第62話・喫茶店の『テレビジョン』
農園で働く琴浦姉妹の両親の手伝いを終え、夕刻。
親父さんたちと別れた俺と鮫川は、農園から少し離れた緑野に居残り、魔法を瞬時に発動できる剣・『8ビギンティリオン(通称・エイト剣)』を使って訓練をしていた。
「行くぜぇ、鮫川! ……パーフェクト・ヒットォ!」
【HIT(=打撃の当たり、命中)・瀬戸カケル所持魔溜石、『H』、『I』、『T』】
『パーフェクト・ヒット』とは俺が名前を付けた魔法だ。
『エイト剣』は魔法発動に欠かせないエネルギーを持った石・魔溜石をはめ込むことによって、様々なタイプの魔法を発動することができるようになる武器だ。
はめ込んだ魔溜石の種類、組み合わせによって発動される魔法が変わってくるわけだが、現時点で俺が持っている三つの魔溜石で生まれる攻撃魔法が、この『パーフェクト・ヒット』なのだ。
俺が振り下ろした剣先から青白い光の弾丸(気)が発射され、風を切り、三〇メートルほど先に立つ鮫川の方に向かって行く。
「パーフェクト・ヒット? ダサい名前付けたな? 俺の『グレイテスト・ダイナマイト・カップ』で弾き返してやるぜ!」
鮫川はすぐさま自身の剣先を宙で回して円を描き、マンホールほどの大きさの黄緑色の光を発した。
【CUP(=カップ・お椀)・鮫川所持魔溜石、『C』、『P』、『U』】
「お前の方がダサいじゃないか……」と呟きながらも、そのダサい名の魔法にいとも簡単に自分の放った攻撃が弾き返されて落胆する。
鮫川の魔法はまさに『お椀』のような形状で、湾曲した内側がこちらに向いて迫ってくる。
こっちの攻撃魔法はそのカーブに沿って跳ね返されたため、自身の攻撃がブーメランのように戻って来て、俺自身に襲い掛かってきた。
「クソッ!」と吐き捨てながら、横に転がり、跳ね返ってきた自分の気をかろうじてかわした。
さらに、『CUP』は元々攻撃魔法だ。
こちらの攻撃を跳ね返すだけでなく、『お椀』の気自体が数秒遅れで俺に向かってきた。
俺は倒れながらも剣を構え、相手の『お椀』の気を受ける。
俺の持つ魔溜石だけでは防御魔法を作ることはできないが、それでも『エイト剣』のみで多少の防御力(弱めの魔法)を持っているので、鮫川のまだ覚えて間もない攻撃魔法ぐらいなら抑えることはできる……はずだった。昨日までなら……。
しかし今日は、強い衝撃で吹き飛ばされた。
「どぅわっ、ぎゃああ!」
俺は打ちつけた体を押えジタバタしながら、満足げな表情の鮫川に叫んだ。
「痛て……。お前、もっと加減しろ……! み、美咲たちに言うぞ?」
何とも情けないセリフだ。
美咲とは、琴浦姉妹の姉で、この世界で俺を護ってくれている『魔法剣士』の一人だ。
そして何と言っても、未来の地球から転移させられた俺の、子孫に当たるのだ。
万が一俺がこの場で命を落とすことなどあれば、彼女たちの命にもかかわってくるのだ。
今日は自分たちの仕事のため農園には出ていなかったが、できる限り俺の安全を考えて行動する人なので、俺がこんな危険な目に遭ったと知ったら鮫川は非難されるだろう。
「お前が成長していないから悪いんだろ?」と、鮫川は勝ち誇った笑みを浮かべ言った。
「防御魔法ができないんだから、成長のしようがないだろ?」
「防御はそうだとしても、さっきのお前の攻撃魔法……何ヒットだっけ? 何ヒットって言ったか?」
しつこく訊く鮫川に、渋々答える。
「……パーフェクト・ヒットだよ」
「フハハ! そうそう、『パーフェクト・ヒット』だったな! その『完璧な』魔法だが、最初発動した時からあまり大きくなっていないじゃないか? 俺の『グレイテスト・ダイナマイト・カップ』がどんどん強力になっているのに比べてよぉ」
「耳にする度ダセぇ魔法名だな……」と強がりながらも、俺の中にも焦燥感がないことはなかった。
鮫川の攻撃魔法は確実に強力になっている……魔法剣士として成長しているということだ。
それに対して、俺の攻撃はあまり成長していないように思えた。
この魔法の剣・『エイト剣』は、魔法の発動頻度や使い手の経験値アップによってどんどん強化されていくという武器だ。
俺と鮫川が自分専用の『エイト剣』を手にしてから一週間が経った現在、二人の剣の強化度合、魔法剣士としての腕自体に差が出始めているように感じる……。
進展していないのは俺の魔法発動能力だけではない。
俺たちと共に二〇二〇年の地球から移転させられたクラスメイトの伊賀直寛……『キャッスル』から鮫川と一緒に脱出を図り、行方不明となっている彼の安否も未だにわかっていない。
