アクセス後
「彩音! 彩音!」
私は目を開ける。
『…悠人』
あれ? 私の口からではなく、スピーカーから声がこ消えた
悠人は、スピーカーを一瞬見て、「起きているか?」と言う。
「起きているわ」
あっ。今度は私の口から言葉が出た。
「そうか。よかった」
『なんだよ。急に居なくなったと思ったら、起きちまったのか』とスピーカーからリッキーの声がする。
悠人が私に目配せをして、「誰だ?」と言う。
リッキーのことは悠人に説明していたと思うけど… さっきの目配せは何? 喋るなってこと?
『俺のことはそこのSaraに聞け』
そこの? 私が周りを見ると、佐々木さんがいた。
だから、悠人は目配せをしたのね。
「彩音、大丈夫か? 佐々木さん、診察室はどこですか?」
「こっちだ」
悠人はfMRIを外し、「立てるか?」と言うので、「大丈夫よ」と言って立ち上がる。
ちょっと寒いかも… 悠人の体温が心地良い。
私は悠人に支えられた状態で、側仕えについて行く。
佐々木さんが私達を見ている。
これじゃ、何も言えないわね…
ドクターの質問に答えるが、ブレスレットで体温などの基礎的な情報を取得しているので、すぐに終わった。
側仕えが佐々木さんに耳打ちする。
「部屋を用意したわ」
「そこで話しをしましょう」
私達は会議室のような部屋に案内された。
「天野教授、何があったのか報告してくださる?」
さて、どうしよう。
「報告ですか… さっきの声の人と話しをしたような気がしますが、よく覚えていないです」
「思い出して、ください」
「夢のような感じで、具体的と言われても… 懐かしい感じの場所で話したような気がしますが、具体的な会話は覚えていないです」
佐々木さんが私の顔をじっと見る。
私が真実を話しているのか考えているのかな?
「さっきの声の人は『俺のことはそこのSaraに聞け』と言われていましたが、Saraさんって佐々木さんのことですか?」
「そうらしいわね」
「そうらしい? もしかして、Saraも偽名ですか?」
「想像に任せるわ」
ほんと、謎な人ね…
「ま、いいわ。じゃ、さっきの声の人は誰なのですか?」
「それは、こちらが聞きたいわ」
「さっきの声の人はSaraさんのことを知っていましたよ」
「そうらしいわね。音羽教授は何か気づいたことはありますか?」
「モニターには彩音と考えられる顔と男性のような顔が表示されましたので、その男性がさっきの声の人ではないか?と考えられますが、それ以上はわかりません。その男性の顔と声から人物の特定はできませんか?」
「そうね。それは、こちらで調査するわ。NeuraLumeは我々の問いかけには応答しなかったけど、まともに会話ができるようね。fMRIでの接続は効果があるようだわ。引き続きfMRIで接続して対話を行ってください」
「fMRIは彩音に負担がかかります」
「ドクターは問題ないと言っています」
「ですが…」
「…あなた達の立場は非常に危ういです。成果が必要です」
「それは、脅しですか?」
「違います。我々は期待しているのです。ささやかですが、待遇が良くなるはずです」
私がどんな待遇がよくなっているのかを切り出す前に、佐々木さんが部屋を出ていった。
「彩音、大丈夫か?」
「大丈夫よ。でも、少し休憩がしたいわね」
「カフェに行くか?」
「そうね。疲れたから、甘い物がいいわねぇ」
注文をするために端末を見ると、ケーキがあった。
これが、待遇がよくなったってこと? ま、注文してみるかな…
出てきたケーキをフォークですくった。
ん? ちょっと硬いよね? ま、しかたがないか…
一口食べると、生クリームじゃない! しかも、硬い! 重い! 甘い!
砂糖が尋常じゃないぐらい入っている。
甘さが私に暴力のように襲ってくる。いや、これはテロだわ!
「どうした?」
「一口食べて」
「甘いものはいらない」
「私の食べたケーキはいらないと言うの?」
「なんだよ、その酔っぱらいみたいな表現は…」
「食べて、はい。あーん」
悠人は仕方なさそうに口を開けてケーキを食べた瞬間、コーヒーを飲んだ。
「なんだこの砂糖の塊は…」
「ケーキらしいわよ」
「甘いもので疲れがたとれたのじゃないか?」
私が、悠人を睨むと悠人は目をそらしてコーヒーを飲んだ。




