第298話力の悪用ペナルティ
「待っていたよ……ハバキリ君」
「やはり、君が一枚噛んでいるんだな。ワタヌキ……いやファイアーボールヘッドの方がいいか?」
僕の後ろには赤いパーカーとガスマスク姿の桃山君が立っていた。
背後の桃山君を一瞥し疑問を確信に変えたハバキリ君は僕に険しい視線を向けてくる。
「待っていたということは……話を聞かせてもらえると考えていいんだな?」
ハバキリ君の質問に僕は頷く。
そして一応拘束され、気を失ったままのハットリさんに僕は視線を向けた。
ハバキリ君もまずはそこをはっきりさせておかねばならないと、彼女のことに言及した。
「……彼女は誰なんだ?」
「正真正銘ハットリさん本人だよ」
「……本気で言ってるのか?」
「もちろん」
僕は再び肯定。
まぁ一旦疑問を持つと、気になっちゃうよね? それは分かりますとも。
だから、まずはこのハットリさんは本人なのか? そんな疑念を綺麗に晴らさなければ始まるまい。
「でもどんなに言葉を尽くしても。納得できない言葉に意味はないと僕は考えてる」
そこで僕は瓶入りのアイテムを取り出して、ダンダンダンと机の上に並べて見せた。
「これは……使いたくなかったけど。仕方がない」
「一体何なんだ……?」
ハバキリ君の圧にも負けず僕は深く呼吸し、ポーションを端から一気に飲み干していった。
ああ、飲んじゃった……。そして変化は一瞬である。
「……うっ!」
ドクンと心臓が跳ねた。
そして灼熱が全身をめぐって身体を作り替えていく痛みに僕は耐える。
しばらくシュウシュウと全身から煙を出していた僕は丈が合わなくなりパツパツになった服のまま椅子に座り直すと、ふぅ……と溜息を吐いた。
「―――失礼。まずは見せた方が早いと思ってね。見苦しいところを見せてしまってすまない」
「……!」
「……!」
きっと今鏡を見たら、僕は高身長!な、僕の考えた最強のイケメンへと変貌を遂げていることだろう。
ハバキリ君はともかく、桃山氏までのけぞるほど大いに驚いていたけど、存分に驚くがいいさ。
言っておくけど僕も不本意な変身だからね?
パクパクと酸欠の金魚のようにいいリアクションをしていたハバキリ君だったが、その後僕と、そしてソファーで寝ているハットリさんを見比べて、言った。
「……だれ?」
「ワタヌキ君だよー? そしてそっちはハットリさんなんだね」
「つまり……本当に?」
「そういうことだね」
頷くとハバキリ君は赤面した顔を隠すように手の平で口元を覆った。
「……なんか、本当にすまない」
「いや。動揺させちゃって、僕の方も申し訳ない。だけど、この後、追い打ちまでしないといけないと思うと心が痛むよ……」
「それは……一体どういう……ことだろう?」
ハバキリ君はもうすでに怯んでいたが、すまないが手心を加えるつもりなんてなかった。
穏便にいい関係を築ければよかったんだろう。
けれどちょっとこのハットリさんは釘を刺しておかないとまずいと今回の事でよくわかった。
そして釘を刺すのに一番効果があるであろう人物は目の前のハバキリ君以上に適任はいないだろうと確信している。
「というわけで……聞いてもらいましょう。こうなった経緯を」
「あ、ああ……そのつもりで来たんだ」
頷くハバキリ君に僕は何もかもぶちまけた。
最初こそ混乱していたハバキリ君は、次第に青い顔になり、最終的に真っ赤な顔で恥じ入り、固まってしまった。
「……というわけで薬屋を手伝ってもらったって訳なんだ」
語り終えた僕の前にはハバキリ君の顔はない。
見えるのは頭の後ろである。
「此度はうちの者が大変なご迷惑を……」
彼はそれはそれは綺麗な土下座をキメていた。




