第22話 あらぁ!!ベルゼちゃんじゃないのおお!
「着いたぞ」
「ここが…マイエル」
今までの街とは違い、蒸気機関を使った機構が張り巡らされている。
「何か…都会的…」
「ここは門番もいねえしな」
「え?警戒心薄くない?」
「誰が入ってきても気にしねえ街なんだよ」
「ちょっとした理由でな」
前を見たまま答える。
「……それ、大丈夫なの?」
「少なくとも、ここじゃ俺たちも犯罪者扱いにはならねえ」
「いや、そっちじゃない」
広いスペースにガラクタ丸を停める。
「今から回復魔法を使える魔族を連れてくる」
「お前はここで二人を見ててくれ」
「分かった。気を付けてね」
ベルゼはガラクタ丸から出ていく。
しばらく歩くととある店の前に立つ。
バーラグネス。
そんな名前の店だ。
「さて…と…」
すうっと大きく深呼吸をする。
ベルゼは店に入った。
「あー…悪いけどお客さん、ウチは夜営業なのよぉ」
「俺だよ。ラグネス」
「あらぁあああ!!ベルゼちゃんじゃないのおおおお!!!」
ダッ!!
ガバッ!!
屈強な男が抱き着いてこようと迫る。
ダッ!!
ザザッ!!
回避する。
「ンもう!相変わらずつれないのね!」
「…」
「?あんた、久しぶりに会ったかと思えば」
「辛気臭い顔してるわね」
「…」
「どしたの?この店で働きたいならいつでも…」
「頼む」
「?」
ベルゼは頭を下げる。
「助けてくれ」
「!!?」
「中にケガ人がいるんだ」
「お前にしか救えない!」
「…頼む!」
「ちょ!ちょっとちょっと!!なになに!?どうしたの!?」
「あいつらを助けてくれ!!」
「落ち着きなさい!!あんたらしくないわね…」
「…とりあえず、案内しなさい」
「…ああ」
ラグネスを連れて、ガラクタ丸へ戻った。
-ガラクタ丸 客室-
「……………」
「確かにこれは酷いケガね」
「ああ。子供は思ったより、大丈夫なんだが…」
「わぁ!おっきい…………お姉さん…?」
「あたしはオカマよ。お嬢ちゃん」
「おかま…?」
「………………」
ダキっ!
イリアは無表情のまま子供を抱き上げる。
そのまま客室から出る。
「とにかく、まずはこの人を治さないとね」
「頼む」
「大丈夫よ」
手をかざす。
父親の周囲が優しい光に包まれる。
「しばらくこうしておくから、あんたたちは休んでなさい」
「いや、だが…」
「あんた珍しく、焦ってんじゃないの」
「…」
「もう大丈夫だから一旦休んでなさい」
「わりいな…」
ベルゼは客室から出る。
「………」
イリアがベルゼを睨む。
「…何だよ」
「何だよ。じゃないわよ!!」
「あの人なに!?」
イリアがツッコむ。
「あいつが回復魔法使える魔族だよ」
「回復魔法!?筋肉で全てを解決しそうなおネエじゃない!」
「…」
「否定しないの!!??」
「…あんま否定できねえ…」
「否定しなさいよ!!」
「大丈夫だ」
「え?」
「腕は確かだ」
「今更シリアスに戻れないわ!!」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ケンカはだめだよぉ…」
「あ、ごめんねケンカしてるわけじゃ…」
「そうよぉ…お若い二人はケンカよりもちゅっちゅしなさい!」
「誰がするか!!!…って」
イリアの前にラグネスが立っていた。
「ラグネス!もういいのか?」
ラグネスは軽くウィンクをする。
「あとはこの子ね」
「お嬢ちゃん。ちょっとこっちに来てもらえる?」
「え…うん…」
「あとそこの小娘」
「あ,アタシ!?」
「あんたもついでに見てやるからこっち来な」
「…なんか態度悪い気が…」
「そら、あんな大声出したら聞こえてるだろ…」
「あ、アタシは大丈夫…」
「ええからこっち来いっつてんだよタコがああ!!!」
「は、はいいいい!!」
イリアと少女は怯えながらラグネスの前に立った。
二人を優しい光が包む。
二人の傷は見る見るうちに癒えていった。
「す…すごい…」
「わぁ!治った!」
「とりあえず、あんたたち二人はもう大丈夫。問題は――」
「父親の方か?」
「命に別状はないわ。ただし、定期的に回復魔法を受けないとダメね」
「…そうか」
「お父さん大丈夫なの?」
「大丈夫よ。だけど今は寝てるから少しだけ待っててね」
「ありがとう!お姉さん!!」
「オカマよ。でも…ま、悪い気はしないわ。お嬢ちゃん」
子供の頭を優しくなでる。
「すまんラグネス。感謝する」
頭を下げるベルゼ。
「…何言ってるのよ?」
「…え?」
「まさか…このままタダ働きさせる気じゃないでしょうね…?」
「…やっぱりそうなる…?」
「??」
イリアが不安そうに見る。
「そうね…」
「父親の方が治るまでは、ここにいて貰おうかしらね」
「やっぱか…」
「べ、ベルゼ…?」
「…大丈夫だ」
「しばらくここに滞在するぞ」
ベルゼはそう言い切った。




