おいらが情報屋ッス
「さぁおいらが登場ッスよ。皆さんお待たせしましたッス。あれ?おいらのこと知らないって?な、な、な、な、それなら本編を読んでほしいッス」
嫌誰なのよあなた。
剣児の話を聞いて、ハナディウムで情報屋を探すことにした俺は、ログインしてとりあえず冒険者ギルドに来ていた。
「何だっけか?『合成図書館』と『魔物動物園』だったかな?何処に行けば会えるのだろうか?」
ギルドの酒場の席に着きなから1人で考えていると。後ろから声を掛けられる。
「エージュじゃねぇか。どうした?探し物か?」
現れたのはパーティーメンバーのバカ・・・じゃないバタだった。
「バタじゃないか、お前こそどうしたんだよ?」
「俺は受けたクエストの報告帰りだよ。それよりどうしたんだ?悩んでるみたいだったが?」
対面の席に座りながら聞いてくるバタ。
「いや、知り合いから情報屋に軍狼頭の情報を聞いてみるといいんじゃないかと言われてな。何処に行けば情報屋が居るのかと考えていたんだよ」
「情報屋か、そうだな有名処は『合成図書館』と『魔物動物園』か?それならギルドの受け付けに伝えると話を通してくれるぞ?」
剣児からも出た名前がここでも出てくる。やはり相当有名な集団のようだ。
「ギルドと繋がってるのか?まだ、クランとかの機能はないんだろ?」
「あぁ、確かにクランの機能はないが、情報というのはギルドでも大切にされていてな、簡易契約というか協定というかそんなものをしているんだそうな」
「そうなんだな。やっぱりそのどっちかに声をかけるのがいいのかなぁ」
「まぁ、どっちかにしておくのが堅実だな。個人のやつとかは当たり外れがあるからな。外れを引いたら目も当てられん」
「そうだよなぁ」
「お待たせしました。お飲み物です」
二人でそんな話をしていると、ウェイターから飲み物が渡される。しかし、俺達はどっちも頼んだ覚えがないのでウェイターに間違えかと聞くと、ウェイターは合っていると言って去っていった。
「バタ頼んだのか?」
「いや、俺は違うぞ」
「すいません、おいらが頼ませて貰ったッス」
二人で怪訝に思っていると、ウェイターと入れ違いに1人のプレイヤーが机にやってきた。
「誰だ?」
「いやぁ、『守護天使』さんですよね。はじめましてッス。おいらの名前"スリーク"ッス。『守護天使』さんが情報屋を探してるって話してたんで、自分を売りに来たッスよ」
「自分を売りに来たって、あんた情報屋なのか?」
「そうッスよ。おいらは個人の情報屋、人間種のスリークって言うッス。よろしくお願いするッス」
「個人のねぇ」
バタは、怪訝な顔でスリークと名乗るプレイヤーを見つめている。
「すぐに信用しろってほうが無理な話なのはあんたもわかってるよな?名乗ったからって信じて貰えるなんてことはないぞ?」
「当たり前ッス。なので先ずは、少しだけお得な情報をひとつッス」
スリークは指をひとつ立てて続ける。
「考えれば当たり前のことではあるッスけど、他のゲームならアクセサリーは何個までとか、頭にはメットタイプか、バンダナかみたいに制限があるのが普通なんッスけど、このSCOにはそれがないんッス。例えば頭にバンダナ巻いてメットをその上から被れば、どっちも効果があるッス。また、手と足全ての指に指輪をはめても各々効果があるッス。この事からこのSCOでは、装備枠というものが存在しないことになるッス」
スリークの伝えてきた情報は、日常では当たり前だけど、ゲームでは当たり前ではない事だった。考えてみればヤツルギの指の間に剣を持つ何て正にだよな。指の間各々に装備枠なんであるはずないんだからそうである。
「俺もインナーに皮鎧来てるし、それも裏付けにはなるか」
「そうッス。インナー装備みたいな薄手の装備は効果も弱いけど重ねやすい装備になってるッス。どうッスかおいらの情報は。お役に立つッスよ」
スリークは、手もみをしながら営業スマイル全開で自分を売りに来ている。
「だがなぁ、それだけで信用して貰おうってのはなぁ」
と顔をしかめながら考えるバタ。何故にこいつが考え込んでいるのか。まぁ今はパーティーではあるが。
「それに、大手の所じゃなく個人にするのにも特はあるッス。大手は人海戦術で様々な以来を同時並行できるッスけど、以来が多い分コアな所は後回しになりがちッス。その点個人は個別依頼になるんで、コアなことも深く調べられるッス。例えばハナトゥー森林の狼の話とか?」
「お前なんでその事を?」
「前にここで『守護天使』さんのパーティーで話してることを聞いちゃったんッス。その後掲示板でも少しだけ話題になってたッス。」
「そうか、あの時はただ仲間内でしゃべってるだけだったからな、聞かれててもしょうがないか」
「そ・れ・で、気になったおいらは個人的に調べてみたんッス。どうッスか?おいらの情報買わないッスか?」
グイグイと前に乗り出して自分を売ってくるスリーク。何となくだけどこいつならって思ってる俺が居るんだよな。まじで確証なんかなく何となくなんだけど。
「なぁバタ俺はこいつから情報を買ってもいいと思うんだけど、どう思うよ?」
「んっ?エージュがいいならいいんじゃね・・・」
「ほんとッスかおいらの情報買ってくれるッスか」
「うぉっ、ビックリしたぁ」
バタの言葉の途中に割り込んで喜ぶスリーク。よっぽど嬉しいらしい。今にも小躍りしそうな感じだ。
「それで、お前は何処まで情報を持ってるって言うんだ?」
「それについてなんッスが、もう少し情報を整理する時間がほしいッス。後他の皆さんにも一緒に聞いて貰ったほうがいいと思うッス」
「それもそうか、じゃぁ週末にハラスティ武具店って所で待ち合わせでどうだ?」
「了解したッス。それまでにはしっかりと情報をお届けさせていただくッス。よろしくお願いしまッス」
そうして、俺とバタはスリークと別れた後、ウルさんとリカに連絡を取り、週末にハラスティ武具店に集まって現状報告とスリークから情報提供を貰うことに決定した。これで軍狼頭に関する情報をゲットして奴に再挑戦してやる。
「っと言うことで、おいら凄腕個人情報屋スリークをこれからもよろしくッス」
(・・・名前の由来がMiss(失敗)Leakつまり誤報記事から来てるなんて本人に言えないな。)




