第280話エンジェルズにおまかせ
「お、おい。本当に電話が通じるぞ……」
「おいおい嘘だろ?」
「すごいじゃん! ありえなくない!?」
恐怖も忘れて、届く喜びの声の数々に耳を澄ませて、僕はウンムと頷いた。
そうでしょうすごいでしょう? 現代人はやっぱりスマホはテンション上がるよね?
ステッカー一つで文明レベルが一段上がる素晴らしい仕事は、今回の依頼にも合致していて我ながら良い贈り物ではないかと思う。
「では通信手段を得たところで、連絡は密にすることを徹底してください。ピンチになってもならなくても、何なら常に通話状態にしていてもいいです。そして、この密林の階層はとても危険なエリアですが問題ありません。まずは皆さんを……この階層で戦えるようにします」
?
当然訳が分からないという視線が集まるのを感じるが、任せなさい。
今回用意した攻略方法、その要になるのは―――コレだ。
中位天使。
様々な種類のいる天使型モンスターを僕は仮にエンジェルズと呼んでいる。
まぁ元ネタの話をするとややこしくなるけど、ザ・天使という見た目からの命名である。
様々なスキルを備えたパーティとして機能するエンジェルズは今回大いに活躍してもらうつもりだった。
彼女達の強さなら単に護衛として活躍してもらうのもいいだろうが……しかし今回は少し趣向を変えてみた。
「エンジェルズ。彼らに憑依しろ」
そう指示すると天使達の姿は揺らいで、次々に生徒会の人達の身体に溶けていった。
ちなみに精霊に近いからこそ可能な荒業は本当に荒業なのであまり推奨はしない。
しかし効果は抜群だった。
高まる魔力で大気が揺れていた。
憑りつかれた皆さんは自分の実力を遥かに上回るとんでもない魔力の波動をビリビリ感じているに違いなかった。
「こ、これは……一体何が!」
「ち、力が……力が溢れる!」
「今まで恐ろしくて仕方がなかったのに! まるで負ける気がしないわ!」
「うひゃーーーーーーーっ!!!! 力が ふっ ふきだしてきたっ!!!! スゲーっ!」
……大興奮みたいだ。僕も言ってみたいなそういう台詞。
だけど効果はバッチリかな? うん。
彼らの頭には天使の輪が浮かび、今なら憑依した天使のスキルと魔力を自在に使えるだろう。
これならば直接戦え、レベルも上がる。
いい感じにレベルが上がったら、この階層は散歩感覚で歩けるようになっているはずだった。
「これで、問題ないはずです。ただし今回限りの一時的なパワーアップですので、戦闘は避けずに積極的に行うとお得です」
まぁちょっと反動がきついが……最後のお土産に上級ポーションでも渡せば何とかなるだろう。うん。
「では、これからこの階層にいるエルフ型モンスターの探索を行います。発見しだい連絡をお願いしますね。その間に出会ったモンスターは討伐しても構いません」
「「「「はい!」」」」
先ほどとは比べ物にならないほど元気に声が弾む彼らは、すぐにパーティに分かれて、探索に向かっていった。
その動きに乱れはなく、さすがは生徒会と僕は唸る。
ただそれを見ていた浦島先輩はトントンと僕の肩を叩いて、こっそりと尋ねて来た。
「……あのさ。ワタヌキ後輩? 少し聞きたいんだけど?」
「はい、なんです?」
「今回の探索、私が思ってたのと違うんだけどさ……場所とか一発でバシッとわかるんじゃないの? 教えてあげるの忘れた?」
「いや、僕もすぐに探しに行きたいとは思うんですけど……いつもみたいな直行だと、訓練にならないので」
「ああ、まぁそれもそうか。いいよ大丈夫。そういう事なら問題ないよ」
「それに……探索っぽい方が楽しくないですか?」
「そんな理由?……まぁ。わからないでもない」
浦島先輩には申し訳ないけれど、そもそも彼らは特訓しに来ているのを忘れてはいけない。
ファイアーボールヘッド相談室としては、レベルの一つも上げてあげないと、面目が立たないのである。
「本当にありがたいことです……それに実に素晴らしい。希望以上の指導をしていただいています」
そして今回のメニューは、会計先輩大絶賛だ。
浦島先輩はうん?っと違和感があったように訝しげに眉をひそめていたけど、まぁ、会計先輩最初に比べて様子が全然違って違和感凄いですよね。
とはいえ、メインイベントがエルフ探索であることに変わりはない。
浦島先輩にはそれを楽しみにしてしばしどんと構えていてもらうとしよう。




