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Realizeー果てなき世界の物語ー  作者: 神木ひかり
第2章 終焉の再来
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【4】GATE CLOSE

少女たちはいくら殺されたところで死なない、いわば不死身だ、とそう断言するように告げた。それは自分に聞き間違いがなければ。


「3ヶ月前のことを遡ることは一旦やめるとして、お前らは自分が不死身とでも言いたいのか?」


今見せられたものがなにか、そんなもの紛れもなく自分の地に伏せた姿と2人の少女の悲惨な光景。そして、隣にいる彼女の唇を噛んで恨めしそうに敵を睨んだ姿。だがそれを、今言及したところで話が進むわけでもなければ、彼女たちの嫌な記憶を引き戻させる原因となるだけだ。それならば、今はそちらの方を聞くよりも先にもっと知識を持つべきなのだと。


「そういえばライトは魔物の特性を知らなかったわね。まぁ実際、魔物なんて現実世界には姿を現さないし、ここが現実世界である限りほとんど見ることはない。それに君は一般人だったから知らないのも無理はないか」


返答はシルヴィアから。彼女が自分の記憶に誤りがないかを確かめながら思い出したものを説明していく横でライトは深く思考を巡らした。


「魔物は本来、悪魔天使と同様に、この地の生命エネルギーから成り立っている。だから死んでも死なないのよ。エネルギーがなくならない限り何度でもその身体は復元される」


シルヴィアの言う生命エネルギーなんぞ、ライトの知識の範疇にはない。不満げそうに顔を顰めているとシルヴィアは続けて述べて言った。


「急にエネルギーとか訳わかんないんでしょうけど、例えば空間中に浮遊しているのよ。誰にでも理解がいき届き、簡単にそれを言うならば、精霊とでも言い改めようか」

「精霊?」


現実の物理的な思考を持っていくのはもうやめだ。ライトは、そんな諦めを1人でしながらそれをもう一度復唱する。


「そう、精霊。生命エネルギー=精霊として、空気中に浮遊している精霊の力を妖術に変換し使用しているということ。そして、人間が直接精霊の力を借りることは不可能に等しいことであるため、私たちは悪魔や天使と取引をするってわけ」


そこまで言ってライトに説明の内容を言わせてみるシルヴィア。


「つまり、精霊の力は悪魔、天使、魔物が使用可で人間には使用不可ということか。人間が妖術を使いたい場合は天使か悪魔かのどちらかと契約しないとならないわけで、尚且つ魔物はそこの条件からは除外される。従って力の根源は全て精霊……生命エネルギーというわけか」

「君も馬鹿ではないわよね。飲み込みが早くて助かるのだけれど、これで理解したわよね?ソルとルナについてのことを」


ソルとルナにもう一度姿勢を戻して頷いてみせるライト。だが、彼女らは不服だとでも言うようにこちらに対してやや冷ややかな視線を向けてくる。


「……まだ何かあるか?」

「いえ別に」


フンとそっぽを向いたルナにソルが補足を加えるように、無表情でそのまま口を動かす。それが彼女たちにとっての世界だから。


「ルナは、不死身だからと言うことに関して嫌なのですよ。自我を持って生きていけばそのうち生死を当たり前のように感じるものです。でも死がない私たちは終わりのないレールをただただ走らされなければならないから」


ソルが表情穏やかに小さくルナに寄りかかった。ルナは下を向いて赤く頬を染めている。


「そういうこと、か……」


彼女らが言いたいことは何となく理解した。

魔物であっても、亜人であっても、不死身であっても。本当は人間と同様にして生活をしたい。だが出来ない。そういうことなのだろう。


「シルヴィア、お前は自称魔女だが。実際のところはその容姿とは裏腹に年齢は100を超えている。だが死なないというのはお前が不死身であるからか?」


不死身と言うのはどこまで通じるのだろうという少しの好奇心がライトの心に生じたのだ。


「私は……不死身ではないわよ」


そこまで言ったシルヴィアは唐突に明るく声をあげてその話題を閉めるのだった。


「さてもう、自己紹介のようなものは済んだかしら?少し逸れてしまったような気がするのだけれど、まぁ君が最低限の知識を得るいい機会だったとして。もうすぐで着くわよ?」


窓から外を指さしたシルヴィアは、外の景色に視界を移行した。外の景色。故郷という名のその街は、針葉樹が重なる森林と草木に囲まれた中心地。しかし、自然なんぞは誰も大切に扱っていない。この街のモットーは全てが金と地位で成り立つ。そのようなものに過ぎないのだから。


「それより大丈夫?ソル。君が昼に眠いなんて通常では起こりえないはずよ?」

「それはソルが昼で、ルナが夜を担当しているということで合っているか?」

「……、ライト。ご名答よ」


シルヴィアがソルに懸念の言葉をかけて、ライトはソル、ルナの意味を確認してみる。太陽と月なのならばそれはもちろんのこと。


「私はあまり戦闘に携われないだけで体力的には問題ないですよ。ソルがそういう時は、なんらかの精霊が干渉しているくらいですかね……」

「いえ……ただなにかがこう脳裏を過ぎって疼くんですよ、なんなんでしょうね」


ルナが元気なのは多分性格的なものが勝っているのだろうが、ソルのその言葉には何か引っ掛かりを感じた。しかし、それを言葉として出しても不穏な空気が流れるだけだ。その時に汽笛がなって汽車が静かに停車した。それは音もなく静かに。


「戻ってきたか……」


前に歩みを寄せてそのまま汽車を降りる4人だった。



◇◇◇



「着いたか」


ライトが懐かしに目を細めて、その街の様子を少しだけじっと眺めていた。全ての始まりの街。そして終わったと思われた街。


「眠さ消えました。大丈夫です」


街ゆく人々に少女たちの姿は映し出されていないのだろう。彼女たちを避ける人々の姿はそこにはなかった。


「でもいつ来ても私は、ここの空気感があまり好きではない」


日差しが照る中でシルヴィアが深く帽子を被り直して息をするように言葉を吐いた。確かに空気感は、何ものよりも自分が1番のこの土地だ。そう考えが傾いてもそれが通常なのかもしれない。


「シルヴィア様も1度来たことがありますものね」


ルナとソルがシルヴィアのやや後ろに立つ中でこちらに鋭く睨みを効かせてきていた。いや、彼女はいつでも自分に対して挑戦的な姿勢を向けていたかもしれない。


そういう所でつくづく思う女子の怖さを。


「まぁまずは、情報収集も兼ねてカルラたちの元に寄った方がいいかな」


ライトが腰の剣に触れてその景色を映し出した。戻ってきたのだと、いろいろな思いを巡らして。記憶を過去へと移していく。


「シルヴィア様……」


しかし、ソルは彼女の名を呼んだ。前触れもなく唐突に。だがいつだって事の始まりは気付かぬ前に。


「今この街一体に大規模な結界が貼られてしまったようです」


ソルはシルヴィアの服の裾を掴んだ。彼女の顔色も薄灰色に曇りがかって。ライトが光となるように。


「ライト。私たちは今、籠の中の鳥になったらしいわ」

「気づいたよ、オレも。五感がそれを感知してくれた」


そして青年は静かに闘志を燃やしていた。



◇◇◇



「かかった……」


女は街の立体地形図の前に手をかざした。


【GATE CLOSE】

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