだよ、キミは今、自分の器の中にある魔力を根こそぎ奪われるまじないの中にいる。器と体を結ぶだけのリソースが確保できないから、キミの意識は体には戻れない」
「ええと……」
「要するに、今のキミの症状は魔力不足だ、と言った方がわかりやすいかな? 器に蓄えられるべき魔力が暗示によって繋がったカロルドに奪われている。あの子の呪いは知っているね?」
その話は、以前聞いたことがある。カーラは記憶を手繰って答えた。
「『不変』の呪いってやつ?」
「そう。生命を循環させるエネルギーである魔力を喰らいつくすことによって、細胞すべてを『変化させない』ことが呪いの正体だ。……さて、ところであの子は無限の魔力を持つ宝石眼の持ち主でもある。呪いによって『喰らわれた』膨大な魔力は、どこに消えると思う?」
エネルギーは保存される。魔力だって、例外ではないのだ、と彼は言う。
「もしかして、ソロ? カロルドの呪いは、ソロが仕掛けたわけだから」
「あたり。彼の呪いによって得られた魔力リソースはすべてソロの器に回収されている。つまり今、カーラの魔力はカロルドに流れ、そのままソロに吸収されている」
「それって、どういう……」
それがどんな問題なのかわからない。答えを求めて見つめられた彼は、カーラにもう一度花畑の方を見るよう促した。
「その前に一つ確認だ。ボクはここがキミの器の中、夢の世界だと言ったけれど、だとすれば彼らはなんだと思う?」
目の前の花畑、そこでデートしているとしか思えないソロと黒髪の女性を指し示して彼は言う。
「さっぱりわからないわよ」
恋しいソロと見知らぬ女性が親し気にしているのを見るだけでなんとなく不愉快になる。夢の世界だというなら、自分の望む風景が見えていてもいいはずじゃないのか。
憮然として言い放つカーラに苦笑して、
「器は記憶を司る。眠っている間に記憶が定着するって聞いたことはない? あれは意識の世界に器と魂が揃うことで、魂が器にしまっておく情報を整理するんだよ。あれはキミの記憶じゃない。だから、何が言いたいかっていうと、要するにあれは、ボクの記憶だ」
なんてことを彼は言う。しかし、これが昔の記憶だとしても、ここにいるのはソロと黒髪の女性しかいない。つまり、
「それってつまり、あなたの正体は、あそこにいるシスティーナさんってこと!?」
カーラの返答を聞いた彼は、竜眼を見開いてけらけらと笑った。ソロがこんな風に笑うところなんて見たことがないので、場違いな発言をしたらしい気恥ずかしさを感じるよりも、カーラはいっそ新鮮な気持ちになる。
彼も、こんなに屈託ない雰囲気をまとわせることがあるのだろうか。
「違う違う! ボクはキミに託された、ソロの魔力そのもの。キミの左目だよ」
「え、なんで魔力に、意志があるの?」
魔力におしゃべりできるような意志があるだなんて初めて知った。ソロに託された魔力と話しているだなんて驚きだ。
――でも。
だとするなら、よくわからないことになる。
人間は『魂』『体』『器』で構成されるという。このうち『体』は肉体のことだ。これはわかりやすい。
『器』には魔力が宿り、『魂』はそれを操って魔法を使うという。
器からあふれる感情を魂の理性で押さえつけ、魔力に『そうあるべき』という方向性を与え、現実の世界に作用させる力を生み出すのだと魔法学校で教わったが、魔力自体に物を考えられる意志があるのだとすれば、何のために魂があるのかわからない。そもそも――
考え込むカーラの前で、竜眼の彼は、カーラが次の質問を繰り出すのを待っている。
「……そもそも魔力って、なんなの?」
魔法学校で『器に蓄えられた魔力を使いこなせていないから魔法が使えないんだ』と何度怒られたかなんて数えていない。しかしどんなにそう言われても、器の魔力なんて感じたためしがなかった。
そもそも、魔力とはなんなのか。魔法の実技に関して、カーラはそこで止まっている。
超常の力を生み出す魔法。そのエネルギーとなるのは器からもたらされる魔力。しかしその魔力とは一体なんなのか。
魔力とは始祖に授かった力だと人は言う。この国の貴族なら誰でも、多かれ少なかれその身に宿した、民を導くための力なのだと教えられた。
しかしそれならなぜ、始祖は導かれる民自身にはその力を与えなかったのか。どうして魔力なんていう尺度が、身分の上下につながるのだろう。
幼いころからたたき込まれた始祖にまつわる伝承の数々。ただ聞いているだけならば、それほど疑問に思わなかったかもしれない。
けれど、自分は始祖本人であるというソロ自身に出会った。その人となりを知るうちに不思議に感じた。あの人は、魔力の大小で人の優劣を決めるようなヒエラルキーを望む人だろうか。
そう考えた時、始祖の神話そのものが不自然だと感じるようになる。竜を倒して魔力を手に入れた。それはわかる。だけどソロの姿と、今の始祖として崇められる姿がなかなかつながらない。
始祖の時代からこの国が絶対視する、魔力とは一体何なのだろう。
