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第零夜 全てのはじまり

これは二人の出会いになります。


美桜は黒月のことを覚えてはいませんが


彼は其れを大事な思い出としてずっと抱えていたのです。


手放さぬようにずっと。其れが長い刻のなか彼の正気をとどめたのですから……。


世界に変化があったと今だ名をつけられていない神は思った。そして倒れている幼子をかの神は抱き上げた。


幼子は眠っていた。境をこえた。其れが負担となっている。そうかの神は判断した。


眠る幼子の額に力を籠め口付る。力を纏わせることで負担を軽くしようとしたのだった。


思わぬことに幼子は目を覚ました。そしてこちらを無垢に見上げてくる。


其れが愛しくて微笑みかけた。そして幼子もこちらを見つめ返しニッコリと笑った。その笑顔があまりにも眩しくて神は目を細めた。


愛しくて嬉しくて知らず神の双眸からは涙が流れていた。幼子は手を伸ばし告げた。



「痛いの?苦しいの?」



その問いかけに神は答えた。



「彷徨い人よいいえもう哀しくはありません」



「そなたが気遣ってくれたから今は嬉しさがまさります」



その言の葉に幼子は微笑んだ。安堵してそして幼子の姿は透けていった。


其れを見た幼子は震えた。神は微笑んだ。そして告げるのだ。



「また会えますよ」



「彷徨い人よそなたは消えません」



その言の葉に幼子は涙を零した。また。そう唇が言の葉を形どったものの声となることはなく幼子は消えた。


神は歓喜を隠さずにかそけき声でひそやかに囁く。



「またその言葉は私が望んだがゆえ」



「幼き子よ」



「そなたとまた会えるのを楽しみにしていますよ」



君がまた堕ちてくる日までずっと。君の世界が君に覚えていることを赦さないだろうけど


ずっと待っています。君のことをずっと。想いは秘められて語られることはなく。


其れでもずっと覚えている。愛しき日をずっと。


そして神は出会う。長き刻をこえ愛しき少女と。


番外編はこれで終わりです。皆様のなかで出会いの場面を


想像していらっしゃった方がいたらごめんなさい。


其れでは失礼します。ぺこり。

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