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三神正義と魔法の箱  作者: 桜華 澄
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魔法の箱の正体

魔法の箱の正体


「『魔法の箱』と言ってもここから何か不思議なものが出てくるというわけではない。

僕が『魔法の箱』という呼び名をつけたのは、今後の医療に今までにはなかった効果を生み出す可能性を秘めているからなんだ。実際に使用してみてその効果は確実に現れた。」

「どんな効果が…」

「正義、お前が倒れて意識がなくなったとき、西洋医学のあらゆる手を尽くしたが、一向に良くならなかった。これはまだ公の使用は認められてはいないが、正義が倒れたときには緊急を要したので使用した。マリアの話だと、医療天使が治療を手伝ってくれたそうだ。その結果正義は助かった」

翔兄さんは笑顔を見せながら話してくれた。

「そうだったのか。その医療機器は兄さんが自分の手で作ったのか」

「自分が設計して材料を調達した。実際に組み立てたのは機械組み立てを専門に行っている業者だ」

「『魔法の箱』というのがそれの機器の名前なのか?そのままだとなんだかわからないと思うよ」

「そうだな、そういえばまだ決めていなかった。『三神式ヘルサー』というのはどうかな」

「うーん。まぁいいか。でも医療機器として正式に登録できたら、それこそ画期的な治療ができるね。今まで重い病気で苦しんでいた人も治せるのだろう?」

「そうだよ。画期的なんだ。この魔法の箱は」

兄さんは満足そうにしていた。心の中から喜びが湧き上がってくるような表情だ。二人で笑いながら話をしていたら、ドアをノックする音がしてマリアが入ってきた。

「ショウ、うれしそうじゃない。私も仲間に入れてよ」

「マリア、正義は順調に回復していて、間もなく退院できるようになるはずだ。その時は快気祝いでもやろうじゃないか。マリア、どこかいい店は知っているかい」

兄さんはマリアに対してもうれしさを隠さなかった。この病院のいろいろな問題も解決し、新しい医療機器を用いての治療にも期待が持てる。兄さんがうれしくて気持ちを抑えられないのはよくわかる。しかし俺はマリアに心配かけてしまい申し訳なく思っていた。

「セイギ、よかったわね。いつごろ退院できそう。お祝いしないとね。でも夏休みもあとすこしになっちゃったじゃない。学校の方は大丈夫?」

マリアは、俺がアメリカの最先端医療のことを知りたいために来たことを知っている。

だから俺が悪霊退治を行って大変な目に遭ったことに対して、心を痛めているようだった。

「マリア、退院したら俺はすぐに日本に帰るけど、アメリカに来て本当によかったよ。将来は医者になろうと思っている」

翔兄さんとマリアは俺の将来の希望を聞いて、一緒に喜んでくれた。

「正義、決心したんだな。そうかよかった。この病院でこれから多くの医療現場を見る時間はないが、日本にいても勉強は十分できる。僕は医療機器を持って、マリアと一緒に日本へ戻ろうと思っていたんだ。だが…」


マリアの兄ジョンが倒れる


翔兄さんがそんな話をしているときに、突然ジョンが倒れたと連絡が入った。

兄さんとマリアはジョンのところに急いだ。

「ジョンがこんなことに…。私にできることがあったら何でもしてあげたい」

マリアは、霊が見えるということでジョンのサポートしていたようだが、それ以上のことまで行っていたわけではない。実は彼女も将来は医療の仕事にかかわっていきたいそうだ。そのような希望を持っていたからこそ、翔兄さんと知り合えたのだろう。

「私はショウから電気医療機器の話が出たとき、すごいことじゃないかと思ったの。もしこうした新しい機器が病気の治療に効果があるのならば、素晴らしいでしょ。私はそれまで医療の勉強をしたことはなかった。でもショウの話を聞いて、将来は医療にかかわる仕事してみたいと思ったの。ショウは三日間ずっとセイギに付きっきりで、医療機器を使って治していた。これだけ元気になるんだから、今後の医療現場にも影響を与えるんじゃないかしら。」マリアの言葉を聞いた翔兄さんは、

「ありがとう。でもまだ医療機器としての登録もしていないから大きなことは言えない。でも僕は希望を持っている」

マリアは彼のその言葉を聞いて、ショウについて行こうと思っていた。


 前進


マリアはジョンのもとに駆け付け、急患室の前で無事を祈った。翔兄さんはすぐにジョンの状態を診た。俺は急には動けないのでルシムに頼んで様子をみてきてもらった。その時ふと思った。

ジョンは以前、銃で撃たれた時の傷が痛みだしたのではないかと…。ルシムが、

「その通りのようだ。ジョンは銃で撃たれた時の傷がまだ完全には治っていない」

俺はミーシャヲの出番だと感じて、車いすでジョンが運ばれた手術室の前に向かった。

翔兄さんはジョンをレントゲン室に運ぶよう手配をした。

X線撮影を行った結果、ジョンの背中の大きな骨のところに破片のようなものが見つかった。だが、普通の医者では取り除けない難しい場所にあった。翔兄さんはそれを確認して、

「やはり思った通りだ。手術をしてこの破片を取り除こう」

準備が整い兄さんが手術室に向かうときに、俺はミーシャヲに言った。

「出番だぞ。翔兄さんの手術を手伝ってほしい。早速スタンバイしてくれ」

ミーシャヲはそれに応えて、

「あたい、腕を振るってくる」

彼女は手術室に向って飛んでいった。俺とマリアは、ジョンのいる手術室の前で待つことにした。俺はジョンのことを思うと、病室に横たわっている気にはどうしてもなれない。マリアと話しをした。

「大丈夫だよ。兄さんの手術の腕は確かだから。それに手術をサポートする医療天使のミーシャヲも凄腕なんだ」

俺はマリアの心配を少しでも和らげてあげようとした。

「セイギ、ありがとう。ジョンはきっとすぐに元気になると思うわ」

マリアは自分を励ますように言った。手術は俺が思っていたよりも時間がかかっているようだ。彼女は依然として心配そうな顔をしていた。俺は気持ちを少しでも和らげてあげようと思って、違う話題を切り出した。少なくとも俺の話を聞いているときだけは、マリアはジョンのことを心配し続けなくて済む。

「実は俺が意識を無くしていた時に不思議な夢を見ていたんだ」

「どんな夢だったの」マリアは俺の話に興味を示した。

「夢の中で俺がいたのは不思議な世界だった。そこの空気は愛で満ち溢れていた。いや、夢と言うより肉体を離れて、そこまで飛んで行ったという感触だった。俺は世界中を旅行しているようでとても楽しかった。ここは霊界なのかと感じた。でもその時ふと思ったんだ。楽しいと言ってもここにいるのは俺一人だ。なんでみんなと一緒じゃないんだ。そのような考えが心をよぎった時、ルシムたちが俺のところにやってきた。

彼らと楽しく話をしている中で

『俺はまだこの世界には来てはいけない。地上の世界でまだまだやらなければならないことがたくさんあるんじゃないか』と思った。そして兄さん、マリア、ジョンが心配しているのが俺に伝わってくるのを感じた。そしてこの世界に戻ることができた。

霊界の体験をし、実際に見てきて感じたが、この世界よりも美しく自由に動き回れるところだった。時空を超越した世界だ。でもそんな世界だからこそ一人でいるのはさびしいと思う。そこにも家族や仲間がいたら本当に素晴らしい所なんじゃないかな。そしてその素晴らしい世界が永遠ならば、まず現実の世界で家族や仲間と仲良く暮らすことが大事じゃないかと感じたんだ」


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