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“忌域”の辺境伯様に嫁がされた私、ハズレスキル「清掃」で荒廃領地と『王国の詰まり』を大掃除!  作者: 積と和〝
第1章 領都キャトルレアの夜明け

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第1話 嫁入りと盗賊

本文に修正がありましたので再度投稿します

「きゃっ!」

 馬車が大きく弾んだ。

 街道を全力疾走しているため車体が揺れ続けている。

 高位貴族としては装飾の少ない簡素な馬車だ。


「逃すな! 必ず捉えて殺せとの命令だ!」

 後ろから盗賊たちの怒号が響く。


 馬車では馬には敵わない。

 距離はあっという間に縮まり、ほどなくして追いつかれた。


「おい止まれ! その女に用がある。他の奴らは命までは取らん。そいつを置いてとっとと失せろ」


「え、え?」

 馬車がゆっくりと減速していく。

(また見捨てられるのね)


 馬車が完全に止まると窓から御者と護衛騎士が一目散に森へ逃げていくのが見えた。


「お頭(かしら)、いいんですかい」

「構わねえ、他の奴に用はない。それに、この森に逃げ込んで生きて出てきた奴はいねえ」

「へへっ、なるほど」


「おい、お前、ハーナス侯爵家の“ローザフラウ”嬢で間違いないな」

「…」

 震えて声が出せない。

 盗賊の1人に襟首を掴まれた。

「何とか言え」

 涙が止まらない。

(短い人生だったけどほんとに今日ここまでなんだわ)

 盗賊に揺さぶられながら何か言われているけどもう聞こえない。

 たった16年の人生、本当に短かったわね。


 16歳で王命という形で家を追い出され、冷酷非道と噂のノーブル・レアブラック辺境伯に嫁がされるため今向かっていた。


(そうよ)

 どうせ“忌域”と呼ばれる辺境伯領にいっても瘴気が酷く、魔物だらけ、作物も育たない不毛の地。

 長生きはできない、当然幸せになんかなれない。

 辺境伯様も押し付けられた花嫁を大切にしてくれるとは思えない。


(もう、私ここで死んでもいいかも!)


 一度大きく息を吸った。

「はい、私が侯爵家のローザフラウです」

 急に大きな声を出して盗賊が少し驚いた。

「な、なんだよ急に、喋れるなら初めからそうしろ。お頭、本人だといってます!」


「そうか、ローザフラウ嬢、あんたに恨みはないが死んでもらわんといかん。すまんな」

 不思議と恐怖はない。

(そう、今ここで死ぬのね。)

 じっと“お頭”の顔を見つめる。

「なら最後に誰に命令されたか聞いておきたいわ」

 お頭はゆっくり首を振る。

「それは、言えねえ」

 剣が首に当てられる。

 鉄の冷たさが伝わってくる。

 なんだろう、ひどく落ち着いている。


 すると…

「お頭、やべえ、グレーウルフの群れに囲まれた」


「ちっ、さっき逃した奴らが呼び水になったか」

 お頭が舌打ちした。

「おい、撤収だ。この女も連れて行く」

「お頭、ひと思いにやっちまえば」

「ばかやろう、証拠の死体を回収してる間に俺たちが食われっちまうだろうが」


 気づけば私はお頭に抱えられ馬に乗せられていた。その後、街道を風のように駆け抜けていく。

 馬の上からは、逃げ遅れた盗賊たちがグレーウルフに襲われ悲痛な叫びを上げる姿が見えた。


 私はそれを馬の上からぼんやりとみていた。


 ーーー


 一気に街道を駆け抜けグレーウルフから逃亡したおかげでずいぶん景色が変わった。この辺りは空気が重い。


「お頭、辺境伯領に入りましたぜ」

「あのグレーウルフ、辺境伯領から出てきた奴だな。魔獣に国境はないからな」

 お頭が手綱を引いて馬を止めた。

「お頭どうしやした?」

「待て…静かにしろ」

 低い声だった。

「囲まれたな」


 私も周りを見回した。

 けれど何も見えない。


「盗賊団か」

 どこからか、よく通る声が聞こえてきた。

「この領地に入ってくるとは命知らずなことだ」


「やべえ、辺境騎士団だ、逃げるぞ」


 辺境騎士団が素早く動く。

 十数人いた盗賊団が次々と地面に倒れていった。

「速え……待て、この女の命がどうなってもいいのか?」

 お頭が私を盾にして叫ぶ。


 騎士団の中でもひときわ立派な鎧を着た男が前に出る。

「見知らぬ御令嬢だな。攫(さら)ってきたのか。かわいそうに」

「団長、あのご令嬢は…」

「ああ、わかっている」


「おい、お前」

 団長さん?がお頭に声をかける。

「なんだ」

 お頭が団長の方を見た瞬間…

 “ズシャ”

 見ると団長さんがいるのと反対にいた騎士が近くまで来ていた。

「あれ?」

(お頭の人、ゆっくり馬から落ちていきますね)

「…え」

(お頭の首が……ない)

 私はそのまま意識を手放した。

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