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ダンジョン学園サブカル同好会の日常  作者: くずもち


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第242話情け容赦なんてする余裕はない

 竜玉とは?


 それはドラゴン属性のモンスターを大きく弱体化させる呪いのアイテムである。


 龍宮院先生のテイムモンスターはそれを視界に入れた瞬間、ゴキブリを見つけたみたいな表情で眉を顰めていた。


 それはそうだろう。


 ガチガチに対策されてテイムされたわけだし、あそこまで封殺できるのは珍しい。


「いやぁ。私ずっと竜の討伐は不参加だったからねぇ。ちょおっと不満だったんだよ」


 そしてなんだかんだ、まともにドラゴンを討伐できていない浦島先輩がすさまじくやる気である。


 しかし実際にそいつに遭遇すると、とたんにやる気はしぼんだようだった。







「……あんなのと戦ったの? マジかー」


「いや、あそこまでじゃないです」


 それはあまりにも今まで戦ったドラゴンとは違っていた。


 空を悠然と飛ぶ黒いウロコのドラゴンは、しかしその大きさが前の階層で戦った巨大ゴーレムと同じかそれ以上ともなると常軌を逸していた。


 そして何よりここに来るまでに鍛え上げた魔力が、感覚が、巨体から荒々しく迸る強大な魔力量を察知してしまう。


 おそらくそれは種族差と言うべきものだろう。


 僕らはレベル的には格上のはずなのに、明らかに魔力では劣っているとそう実感するほどにそこには圧倒的な差が存在した。


 その上ドラゴンの肉体のスペックを考えると、人間なんてただの猿だと卑屈になってしまいそうだった。


 浦島先輩がゴクリと喉を鳴らす。


 僕は声を掛けようとしたが、その前に彼女はブオンとヘルメットのバイザーに光を灯して言った。


「……いいじゃない。もっかい聞くけど、今回の作戦の要。私なんだよね?」


「その通りです」


「じゃあ。始めようか。勝算は……あるんだよね?」


「ええ。信じてくれるなら」


「なら大丈夫……勝率100%だ」


「なら―――情け容赦なく、徹底的にサポートします」


 最初の指示はもう出してある。


 浦島先輩がその魔力を全力で解放すると、ドラゴンの視線がこちらを向いて頭に直接声が響いた。


『ホゥ……我に挑もうと言うのか? 小さき者よ。……よかろう、退屈しておったところ―――』


「桃山君……銃構えて」


「了解でござる」


「撃って」


 ドンと一発。イベント会話をスキップするべく黄金の弾丸がドラゴンに飛んで行く。


 弾丸は炎の鳥となり、ドラゴンに襲い掛かると顔面に命中して燃え上がっていた。


『グオオオオオ! おのれ! 躾のなっていないゴミ共め! 話している途中であろうが!』


「……」


 生命力を吸収する炎に視界を閉ざされて、ドラゴンは叫んでいる。


 だが動きを止めたのが運の尽きだ。


 さらに追い打ちで僕は召喚を実行した。


「ヘビロテで悪いね! 行ってこい!」


 再び巨大質量の出現で、大気が激しく揺れていた。


 ゴーレムは空中に出現した瞬間に両腕を形成、組んだ掌をドラゴンの頭に叩きつける。


 衝撃の波は空気を伝わり、僕らの身体すら叩いた。


「……っ!」


「GOOOOOO!」


 更にそのまま大地に着地してドラゴンに組み付いたゴーレムは大迫力で超質量同士のプロレスに突入した。


 しかしそれにしてもやはりでかい。


 攻略君曰くあのサイズのドラゴンには、その巨体を支えるために体のどこかに魔力の源となる石が存在するらしい。


 それは竜が長い時間をかけて最高の宝石に自らの魔力を蓄積させ、変化させたもので、自分の魔力をブーストする効果があるようだ。


 それを体内に取り込んだドラゴンは寿命の制限が取り払われて無限の成長を手に入れる。


 あの大きすぎる魔力はその果ての物だろうと言うのが攻略君のうんちくである。


 まぁダンジョンだからそんな化け物をリポップさせているのだと思うからとんでもない話だが、確実にその石は明確な弱点となる。


 とはいえ普通、あのドラゴンの体内からそんなものを見つけることは不可能だ。


 攻略君はしかし的確に竜の魔石とでも呼ぶべきものの位置を看破する。


『私が位置を指し示そう……わかるかな?』


「ばっちりだ」


『だが今すぐ干渉は今の君の魔力では不可能だ』


 だから気を逸らす。


 うちの雷様はギターを陽気にかき鳴らして、位置についたと合図していた。


 慣れない格闘に苦戦していたドラゴンはスピーカーから叩きつけられた爆音に身をすくめる。そして音に反応して顔を上げると、渦巻く巨大すぎる魔力に目を丸くしていた。


『な、なんだこの魔力は……あの人間が? アレは……大気に満ちる魔力を取り込んでいると言うのか!』


 それはドラゴンさえもできない事らしい。


