《明かされる真実》
魚。それは、世界で一番美味しい食べ物であり、俺の好物でもある。
刺身、焼き、天ぷら、煮付けといった様々なバリエーションを兼ねそろえるうえにその全てが美味しいというかなり、高いポテンシャルを己が身に持ち合わせている。
しかも、それだけでは無い。魚にはDHAという頭を良くする成分が入っているらしい。やはり、幼い頃にTVで言っていたあの「さかな〜さかな〜さかな〜さかなをたべ〜ると〜」は本当だったんだ‼︎
ほら、そんな事を考えていたからなんだか魚焼ける良い匂いが...あぁ、魚。久しぶりに食べたいな。ん?匂い...?
「魚⁉︎」
「わっ!お、おはようございます。朝ごはん出来てますよ」
俺は、ほぼ無意識のうちに体を起こして食卓を見つめていた。見間違える訳が無い、その机の上の彼?彼女?と目があう。
あぁ、なんて綺麗なんだろう。銀色と黒と白の色合いはまさに、この世の神秘を思わせるかの様に美しく、そのつぶらな瞳は一心に俺を見つめてくれる。
口から、流れ落ちた液体に気づけたのは目の前の少女に指摘されてからだった。これは...涙?俺、泣いているのか?うぅ...会いたかったよ。魚。
今日の朝食。やっぱり、とっても喜んでくれた。多少無理をしたけれどその分ご主人様の笑顔が見れて本当によかった。私は、一人歩きながら昨日のことを思い出す。
昨日、行ったあの湖には行った事は無かったけど家にあった地図のお陰で短い時間で辿り着くことができた。縄張りの主であるあいつに出会わなかったのは運が良かったといえるだろう。
でも...そんな私の心に不安が残る。
「これから、どうしよう...」
初めての魚獲りで、取れたのは1匹だけだった。彼には、私はもう先に食べたからと嘘をついてなんとか誤魔化したけどまた捕獲するならかなり難しいだろう。
少ない時間の中、敵に見つからずに魚を捕まえる。スライムである私に、もう一度同じことは無理難題に近かった。
「う〜ん...う〜んと...駄目だ。全く良い案が思い浮かばないや...」
ついつい、口から独り言が出てしまう程に悩んでいたがそれでも良い案は中々思いつかない。
「あそこじゃ無くて、あそこを通れば...でも、そこだと近くにウルフ族の村があるし。じゃあ...」
考えながらだが、その手は着実に果実を集めていく。その慣れた手つきには、無駄が無くもうすぐに籠一杯になるだろう。
しかし、少女は気づけ無かった。自分に迫る背後の気配に。
「じゃあ、逆に少し遠回りになるけどあの道を通れば昼も...!!あっ...でもあそこには...」
一個、また一個と籠の中に入れていく。そして、籠が満タンになった時少女の背後から声が投げかけられる。
「ワッ‼︎」
「キャッ‼︎て、もう驚かせないで下さい‼︎びっくりしたじゃ無いですか」
「いやー、ごめんごめん。相変わらず、良いリアクションしてくれるから。ついね?」
「もう、心臓が口から出ちゃう所でしたよ!風花さん‼︎」
「ははっ、君に心臓は無いだろ?」
「そういう種族的な話じゃ無いです‼︎うぅ」
私を驚かせた彼女は、古い母の友人であり今は定期的に私の様子を見に来てくれる。
中位種でありながらも、決して私を馬鹿にせず気さくに振る舞うその姿に私はついついママの面影を重ねてしまう。
でも、いつも驚かしてくるのだけは本当にやめて欲しい。振りとかじゃ無いから。
彼女の種族は、妖精。別名、フェアリーとも呼ばれ小さな見た目なのだが、その力は強力で主に風魔法を操るのが得意なそうだ。
以前、襲われそうになった所を助けて貰った時に見たのだがその威力は凄まじかった。
「それより、その籠。随分と集めてる見たいだけど何かあったの?」
「え?いやぁ...ははっ、何もありませんよ?」
しまった‼︎迂闊だった。私は、急いで籠を後ろに隠す。
「いやいや、今隠しても遅いから...まぁ、そういう所も可愛んだけど」
「本当に‼︎何も無いので、大丈夫ですよ‼︎」
不味い、不味い、不味い‼︎彼の存在が、バレてしまう。油断していた。この家さえ在れば、彼の存在がバレる筈が無い。
そう勝手に思い込んでしまった。そのせいで、バレた時の事など一切考えていない。
もし、彼女に彼がバレてしまったら...ヒッ、駄目だ。恐ろしくて考えたくも無い...‼︎むかし、ママから聞いた話を思い出す。
「昔ね...運良く男の人を見かけた事があったのだけど...。その時に、一緒にいた妖精族の子とドワーフの子が喧嘩して...あれは、嫌な出来事だったわね」
私は、あの日のママの顔を忘らない。ママが、遠い目でそう語っていたのだ。きっと、想像するだけでも恐ろしい何かがそこでは行われていたに違いない。
「そ、そうだ‼︎私、食べ盛りで成長期だから。お腹が、空いて...ね?」
「ふ〜ん?でも、貴方ははそこまで食事が必要じゃ無いわよね?」
「ギクッ‼︎」
「それに、なんだか貴方から良い匂いが...?」
や、やばい...!!このままじゃ...彼が彼女に食べられてしまう‼︎彼を食べるのは私なのに‼︎なんとかして、誤魔化さな...
