第43話 五乗先生と恋 2
【ホタル視点】
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今日は、○○と五乗先生のデート当日の日曜日。
季節はもう夏休みに入っていた。
よく晴れていて爽快な日だ。
午前中の買い出しを早めに終えると、○○は、弟の純華を私に任せ、一人車で出かけて行った。
時刻は、午前11時半頃となっていた。
私は、純華とカフェの街道沿いの駐車場でソワソワしながら待っていた。
少しして・・・。
キキ、キキ―ッ!
鋭い大きなブレーキ音を立て、目立つ派手なプリントの車が私の前に止まり、ドアが開いた。
「お待たせ」
「もう!何で、こんな時にこんな目立つ車で来るのよ!すぐばれちゃうじゃないの!」
私は、車の持ち主の関に文句を言う。
関が、例の白色のスポーツ車に黒髪の制服を着たアニメキャラがプリントされた痛車で来ていたからだ。
「心配するな。尾行はお手の物だからな。アッハッハッハ!」
「何よ?その根拠のない自信は?」
「前にも、同じようなことで、〇〇君と泉天ちゃんを尾行した時があったんだ」
「ママを尾行したの?」
「ああ、泉天ちゃんが勤めていた会社の先輩だった奴が泉天ちゃんに付きまとってな。ホント、いけ好かない奴(※)でさ。二人のデートを〇〇君と尾行したわけよ。下心ありあり野郎だったから、泉天ちゃんに何かしようものなら、すぐに妨害するためにな。あれは痛快だったな。ハハハハハ」
「へー、そんなことがあったんだ。で、その時はバレなかったんだ?」
※ここまで読んで頂いた方はわかるかと思いますが、第9話から登場のイケメン髙橋のことです。
「嫌、泉天ちゃんはすぐに気づいていたみたいだな」
「やっぱり意味ないじゃん!もういい。時間が無いから早く行こう!さあ、純華も」
純華は、痛車に興味深々で、車の周りを駆けまわっていた。
「おー。純華は、俺の車が気にったようだな。チャイルドシートも付けて置いたからな」
「手際いいわね」
「だから尾行はお手の物と言ったろ?」
尾行にチャイルドシートは必需品ではないと思うけれど、置いておこう。
しかし、彼のこうした気配りは、本当にありがたいし、頼れる。
ママが彼を信頼していたと聞くが、よくわかる。
「関、ありがとうね」
車に乗り込むと、私はお礼を言う。
「おお、いいってことよ。今回は店もわかっているしな。泉天ちゃんの時よりは楽勝よ。さあ、行くぜ!しっかり掴まっていろよ」
関は、キキキと車をドリフトで急発進させ、車が県道に乗った。
「そ、そんなに急がなくても!」
私は、必死に椅子にしがみつく。
「キャハハハ」
純華は楽しそうだ。
「行くぞ!」
関は、アクセルを思い切り踏み、あっという間に加速した。
「キャーーーーーーっ!」
私は生きて帰れるだろうか・・・・。
「着いたぜ」
「あんた、頭おかしい。何てスピードで峠道を攻めるのよ。死ぬかと思ったわ」
「そうか?純華は楽しそうだったぞ」
純華は、まだキャッキャッしている。
いけません。
制限速度は守りましょう!
「ここだ。久しぶりに来たな」
車を降りると、そこは、山頂で、見晴らしの良い光景が遠くまで広がる。
「わあ、良い眺め!」
そして、駐車場に隣接して青空に溶け込みそうなほど青い近代風な大きな建物があった。どうやらここが目的のレストランのようだ。
スタイリッシュな文字でフレンチレストラン『サミット・ヴィスィタ』の看板が見えた。
駐車場には、○○の車も見えた。
○○と五乗先生は、既に到着しているようだ。
「まさか、○○君がここを選ぶとはな」
「え?」
「少しあそこを見て行かないか?」
そう言って、関がレストラン横の螺旋階段を上る。
着いて行くと、屋上にはベンチや椅子を配置していて、遠くに山々が連なる絶景が広がっていた。
「うわ~!」
私と純華は感嘆の声を上げる。
「久しぶりに見ると感動するな」
「前にも来たことあるの?」
「頻繁に来ていた時もあったな。でも、泉天ちゃんが亡くなってからは、少なくなったよ」
「・・・・・」
「ここはな、さっき話した○○君と泉天ちゃんを尾行して来たレストランなんだ。思い出すぜ。高橋といういけ好かないイケメン気取りの泉天ちゃんの先輩が、ここで泉天ちゃんにプロポーズして振られたのを。あれは、傑作だったぜ。ハハハハハ」
「そんなことがあったんだ?その時、○○はどうしてたの?」
「気が気じゃなかったと思うが、平静を装っていたかな」
「○○ってそういうところあるよね」
「まあ、でも○○君と泉天ちゃんの関係が進展したのは、あれがあったからだと思うよ。あの時の二人は、お互い意識しているのにもどかしかったからな」
「関もママを好きだったんじゃないの?」
「ああ、俺も泉天ちゃんを狙っていたぜ」
「じゃあ、何で諦めたのよ?」
「うーん、そうだな。やっぱり、○○君だったからかな。こいつになら泉天ちゃんを支えられると思ったからな。正直○○君が来る前の泉天ちゃんは、少し危ういところがあったんだよ。明らかに頑張り過ぎだったからな。彼女はそれを見せないようにはしていたが、常連客の何人かはそれがわかっていたよ。俺も、泉天ちゃんのために何かできないか必死に考えて行動もしたがダメだった。でも、○○君が現れて、変わった。俺は、負けたと思ったね。あいつには、不思議とそういうところがある」
「うん、それ、わかる」
少し間を置いて関が言った。
「お前さ、○○君のことが好きなんだろ?」
「え?」
私は、関に真剣な眼差しを向けられる。
「う、うん」
私は、頷く。
私は、関に対して自分の気持ちを誤魔化すことができなかった。
「そうか。辛いな。お前も・・・、五乗先生も。○○君の中の泉天ちゃんの存在は大きいからな」
「わかってる、わかっているよ」
自然と涙が溢れて来た。
「わかった。わかったから」
関が私の背中をやさしくポンポンと叩いた。
しばらく、涙が止まらなかった。
関の気遣いが私の心に染みた。
(つづく)




