第302話さっそく先輩がエルフを美女化していた
「いらっしゃいませ。こちらで受付をお願いします」
「あ、はい……」
フロントにはエルフの受付がいて丁寧に対応された。
侵入してきたモンスター対策に、かなりの数、他のエルフも武装をして詰めているらしく、建物の中には気配も結構あるようだ。
それにしてもここのエルフは言葉も操れるようで驚いた。
知能には個体差があり、これはテイマーのイメージによってある程度の揺らぎがあるはずだが、ジムの中にいるエルフ達は円滑なコミュニケーションが取れるレベルばかりだった。
建物内部の施設もすごい。
ダンス用のスタジオや、ゆっくりくつろげそうな大浴場まで完備しているんだからその本気具合がうかがえた。
そしてたどり着いた巨大プールでは飛び込み台の上で競泳水着を着た浦島先輩が今まさに飛び込もうとしていたところだった。
「……やばいな。もう仕上がってる」
すでに彼女の身体から無駄な脂肪はかなり削ぎ取られ、絞られている。
それはきっとすごく効率的なトレーニングの賜物で、浦島先輩ボディの秘密を見た気分だ。
先輩は軽くジャンプし、鋭く着水。
最小限の水しぶきにやりこみ具合が垣間見える。
そしてすいーっと泳いでやってきた浦島先輩に僕はタオルを差し出すと、先輩はニカリと笑ってそれを受けとった。
「お疲れ様です、先輩」
「お疲れー。どうよ? いいでしょ?」
「流石に驚きましたね。ダンジョンに見えないですよ」
「確かに。建築系のスキルがあれば設備は結構自由に作れるからいいよね。ワタヌキ君もジム使ってみたら? 探索者は体が資本だよ? まぁ……意味があるんだかないんだかわかんないけど」
「いやーあると思いますよ?」
僕はつい即答してしまった。
特に浦島先輩のボディメイクを目の前にしてとても意味がないなんて言えない。
「おいおいワタヌキ後輩、そんな熱視線を向けられるとテレちまうぜ?」
浦島先輩はいやんと寄せて上げて引き締まったボディを披露しつつ、補助についていた二人の美女エルフにキャップとゴーグルを手渡していた。
使いこなしていやがる……。浦島先輩、流石である。
「うん、ありがとう。ああ、飲み物もお願いできる? それでどうしたの? 今更攻略ってことでもないでしょ?」
「……いえ、まぁ攻略のお誘いなんですけど」
「え? マジか真面目だねぇ。ワタヌキ後輩は」
「いや、先輩には負けます。ボディメイクの秘密を見た気分ですよ?」
「そう? 私としちゃあまだちょっと不満なんだけどね。もうちょい絞りたいわ」
「そういうのあるんですねぇ」
「まぁね。案外思った通りに行くと楽しいもんだよ? でもトレーニングをおすすめしておいて申し訳ないんだけど、まだジムも調整中なんだよねぇ。できたら教えたげるね。それで? 何すんの今度は?」
「ああ。はい。実は、アイテムを探しに行こうかと。呪いを使う相手なんで解呪が得意なメンバーを探していたんです」
「ほぅ。なに探してんの?」
「新しい盾ですよ。お色直しの新衣装を模索中でして」
先日の会議も含めて報告すると、浦島先輩の目は輝いていた。
「いいね! 私も武器とかイマイチなんだよなぁ……近いうちに探してみようかな?」
「拠点の城で作れない強力な魔法もありますから、いいのあったらストックしておくといいですよ?」
「いいね。それで、君の事だからもういい装備はピックしてあるんだよね?」
好奇心を隠しきれていない浦島先輩に僕は今回のターゲットを告げた。
「はい。先輩……メドゥーサって知ってますよね?」
そしてその名を出した瞬間、浦島先輩の表情が変わる。
目に見えてワクワクしている先輩はトレーニングとは別の意味で高揚しているように見えた。
「……ほぅ。いいじゃないか、続けたまえよワタヌキ後輩。実に興味深い」
「そう言ってくれると思いました」
俄然やる気になった浦島先輩は、女神とか大好きで神話に寛容な女子である。