 ちなみにネクロマンサーになったからってできる様になるかどうかはわからない、高度な技能であることを明言しておこう。


 世界に満ちる魔力の流れを掴んで、自分のものに変換する。


 そんな無茶な話を聞いた時は驚いた。


 それは自分の魔力ほど自在に操作はできないが、ただぶっ放す分には無尽蔵と言っていいエネルギー源となるそうだ。


 その大きさを例えるなら、今、目の前の女の子が神様の類にしか見えなくなるくらい。


 そんな大きすぎる魔力をレイナさん経由で精霊達も受け取り、破壊力として開放した。


 馬鹿みたいな出力の雷魔法は空の色を変える。


 稲光よりも鋭い閃光と共に放たれた白い砲撃が、ドラゴンめがけて降って来た。


『ぬぅ……!』


 だがドラゴンもただ喰らってはくれないらしい。


 咄嗟にドラゴンはゴーレムを引きはがし、飛び上がって口を開くと、全魔力を解き放つのが見えた。


 防御の魔力すらすべて反撃に回した、なりふり構わないブレスである。


 ドラゴンのブレスは咄嗟の切り返しだったにもかかわらず、レイナさんの砲撃は相殺され霧散した。


「実におしい」


 背中に命中でもしてくれれば堕とせたものを、しぶとい奴だ。


 だがショートカットには失敗したが順調だった。


 迎撃に大量の魔力を使ってくれたのなら、好都合である。


 結局……防ごうが倒されようが、僕にとってはどちらでもいい。


 レイナさんは完ぺき以上の仕事をしてくれていた。


 隙を逃さす、僕は準備していた竜玉とロックオンしたそれに集中した。


「―――いただき」


 そして切り札を一つ使う。


 空間魔法で狙いの物を入れ替えると、僕の手には青白い巨大な宝石が出現して、ドラゴンの腹からは呪いの光が漏れだした。


『うぬぅ……! 力が! ……お、お前か! 私の身体に何をした!』


 本日最大級の咆哮と共に、焦りに乱れた思念が全方位に叩きつけられる。


「……」


 僕は慌てず騒がず、今すり替えたドラゴンの魔石を浦島先輩に手渡し、冷静にと彼女の肩を叩いた。


「これであいつはただのデカい蜥蜴みたいなもんです。集中して……しっかりテイムしてやってください」


 だがマスクで隠れた浦島先輩の声は、若干呆れ気味である。


「ボコボコじゃん……容赦ないなぁ。なんか……もうドラゴンの方が気の毒になったよね」


 まぁモンスターを倒すというのはいつも切ない。


 そして狩りとは本来一方的なものだと思う。


 ポチリと浦島先輩が手元のスイッチを操作すると、ヘルメットに文字が表示された。


 それはあらかじめ用意していた、ドラゴンをテイムする補助のための魔法文字である。


 投射される光は盗み出した竜の魔石に一文字ずつ溶けてゆき浦島先輩とドラゴンとのパスをより強固に繋いでいった。


『い、一体何が……グオオオオ!』


 竜の魔石を盗み出せた時点で、8割テイムは成功したと言ってよかった。


 プライドの塊であるドラゴンが、初動でこちらを舐めているうちに奇襲。


 程よく魔力を消費させることで防壁に隙を作って、ドラゴンの魔石を空間魔法で奪い取る作戦は大成功だ。


 だがもう一手、浦島先輩とドラゴンの綱引きを援護できる一撃はそろそろドラゴンの足元に到達予定だった。


「相手にとって不足なしってところかな……じゃあ、王の一撃を見せてあげようか」


 三つの格闘ジョブの熟練度を上げ切った、最上級職。


 その一撃はあらゆる障壁を突破する、究極の一撃だ。


 ギチリと握りこんだ拳にゆらりと黄金のオーラが立ち上って格闘王のスキルは龍宮院先生の意思を形にしていく。


「必殺っ……!」


 そして放たれた立ち昇る輝く掌の一撃はドラゴンを丸ごと掴み、空中に跳ね上げると爆散した。


「……ぬぅぐお!!!」


 握りつぶされて白目をむくドラゴンなんて僕は人生で初めて見た。


「いい威力だ。必殺技は……いや、あえて名前は付けずにおこうか」


 ドラゴンを堕とした龍宮院先生は、実にお見事。


 そして意識が飛んだ瞬間なんていうのは、テイムの引っ張り合いの最中には致命的である。


「……掴んだ」


 浦島先輩は呟く。


 ニヤリと唇の端を吊り上げた浦島先輩の元にドラゴンは墜落する。


 そしてよろよろと身を起こしたドラゴンはゆっくりと頭を浦島先輩に近づけ。


「グロロロロロ……」


「テイム完了……ヒュー♪ 緊張したわー」


 ―――そして浦島先輩が伸ばした手は巨大ドラゴンの鼻先に添えられ、優しくなでることに成功した。

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― 新着の感想 ―
石破天驚…握り潰してるならゴッドフィンガーの方だ!
直前の文章と合わさって「掴んだ」 が 「噛んだ」に空目したw
廬山昇龍覇 的な何かかな?
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