第1話 家族ごと異世界転移!?
田中家はごく普通の家族だった。
少なくとも、昨日までは。
父親の田中旬太は、町で評判のレストラン「旬」のオーナーシェフ。
母親の凛花は、地元の小さな会社で働く有能な秘書。
長男の迅は、配達ドライバーとして毎日せっせと働き、長女の茜はのんびりと大学生活を楽しんでいた。
どこにでもいそうな、平和な一家だった。
ある土曜日の夜、家族全員が久しぶりにそろって、父・旬太の手料理を囲んでいた。
母・凛花が会社の愚痴をこぼし、迅が配達中の珍事件を報告し、茜がバイト先のカフェでの出来事を話す。
旬太は満足そうに家族の会話を聞きながら、デザートを用意しようとキッチンへ向かった。
「さて、デザートは……」
旬太がキッチンから戻ろうとしたその時、家中を青白い光が包んだ。
次の瞬間、彼らは見知らぬ森の中で、互いに呆然と見つめ合っていた。
「……え?」
茜がまず声を上げた。
「ここ、どこ?」
迅が辺りを見回す。
「お父さん、これって……異世界転移?」
茜が小説や漫画の知識を総動員して尋ねた。
「まさか……」
凛花は秘書としての冷静さを保とうとするが、声が震えている。
旬太は、なぜか手に持っていた木のへらを握りしめ、「とにかく、集まれ。離れるな」と低く言った。
どうやら、彼らは全員、何らかの理由で「転移」してしまったらしい。しかも、家族一緒に。




