第301話先輩の声が弾んでいる理由
『では次に回復系のスキルに強いメンバーを一人連れて行こう』
買い出しを終えて、次のステップは攻略メンバー集めである。
てっきり一人で行くのかと思ったが、今回は最低二人以上推奨らしい。
「浦島先輩かな? それはやっぱり……」
『まぁ、万一石化された場合の備えだね。相当に強力な呪いだから実力者が求められる。解呪できるメンバーがいると、安定感が違うよ』
「安定感が違うか……。じゃあ浦島先輩今何階?」
『彼女は今……55階にいるみたいだね』
「55階? カフェじゃないのか……」
そんなところで何してんだろ? 精霊の仕入れ? それとも妖精系モンスターの探索?
なんにしても、まだ何か作業に勤しんでいるのは間違いないようだった。
「何気に浦島先輩もマメだよねー。よし、行ってみようか?」
危険な場所に向かうなら、攻略君がわざわざ指摘したポイントを適当にはできない。
僕は浦島先輩を訪ねに行……ったのだがやって来たその階層で、まず僕は驚くべき光景に迎えられていた。
「えー……なにこれ?」
おそらくここは僕が作った売店の一店舗であるはずだった。
しかしそこには……かなりの大きさのあるコンクリート製の建物に周囲を取り囲まれていた。
あまりにも場違いな妙に清潔感のある明るいロビーで僕は開いた口が塞がらない。
「え?……なにこれ?」
僕はとりあえず電話をかける。
するとほとんど間を置くことなく先輩は電話に出た。
「おや? ワタヌキ後輩。どうしたの?」
「あ、お疲れ様です。浦島先輩に頼みたいことがあって探してるんですけど……今大丈夫ですか?」
「あ、そうなの? いいよ大丈夫。今55階にいるけど、来る?」
「ああ、はい。もう来てるんですけど……何ですこの建物?」
手短に説明すると、分かりやすいほど浦島先輩の声色が弾んだ。
「ああ、もういるのか。なら見ちゃった? フッフッフッ……すごいでしょ? これがいわゆるマイジムってやつだよ!」
「……マイジム……!?」
薄々トレーニング好きだということは察していたけど、ついにここまで来たか。
そしてすでにそれっぽいものは完成しちゃったみたいだった。
「そう! 有名どころ完コピして来ちゃったー。飛び込みできるプールもあるからね! ……いやぁマイジムって憧れるよねぇ」
「いやまぁ。わかりますけど、思い切りましたねぇ」
「ね! いやぁ、私も驚きだよ……まぁ設備とかもう一息って感じなんだけどさ。ああ、売店を改造して1階に入れちゃった。ごめんね?」
「いやそれは別にいいんですけど……うちのモンスター大丈夫でした? 暴れたりとか」
「大丈夫だったよ? 交渉したし。というか丸ごと囲っただけなんだけどさ」
「なるほど……」
それは純粋によかったとは思うんだが、結構うちの天使はちょろいのかもしれない。
「興味があるなら入っておいで? 歓迎するよ? 受け付けで会員登録したらセキュリティに引っかからないから」
「……了解です。じゃあ、やってみますね」
「はいはい! じゃあ後で!」
通話を切る。
僕はなるほどとマイジムという聞きなれない言葉を頭の中に反芻した。
「……セキュリティとは?」
疑問はあるけど、まぁいっか。
電話の向こうの浦島先輩は実に楽しそうで、とにかく自慢したい感情がにじみ出ていた。




