《ふっ、面白れぇ男‼︎》
【この家から離れてはいけない。私たちは弱いのだから戦ってはいけない】それが、ママとの約束だった。
スライムにとってこの森は本来いるべき場所では無く、普段はもっと穏やかな場所にいるべき筈なのだろう。でも、私はこの家でママと一緒に育った。
家の近くには、果実のなる木もあるしこの家にはママ曰くおまじないが掛けられてるお陰で絶対に外敵に見つからないそうだ。
私が、一人になった時何一つ不自由なことは無かった。寂しさは残ったが、食べ物や寝る所もあったし、何より敵に襲われる事もなかった。
暇な時は、ママが残した本を読んで時間を潰した。この世界の生き物の本、この森についての本、色々な本があった。......男の人についての本も。
この本は、私が掃除している時に偶然見つけたのだが初めてこの本を読んだ時の事を今も鮮明に思い出せる。
時間だけは、たくさんある私はその日から色々な妄想をした。男の人とあんな事をしたり、こんな事をしたりと。私は、様々なシュチュエーションと共に年月を過ごしてきた。
......いつか、私をここから救い出してくれる素敵な王子様は来ないかしら?なんて、夢を見ながら。
「ごめん、ママ。私.....」
ご主人様を、起こさない様に小声で呟く。まだ、空は真っ暗で怖いけど、この暗さなら襲われる確率も低いと思う。多分。
「ふふっ、楽しみだな‼︎きっと驚くだろうな」
笑みが、口から自然に溢れる。もう、怖さなどこれからのご主人様の喜ぶ顔を想像するだけで全く感じなくなった。
ご主人様は、心が疲れてしまっているんだ。私は、それをここ数日彼と過ごすことで分かってしまった。けれど、ご主人様はきっとその理由を口に出してはくれない......多分私を、信じていないから。
けど、それで良い。私はご主人様をそれでも愛している。例え、ご主人様が私を信じられなくてもそれでも私はもう彼無しでは生きられない。ご主人様を、それ程に愛しているから。
ご主人様は、私の寂しさを埋めてくれた。ならば、私がご主人様に出来ることは?私は...スライムの私に、一体何が出来る...?
昨日の夜に聞いたあの質問。ご主人様の夢について。きっとご主人様は、本心で語ってくれないだろう。そう思っていた。でも、初めて本心で話してくれた‼︎嬉しかった‼︎
けど、直ぐにいつもの様な感じに戻ってしまった...。
でも‼︎いつか、彼が私にいつも本心でお話ししてくれる様に!!私が彼を、守れる様に...強くなりたい。
「まだ、見つからないの?一体、何日経ったと思っているのかしら」
その一言だけで、この場が一瞬にして凍りついたのを感じた。あぁ、嫌だ。なんで、こんな事してるんだろうか?
僕のそんな視線に、気づいたからなのか更に空気が重くなった。
おいおい、皆んなそんな目で僕を見るなよ。まるで、この雰囲気が僕のせいみたいじゃないか。
そもそも、ボスの命令は絶対とは言え男探しなんて...。僕は、呆れてため息が出そうになるがすんでの所で堪える。危ない、危ない。こんな所で、ため息なんて面白...げふん。命知らずの事したく無いしね‼︎
「で、ですが、ボス‼︎我々は、この森全体を組まなく探しましたが...その様な、男な
「黙りなさい」
あ〜あ、泡吹いて倒れてる。全く、不機嫌なボスにそんな事言うなんて、僕より命知らずじゃないか。全く持って羨ましい。僕も、チャレンジしようかな‼︎
「いい?私は、もう我慢出来ないの。あの殿方は、私だけの物。他の女には、絶対に譲らない。あぁ、私だけの素敵な貴方様‼︎私は、もうどうにかなってしまいそうです。一体、何処にいらっしゃるの?」
「もう、どうにかなっ.....危なっ...!!」
さっきまで、座っていた椅子には槍が刺さっていた。危ない、危ない。後、少しで当たる所だったぜ‼︎やっぱり、口は災いの元だね!良い子は、真似しない様に‼︎
「チッ」
おっと、何か聞こえた様な?投げキッスかな??嫌だな、興奮しちゃうじゃ無いか。それにしても、こんな森で男だなんて...。
僕は、再び椅子に座り直し考え始める。あぁ、一体どんな人生を過ごしたらこの森に入るなんてとち狂った選択を選べるんだろう。
下の下である種族の人間が?それも男性?一人で?この森に、入ってくる??面白‼︎興奮させてくれるじゃないか‼︎いや〜、是非とも会ってみたい‼︎話してみたい!!
「言っておきますけど、指一本触れた時点で本気で殺しますからね?夢香?」
おいおい、そんなそそる様な目で僕を見ないでくれよ。興奮しちゃうじゃ無いか。君が、そこまで言う男...楽しみだな!!