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カラオケ歌魔人の日常。  作者: 秋月 晴


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5/5

カラオケ店員、父になる。後編

 時間は過ぎお迎え予定の夕方5時になった。


 コンコンコン


「蒼汰!迎えに来たよ!」


 ドアを開けると真城さんが居た。


「母ちゃん!」


 そう言うと、蒼汰は真城さんの腕のなかに飛び込んでいった。


「リフレッシュできたかー?」

「うん!ありがとう!蒼汰も楽しかった?」

「楽しかった!雄二、歌下手くそなんだぞ!」

「待て待て、あの歌だったら俺のほうが美味かったよな」


 思わず、ムキになってしまい、恥ずかしい。

 そんな俺を見て真城さんが笑っていた。


「雄二くん、本当にありがとう!二人とも楽しそうでよかった」

「俺は、別に...」


 いや、楽しかった。

 心の底から。


「真城さんは何してたんですか?」

「蒼汰と離れるのが寂しくって、結局一日中家の子としてたの」


 「てへっ」と言わんばかりに無邪気な顔で、でも何処か恥ずかしそうに真城さんは言った。

 

「母ちゃん、それじゃあリフレッシュできてないぞ!」

「ううん、いっぱい時間あったから蒼汰の為にお料理たくさん作ったの!楽しかった〜!」


 蒼汰は照れくさそうににっこり微笑む。

 つられて俺の顔も緩む。


「雄二くん、なんだか優しい顔してるね!」

「そんな!恥ずかしいこと言わないでくださいよ!」

「雄二顔赤いぞ〜!」


 真城さんと蒼汰は顔を見合わせて笑い合っている。

 俺は恥ずかしくてたまらなかった。


 その日の帰り、俺は一人でイチョウ並木の下を歩いていた。

 寒い中自転車には乗らず、ただ歩いていた。

 

 不思議と寒いと感じなかった。

 何処か浮かれている気分だ。


 こんな休日があっても悪くないよな?

 自分に言い聞かせた。



 きっとあの二人はこれからも問題に直面することがあるだろう。

 それでも乗り越えていくのだ。

 二人の絆の強さに、少し感動した。


 少し羨ましく感じた。

 俺の一日父親体験は終了した。


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