「そこなんだよね。キミの目を通してボクも魔法学校の教育を見ていたけれど、あれじゃあ魔法の神髄なんてわかりっこない。『器』だ、『魂』だ、なんてのは後付けの理屈だよ。魔力は、この世すべての元素だ。万物は魔力によって概念づけられている。世界のすべては魔力でできている。そう認識する限り、なんでもできるしなんにでもなれる。それこそが魔法なんだよ」
「後付けの理屈……?」
「分けて考えるのが妥当ではないということ。『体』も『器』も『魂』も、本当はばらばらなんかじゃない、全部は繋がっているんだよ。ボクからすれば、『魔力は選ばれた者にしか与えられていない』なんて教えが一番お笑い種だった。魔力は誰にでもある。だってすべては魔力でできているんだから」
「体も、心も、全部?」
「そう。それどころか、麦の一粒、星の光、全部。魔力が『そうあるべき』という方向性を与えられて具現化しているにすぎない」
「そんなのおかしいわよ。だったら、誰かが魔力を使って麦に向かって『麦になりなさい』って魔法をかけているってことになるじゃない」
「ちっともおかしくないさ。キミたちが暮らす世界、物質界のすべての生命はつながっている。世界全部でひとつの生き物みたいなものなんだ。方向性を与えるということ、それは意識……いや、生命の力だよ。強い思いが力になる。物質世界が物理法則に従って存在しているのは、強い意識で『そうあるべき』と信じられているからだ。魔法使いと他の人々の差は、魔力を操作するコツを知っているかどうかでしかないんだよ」
「……じゃあ、魔力っていうのは、どこから来るの?」
「キミたちが暮らす物質世界と対を為す世界、物質が存在せず、魔力が魔力のまま、未分化なまま存在する世界。共有する無意識、生命の樹。呼び方はいろいろあるだろうけれど、ボクならこう呼ぶ」
そこで一拍置いて、彼は再び口を開いた。
「常世」
それは、人々が死んだ後にたどり着くと言われる魂の居場所。
それはつまり、
「死後の世界……」
「ある意味ではそう。物質界で生命を終えた魂と器は魔力に還元される。還元された魔力は常世から器を通じて生命に供給される。常世と現世は相互に依存しあって成立しているんだよ。……生きている間に常世にたどり着いたものは、それを夢と認識する。だからここはキミの夢」
「じゃあ、ここは常世なのね……」
死後の世界と信じていた場所にいるだなんて、なんだか不気味な気がする。
死後の世界だと思っただけで、今まで見ていた花畑が違った意味を持ってくる気もする。
――臨死体験、みたいな。
「そしてこの夢の世界を介して、人と人もつながっている。それをカロルドは利用したんだ」
「わたしの器に常世から供給されるはずの魔力を、自分の器に引き込んだのね」
カーラの返答を聞いて頷いた彼は、今度は小首をかしげてこんなことを聞いてきた。
「キミが本当に、ソロに魔力を返還したいと望むなら、このまま何もしないという手もあるよ。このままキミの魂が消滅すれば、カロルドの器を経由して、ボクはソロに回収されるだろう。彼はキミに魔力を融通する前の状態に戻れるわけだけど……」
「そんなの困るわ! なんとかして戻りたい」
一度、ソロに魔力を返そうとしたことがあった。だけど、魔力を返したって、ソロは喜ばないことをカーラはもう知っている。それに自分だって、まだまだここで終わるわけにはいかないのだ。
頬を上気させて訴えかけるカーラに微笑んで、ソロから託された魔力だという少年は言う。
「うん、そのために提案だ。ボクは魔力の塊だ。キミがボクの力を使うことができるようになれば、器の内側からちゃちな呪いなんて跳ね返せるよ」
「魔法を使えるようになりなさいってことよね。でも……今までいくら練習してもちっとも手ごたえもなかった。今から挑戦して、間に合うかしら?」
「今までうまくいかなかったのは、相互理解が足りなかったからだとボクは思う。普通体内の魔力っていうのはその人そのものだから、意思決定に矛盾が生じにくい。だけどボクたちは違う意識を持ってしまっているから、器の中で共存していくのが困難なんだ。ルロワが言っていただろう? 『水槽に対して蛇口が小さすぎる』って。ボクたちは、それを補うために蛇口を二つ作らなければならない」
「ええと……つまり、どういうこと?」
「ボクは人間に内在する魔力というには、『方向性』を持ちすぎている。概念として決定づけられていると言っても大げさじゃないレベルでね。その正体を、キミに見破ってほしいんだ」
「見破る?」
「簡単だよ。これから一緒にボクの記憶をたどっていこう。そうすることでキミはボクを知り、ボクはキミの中に居場所を見つける。キミ器の中に自分の領域が欲しいってこと。そうすることで魔力のコントロールはずっとたやすくなるはずだ」
風が吹いた。
いつの間にか、戯れていた人影が消え去っていたことにカーラはようやく気付く。
風にあおられてカラフルなはなびらが舞い踊り、その中で少年は優雅に微笑んで見せた。
――やっぱりソロじゃないんだ。
ソロだったらこんな風には笑わない。同じ微笑みなのに、どこが違うとも表現できないのに、カーラはそう確信した。
やはりその思考を読んだかのように、目の前の彼は笑みを深めるとこう言うのだ。
「記憶をたどり、ボクが誰だか、当てて見せて」




