過去
「おかあさん、どこにも行かないよね?」
「もう、夕ったらどうしたの?行くわけないじゃない。
ほら、早く寝なさい。明日は動物園に行くんでしょう?」
「おかーさん、どこにもいかない?」
「ふふっ、行くわけないでしょう?ずっと夕のそばに居るわ。」
「ねぇお母さん、どこにもいかないよね?」
「行かないわよ。だって明日はあなたの大切な運動会じゃないの。」
「ねぇお母さん、
どこにいくの?」
「ごめんね、夕っ。本当にごめんなさい...。」
「嫌だっ、行かないで!
おかーさん!!おかぁさーんっ!!!」
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「うっ、うわぁぁぁぁぁああああああああ!!!」
「ゆう!?おい、大丈夫かっ??」
「ッハァハァハァ・・・・・・・。」
「また、あの夢か?」
「ぅん・・・。」
お母さんに捨てられたあの日から、
あたしはその日の夢ばかり見るようになった。
「最近は減ってきたと思ったんだけど...。」
「・・・だな。」
小さい頃、
あたしは何度も確認した。
お母さんが何処にもいかないか。
だって、
お母さんの赤い糸は
お父さんとは繋がっていなかったから。
それに、
お父さんの赤い糸はいつ見ても黒ずんでいて先が見えなかった。
それが何を意味しているかは幼いあたしにはわからなかったけど、
お父さんの糸が真っ黒になった小学三年生の時、
通り魔に刺されてお父さんは死んだ。
それからお母さんはあまり家に帰ってこなくなり、
幼馴染の柚季の家に預けられていた。
それから一年間は一ヶ月に一度お母さんに会えるか、会えないかくらいだった。
あたしが小学校五年生の時、
お母さんが二人で旅行に行こうと言ってくれた。
幼いあたしは旅行に行くことよりも、
旅行の間お母さんと一緒に入れることが嬉しくて嬉しくて、
旅行の間中大はしゃぎだった。
旅行から帰って家の前にたったとき、
お母さんが泣き崩れた。
あたしはどうすればいいか分からなかった。
しばらくすると真っ黒の車が一台、家の前に泊まった。
旅行の自分の荷物を泣きながらその車の荷台に入れるお母さん。
あたしは聞いた。
「お母さん、
どこいくの?」
帰ってきた答えは今までとは違い、
あたしに対する謝罪の言葉だった。
「夕っごめんね…。」
お母さんが行ってしまう。
そう悟ったあたしは走り出した車を追いかけた。
転けても、怪我をしても、涙で前が見えなくても。
ただただ必死に追いかけた。
気づいたら見たことのな場所にいて、
でもお母さんを追いかけようと思って、
ただただ足を動かした。
もちろん夜中に小学生が傷だらけで走っているのを、
警察がほっとく訳がない。
あたしは警官に補導され、
柚季の家に預けられた。
それから何度かお母さんについて
柚季のお母さんであるおばさんに聞いてみたけど、
何も教えてくれなかった。
ただ馬鹿みたいに泣くあたしを
柚季はずっと支え続けてくれた。




