18 モブ令嬢、誘いを断る。
お読みくださりありがとうございます!
あの一件を知ったウィルヘルム様は、以前よりも私に会いにくることが増えました。
それと、クラスメイトたちも目を光らせてくれるようになったり、クラスメイトと以前より仲良くなったりと周りに変化がありました。
1人で過ごすゆっくりとした時間が減ってしまったけど、これはこれで楽しいのでいいんですけどね。
ひとまずはこれでこの前みたいなことは早々に起こらないだろうと言うこともあり、一安心です。
だけど、そう安心してもいられない事態がありまして……。
一難去ってまた一難、もうすぐテスト期間のわけで。
一般的な、貴族以外が通う学校と比べると貴族の通う学校は少々レベルが高くてですね。私のような庶民に近い貴族には日々の授業すら予習復習ありきでついていくのがギリギリなんです。
王子や上級貴族が通っていることからレベルの高さは察してもらえると思いますが。
放課後、どうせ学校で少し時間を潰してから帰るというのを知っているウィルヘルム様に誘われて一杯のお茶をお供に食堂で過ごします。
時折、バレット様がいるときもあるけど、それはそれで会話が弾むので楽しい。
あ、でもウィルヘルム様を置いてけぼりにはしないのです。そこは注意をしておかないとですからね。
「アスクル嬢、明日って空いてる?」
「明日、ですか」
「そう。バレットとよく話してる店をいくつか案内してもらいたくて」
明日は休日。
なので1日フルで使えるのでお店巡りをするにしてもちょうどいい日ですよね。
「でも、予定があるならそっちを優先して欲しい」
予定はないと言えばないんだけど……。
それにウィルヘルム様の誘いを断るほど大事な用事なんてほぼほぼないかと。
だとしても、今回は――。
「申し訳ありません、ウィルヘルム様」
私は席を立って勢いよく頭をウィルヘルム様に下げましたが、ウィルヘルム様は呆れたように笑って座るように言われてしまいました。
こっちも急に言いだしたからと気にしなくてもいいと言ってくださいましたが、理由!
なんでもウィルヘルム様のお姉様から急かされてのことらしいです。
たまたまウィルヘルム様が使用人の方と話をしていたのが偶然家に帰ってきていたお姉様の耳に入り買って来いと言われたようです。
バレット様に聞いても分かるのではと思うけど、そうもいかないみたいでバレット様に尋ねたところ、店の名前や場所が曖昧すぎてハッキリとしないとのこと。
思い返してみればバレット様は食べ物の見た目を話して、こっちでそれを読み取ってたっけ。
「それでしたら行くべきですよね」
「いや、先に入ってた予定が優先だよ」
いや、それはありがたい言葉なんですけども、私の立場的にもウィルヘルム様のことを考えても行くべきですよね。
それから来週なら大丈夫かと聞かれ、私は正直に伝えることにしました。
「予定っていう予定ではないんです」
「うん」
「もうすぐテスト期間なので、勉強をと思いまして……。赤点スレスレが常ですし、今の状況を考えるとこのままっていうのはさすがにどうなのかなって思っていて……」
そう、普段から授業に追いつくのでやっとの私は学校の大きなテストで毎回赤点スレスレで、最近は色々とありすぎて今まで以上に危ないわけで。
特に今の状況――ウィルヘルム様の婚約者となっている以上、あまり下手な点数を取るのも良くないと思っているのも確かです。
まぁ、あまり変な目立ちかたをしたくないってこともあるけどね。
「あーそっか、テストか」
「はい、そうです」
なんだこのウィルヘルム様の余裕っぷりは⁉︎
むしろその余裕っぷりに腹立つなもう、そりゃあ、ウィルヘルム様のような方にとってはだるい復習程度なんでしょうけどね。
「教えようか?」
「へ?」
「学校の授業範囲なら問題なく教えられるし、この前のお詫びとでも思ってくれればいいから」
今この人、テスト範囲じゃなくて、授業範囲って言いました?
どんだけ余裕なんですか、この人は。
それはさておき、ですね。
「よろしくお願いします」
私は突っ込みたくなるのをしっかりと飲み込むと、勉強を教えてもらうべくウィルヘルム様に右手を伸ばして頭を下げるのでした。
似たような家柄で集められているので、割とレイたちのクラスは仲がいいです。
レイにちょっかいをかける令嬢<ウィルヘルムなので何かあればウィルヘルムの耳に入る模様。




