第306話納得がいかないビジュアル
「聞いてくれよ……みんな。実は看過できないものを見てしまったんだよ」
浦島先輩が急に話を切り出してきた。
「どうしましたシノ?」
レイナさんは首を傾げていたが、浦島先輩はまぁ聞いてと少し間を稼いで、語り始めた。
「実は……ワタヌキ君に頼まれて、メドゥーサ狩りに行ったんだけれども……そこで見たのは、完全にモンスターの蛇女だったんだよ……髪が全部蛇のやつさ」
浦島先輩は拳を握り締める。
「それだけならまだいい。でもでっかいモンスタータイプで、白目。更にいうなら、かろうじて女子に見えないこともない蛇寄り……。いや、わかるよ? あまりにも伝統的なスタイルさ。なんならそっちの方が本家といってもいい。しかし……何だろう? 思うところはあると思わないか?」
あまりにも悲痛な面持ちで頭を振る浦島先輩の言葉に、レイナさんはハッと息を呑んだ。
「それは……確かに由々しき問題ですね。リスペクトは感じますが……嬉しいかといわれると少し……切なさで胸がつまります」
視線が遠くなるレイナ氏。
桃山君の方はどんな反応で来るかなと思っていると、悩ましげに頭を抱えていた。
「ちなみに、肌の色はどんな感じでござる?」
「……おおよそ緑と青ってところだね、というか鱗だよ」
「……そうでござるか……仕方がないでござるな……納得はいかないでござるが」
なるほど、このもやもやを告白していくんですね? そういうことなら僕もさらそう。
僕は頷き、実際に見た化け物然とした蛇のモンスターの納得のいかなさを告白した。
「……そうだね……確かに何も間違ってはいないんだけど。やっぱりそこはセクシーなお姉さんを期待してしまうよ」
だってメドゥーサなんだよ? そりゃあ期待してしまうじゃない?
髪が蛇って言われていたとしても、自動で動くくらいでヘビ要素は十分だと思うんです。 ガチ蛇怖いですし。
ビジュアルのために解釈を飛躍させる。
それは暴挙ではあるけれども美しさのためなら多少の設定変更は許される……そんな懐の深さは悪ではないと思う派である。
熱っぽく語ると、周囲の表情がニンマリと変わるのを僕は見た。
「おやおや……ワタヌキ後輩。いい趣味をお持ちで!」
「あれ? 先輩? 共通の認識なのでは?」
「そうでござるか……ワタヌキ氏がそこまで望むなら仕方がないでござるな!」
「ま、まぁね?」
「まず可能かどうか、それが問題です!」
「とりあえずビジュアルを変えられるのかって話なら、まぁ変える余地はありそうだよ?」
すぐさま攻略君に確認してみると、攻略君は呆れながらも可能だと返事を返した。
そしてもう一人、可能だと口に出して答えたのは僕だけではない。
浦島先輩もまた力強く頷いて、その成果を発表し始めた。
「というわけで、もう少しメドゥーサを美人に傾けられないか会議を始めたいと思います! というか、もしやと思い少し調べたんだけど、こっちの伝承と似たような由来のモンスターっぽいです」
「……何をしているかと思ったら、準備良すぎじゃないですか?」
図書館で何を調べているのかと思ったら、まさかこれとは。
浦島先輩は必要なことだと、しかし胸を張っていた。
「数々のモンスターを美少女化してきた我々だ、可能性は模索したい……そう思って当然じゃないかね?」
なるほど? 半端じゃないですね浦島先輩。
僕は圧倒され言葉を失い、レイナさんは一筋流れた冷や汗を拭っていた。
「流石シノです……倒しづらくなるとか一切考えない、そこにしびれますね」
「テイムしたらまた見た目が変わるんでござるか?」
そして今までの経験からやり方を予測した桃山君だったが、メドゥーサの場合は少し違う。
説明を引き継いだ浦島先輩はいやいやと首を横に振っていた。
「今回の場合はいいえだね。アレはモンスターに変質した系統のモンスターで、精霊由来というわけでもないみたい」
「変化の方法が違いますか?」
「そういうこと。でも今回の場合はあの変質の元になった呪いをどうにかすればいい。少し蛇モンスター要素が緩和されてもおかしくはないかもね」
つまり必要なのは、超強力な解呪の力だ。
だけどこの呪いに関しては、僕らに手がないこともなかった。
浦島先輩はいつの間にか僕を見ていて、僕は静かに頷いた。
「まぁ行けそうですね、こっちにはひのたま君もいますから」
彼の呪いの腕前はおそらく相当なものだし、行けるかもしれない。
もうひと頑張り頼むよ、ダークひのたま君。
完全に作業どころじゃなくなってしまったことだし、僕らは再びメドゥーサの元に行くことになった。