「ねぇ、私。最近この森で男性が迷い込んだって噂聞くんだけど...貴方何か知らない?」
「え⁉︎し、知らない〜?私、そんな噂知らない」
「それに、その男性。聞くところによると、あの黒狐が探しているのにも関わらずまだ見つかって無い見たいなのよね?」
「え〜?そ、そうなんだねぇ...?」
「不思議よねぇ...まるで彼が【見え無く】なったみたいね」
彼女が、私との距離を確実に狭めていく。どうやら、彼女の中ではもう答えが出ている様で私の対応でそれが確信だと気づいた様だ。
「もう一度だけ、聞くわね?貴方何か知らない?」
私...私は...!!ご主人様を、命に変えても守るって決めたんだ‼︎だから、ご主人様を絶対に守って見せる‼︎例え、私の全てに変えても‼︎
「あっ、あの。は、初めまして。しゅ、種族は、妖精族で山波風花と申します。今は、この子の親代わりをしています。あ、あの決して怪しい物じゃ無いですから」
「あっ、はい」
さて、この状況どうしようか?俺は、椅子に座りながら頬杖をついて考え始めた。
先程、玄関から物音がした為帰ってきたのかと顔を向けると...由良は安らかな顔で宙に浮いていた。
初めは、朝から魚をキメたせいで脳が幸福のあまりバグってしまったんだと思ったがどうやらこれは現実らしい。
この妖精の彼女曰く風魔法の応用らしい。風魔法とか急に現実でやられると、やっぱり夢なんじゃ無いかと思う。
それに...絶対あれだよな?俺は、彼女の方を見た。赤い顔で、漏れ出す吐息、どこか心ここにあらずの感情。あれだな(確信)
この世界に来てから、何かが可笑しい。まぁ、初めからこんな世界自体がやばいのだがそれとは別に違和感の様なものを感じる。
俺を見る目が明らかに可笑しい。俺が、人間だから?嫌、それは無い。由良は、この世界にも人間がいるって教えてくれた。
じゃあ、この世界では人間が食糧だからとか?う〜ん?それも違う気がする。もっと、こう根本的に何が全てが決定的に違う様な...?
「しゅ、趣味はお菓子作りをしています‼︎最近は、ケーキとかを作っていて...
てか、必死に目を晒してきたけどこの状況なに?え?なんで、今俺こんなお見合いみたいな事してるんだっけ?由良は、ベットに寝かされてるし。
「あ、あの〜
「はっ‼︎はい、なんでしょう⁉︎」
うわっ、めっちゃ食い気味でびっくりした。てか、軽く引いたわ。色々な意味で。
「それで...あの?俺になにかご用でしょうか?」
「はい‼︎実は、私とせっ...げぶん、げふん。わ、私と一緒に暮らして欲しくって。それを、相談にしに」
彼女の話をまとめるとこうだ。この森は、今危険だから私と共に逃げよう。うん、実に分かりやすい。ちなみに、初めに何を言いかけたのかは分からない。
「あの?一つ質問良いですか?」
「えぇ、勿論なんでも良いですよ‼︎スリーサイズから、好きなタイプまでなんでも答えます」
「 ......この森って、そんなに危険なんですか?」
彼女の発言を無視して、俺は彼女に問い掛ける。
確かに、この森の危険さは俺が身にしみて分かる。けど、本当に引っ越す程なのか?この家は、絶対に外敵から見つからない様だし、それにあの狐の彼女も多分俺の事など忘れて違う獲物を探しているだろう。
なら、今は下手に移動せずにここにいた方が安全なのでは無いだろうか。
「はぁ...ここまで世間知らずだとは。想像以上に〜〜
いや、想像よりも...」
俺の質問に、先ほどまで赤くなっていた彼女の表情が冷静さを取り戻っていく。それに、口調もさっきまでの物と心なしか違う様な...?
「良い?まず、〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ということ。分かった?」
「oh...。」
ははっ、どうりで可笑しいと思ったよ。まさか世界がそんな事になっているなんて...。俺は、その事実に気絶しそうになった。
聞いた情報は、主に三つだった。
①この世界では、種族によるカースト制度の様な物があり人間は一番下。
②ただし、人間には特別な個体がおりそれは【男】
オスの性別のみが、自分の種を繁栄させられる個体であり、全ての種族がオスを求めている。
③そして今、世界でも数少ない男がこの森に迷い込んでいる。しかも、噂では俺の事を上位種である黒狐が血眼になって探している。
あれ?これ、必ず不味くないか...?この森、もしかしなくてもやばいな。うん、今すぐにでも、逃げよう。俺が、そう決心するのに時間は必要なかった。
「すみません、俺が間違っていました。こんな森早く逃げましょう」
「分かってくれた様で良かった。でも、問題はこの森をどうやって出るかなのよね」
彼女は、難しそうに悩み込む。問題か...確かに、この森には上位種やその配下が彷徨いている為一筋縄では脱出出来ない。それに、この森に住む人外達は俺が男だと気づいた瞬間すぐさま襲ってくる。
「う〜ん」
「う〜ん」
二人で、唸りながら腕を組んで考える。くそっ、何も思いつかない。俺は、ベットに眠る少女の方をみつめる。日本には、3人よればなんとやらという諺があるが3人で考えてもこの状況を果たして打破出来る事は出来るのだろうか...?




