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Realizeー果てなき世界の物語ー  作者: 神木ひかり
第2章 終焉の再来
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【10】Trick&Answer

「2だ」


ディーラーが自分のカードを一枚めくった。シルヴィアも自分の手を見て無言で相手の表情を伺う。


「ディーラーは17以上になるまでカードを引かなければならず、17になったら、その後はカードを引くことは出来ません。カードを引くことをヒット。カードを引かずにその時点で勝負することをスタンドと言い、21を越えたらバーストと言い、負けです」


説明を補って、ソルが2人の状態を観察する。だが、ソルもルナも顔を顰めてそのカードを眺めていた。彼女は賭けに勝ったことがない。それを知っていたからだ。


「ヒット」


テーブルを叩いてシルヴィアはカードをディーラーから受け取る。ディーラーもカードを捲り2枚持ってその手で止める。


「俺はもう、終了だ。お嬢さんは次のカード。どうする?」

「ヒットよ」


しかし、シルヴィアは躊躇なくカードを受け取った。ソルとルナが険しい表情を浮かべたのも無理はないだろう。彼女が持っていたカードの数は6、8、5の19という強い手だったからだ。


「勝負に出るのは構いませんが……」

「だからダメなのですよ。逃げ道の確保を始めないと……」


周囲を見回し始めたソルとルナは、ここで負けた時の逃げ道の通りを確認して頷きあっていた。しかし、シルヴィアはそれでも焦りひとつ見せずに飄々としている。何故彼女は、そこまで平常に振る舞えるのか。ここで失敗すれば、カルラたちはともかく。街の人間も死ぬというのに。


「次どうする?」

「……バースト」


シルヴィアはカードを、表に出して無言でそのカードから手を離す。無表情で見せたカードは、順に6、8、5、そしてKでもちろん数はオーバーしていた。


「俺は21だ」


観衆は歓声を上げライトはシルヴィアを見つめた。そして、ソルとルナはシルヴィアに駆け寄りまくし立てるようにシルヴィアを引っ張った。


「シルヴィア様。お急ぎを」

「道筋はたちました」


しかしシルヴィアは動揺も焦りもせずに、もうひとつ新たに提案をした。そこには自嘲を載せて。


「ここに5つ金束があるのだけれど。これを合わしてもうひと勝負しない?今度はそこの彼が相手で」

「嘘だろ?」


ライトはシルヴィアを見返し、驚きを表に出した。その金はどこから出したのかというのも、もうわかっている。ライトは動揺しながら席に座らせられ、男に話しかけられた。


「もうひと勝負とは面白い。足し金として受け取ろう」


それに対してライトの後方に回ったシルヴィアは挑戦的に言葉を告げた。


「最初から私は勝つつもりなどなかった。勿論、私は賭けに勝ったことがないから。ギャンブルは好きだけれど、今は効率よく最短に終わらせることが先決。楽しむことは二の次なのよ」


そこまで言ったシルヴィアは口元に手を当てクスリと笑った。


「次のブラックジャック。絶対勝つわよ、私たち」


そう言われれば、カジノのディーラーとしてはカチンとくる。男は無言で眉をひそめてカードを配った。


「俺たちはプロだ。お嬢さんらに勝ちを譲る訳にはいかない」


大金が動く勝負に観客は高揚する。それは、彼らが金に囚われた人間たちだからだ。普通の思考でいけば、大金など持つだけで手を引きたくなるものだが、彼らは違うのだ。シルヴィアは満足そうにライトの耳元でなにやら囁いた。


「では、青年始めよう」


カードを1度めくった男は、そこに5を置いた。そして1枚目、2枚目を捲った男は手を置きこちらに顔を向けた。手が止まったのはそれで終了ということなのだろう。ライトのターンに周り、コールする。


「ヒット」


カードを貰って頷いた。そして、満足そうに顔を綻ばせて次の手を言った。


「スタンドだ」


勝負は一瞬。カードなら尚更、プレイヤーには分かっていないだけで結果はもう決まっているのだ。3枚のカードでスタンドということは最初から大きな手を持っていたということだろう。そう解釈した男はにこやかに自分のカードを捲った。


「19だ」


彼女は知っている。イカサマはしていなくとも記憶力でどうにかした。次の次の手がどの数字になるのかを。だから、勝機を持ってして堂々とライトにカードを持たせたのだ。彼ならばその確率を引き出してくれると信じて。


「21」


A、3、そして7。観衆は、どよめいた。シルヴィアの言葉は正しく、プロが彼女の言葉通りに負けたからだろう。大金が戻り、勝ったのは4人の彼らになる。それを初めて理解して、少しずつテンションを戻して言っ

た観衆たちは徐々にその興奮をむき出しにしていく。


「……お前、何か細工でもしたのか?」


シルヴィアの顔はしたり顔だった。ライトは男のカードを覗いて、シルヴィアが囁いた理由を理解した。


「私、賭け事には弱いの。ギャンブルで勝ったことがないのは真実だし。だから、今回も私は負けてしまった。だけど、アナタのイカサマを見抜いてそれを利用すれば簡単に勝てる」

「本当にシルヴィアが求めるものに答えることは苦労する。物凄い巧みな演技が必要だったから尚更にな」


会話を交じわしていた2人に対して、男は唇を噛んで悔しそうにこちらを見ていた。


「だが、それでも勝った理由が分からない。このカードは規則よく並べられているんだ。それは俺が普段からカードを混ぜている技術があるからできる技。その順で行くとすればお前らが勝てるはずがないんだよ」


ライトはそれに対してやや驚いたようにシルヴィアを下から見た。


「驚いたからな?規則を利用しろ、なんていうセリフを持ちかけてきて最初は意味が分からなかったんだから」


するとシルヴィアはややおどけたように表情を作ってライトの肩に手を置いた。


「君は勝ったのだし、結果はいいじゃない?よかった、よかった」


その様子を台横で見ていたソルとルナは顔を見合わせ、分かった?と言葉を交わす。観衆たちはついていけずに口々に討論を交わしていた。


「私、運はないけれど頭は回る方だと思っているから。最初から私たちには、単純なイカサマの方法しかなかった。それでも慣れていると言ってもそこに動揺の姿をアナタからは感じなかった。それが意味するのは確実に勝てる方法を持っているから。そして、理由はゲーム内に隠されていた。カードを規則的に並ばす方法をアナタは知っている。そして、それを何パターンか持っているということも」


そこまで言ってシルヴィアは、唇に人差し指を当てた。


「これ以上は言わない。アナタの為を思ってね」


本音は異なる。ボロが出るのはこちらなのだと。しかし、シルヴィアもライトもそれを口にしなかった。


「今、何時だ?」


ライトがルナに声をかけて時間を聞く。閉じられているこのカジノに光はない。時間は有限にはないのだから、手短に済ませたいと考えた結果だ。


「現在日没。6時ちょうどですね」


それに対して、ライトはディーラーにカードを返して金を手元に戻した。そしてライトは男を鋭い眼光で貫いた。


「俺たちは勝った。金の代わりに情報を開示してくれ」


手を開いたライトに男は、自分のプライドに沿って苦い顔をしながらカードを手元に戻した。彼はあくまでディーラーだ。プライドとして、負けた時に愚行を働くのは自分の中で許し難い事柄である。


「あぁ。ギャンブルの世界はそういうものだ。それは俺自身も理解している。鎖だったか?その目撃情報とそこへの行き方について教えてやる」


男は2重の意味での敗北を知らされ、負けた。だから負け惜しみなどは言わない。男は自分の知る全てを彼らに提供した。

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