また、この『惑星サライ』の地を踏んだ可能性が高い俺の親父を含む、新エネルギー研究所・『キルデビルヒルズの空』の研究員たちの足取りもまったくわかっていないのだ(後者に関しては積極的に捜しているわけではないが……)。
晩景を迎え薄暗くなり、畦道に点在する魔溜石灯が静かに灯り始めた頃、俺たちは『エイト剣』の訓練を切り上げ、帰路につく。
街(通称『ゴブレット』)を囲むように建っている石造りの壁。
そこにいくつか設けられた門の一つ……『北東門』をくぐって『ゴブレット』に入った俺たちを、琴浦姉妹が迎えてくれた。
どうやら、彼女たちが所属しているパーティーでの仕事が先に終わっていたようで、俺たちの帰りをそこで待っていてくれたのだ。
「あ~、やっと来たよ、お姉ちゃん。お~い、カケルく~ん! 鮫ちゃ~ん!」
真っ先に俺たちの存在に気づいた琴浦姉妹の妹の方、雛季が、オレンジがかった茶色いセミロングの髪を揺らしながら、両手を大きく振っていた。
琴浦雛季は、肌がやや焼けている健康的な印象の女の子だ。
笑顔が似合い、基本いつも明るく元気だ。
知り合ってからそれほど月日が経っているわけではないが、すでに彼女の天然っぷり、ドジでおバカなところをたっぷり見てきて知っている。
しかしそんな彼女でも、この街を総べる中央本部から魔法発動の能力を認められ、『エイト剣』を与えられた魔法剣士なのだ。
今も一部薄いピンク色のプレートが使われたクリーム色の革製の胴鎧などの防具を身に付けた、剣士らしい格好をしている。
「訓練したいのはわかるけど……」と、雛季の隣に並び出たのは姉の琴浦美咲だ。
いつも通り、やや紫がかった長い黒髪をポニーテールにしている。
濃いグリーンの瞳は大きく、鼻も高くシュッとしていて、端正な顔立ちだ。
体の線が細いわりに出ているところはしっかり出ている、何とも魅力的なスタイルの女性だ。
「気をつけてよ? まだ魔法力のコントロールがうまくできない間は、思わず強力な魔法が発動されてしまうことがあるんだから……できれば控えてほしいよ」
彼女はやはり先祖にあたる俺の心配をした。
美咲も仕事帰りなので、黒い革、プレート部分が銀色に白い模様が入っている胴鎧などを身に付けている。
フォールドの下は、雛季が短パンを穿いているのに対し、美咲はスカートを穿いていて、白く長い綺麗な脚が眩しかった。
それ以上に眼福なのは彼女たちの胸だ。
彼女たちのその格好は、俺がこの世界に転移させられてからもう何度も目にしている。
だが、開いた胴鎧の胸元から、姉妹揃って豊かな胸の谷間が見えているという光景には未だドキドキしてしまう。
「もう~、お姉ちゃん! そんな注意はいいから、鈴音ちゃんの店でパンケーキ食べるんでしょ?」
雛季が美咲の両肩に手を置いて言った。
「パンケーキ?」と訊くと、美咲が微笑んで返した。
「お母さんがまだ買い物に行っていなくて夕飯が遅くなりそうって言うから、お腹が空いているようだったら外で軽く食べてきなさいって……」
「俺もお腹は空いているが……我慢できなくはないけどな……」
「パンケーキ食っている暇があったら、もっと剣を強化したいぜ」
俺と鮫川が矢継ぎ早に言うと、雛季は頬を膨らませた。
「雛季は食べたいの~! 行こうよ、『アイラブコーヒー』!」
「雛ちゃんがこう言っているから……ちょっと遠回りになるけど、喫茶店に寄ろうよ?」
鮫川はタクシーの料金メーターを見つめるような苦々しい顔をしていたが、俺は肩をすぼめ、「仕方ない。付き合おうか……」と言って、姉妹の後ろをついて行った。
『北東大通り』を横断し、琴浦家近辺を通り過ぎ、東北東通りに面した喫茶店『アイラブコーヒー・アイラブティー』(店名は『猫ふんじゃった』の原曲と言われる民謡から取ったのだろうか?)に入る。
この店は琴浦家から徒歩で行ける距離にあるということもあり、姉妹やお袋さんが憩いの場としてよく利用する店で、俺と鮫川もすでに何回か来ている。
「ふあぁ~」
店の奥の壁際のソファに腰を沈めた俺は、自然と安息の声を漏らした。
赤茶色のレンガとダークブラウンの柱や梁、木張りの床に並んでいるいくつかのテーブルや椅子も茶色で統一されている、とてもシックな内装だ。
そこに大小の観葉植物、レトロな感じの照明器具(この世界にいてレトロも何もないが……)、壁に飾られた穏やかな色彩で描かれた花や風景の絵が、店内の落ち着いた雰囲気にとてもマッチしている。
ここだけゆっくりと時間が流れているようだ。
空間に漂うコーヒーの香りも心を落ち着かせてくれる。
この殺伐とした『惑星サライ』で数日間過ごし緊張で硬くなった体が、弛緩するのは琴浦の家かこの店ぐらいだ。
まだ数回しか通っていないが、ここは俺にとってもお気に入りの店となっていた。
ナポレオン三世のような無口で無表情な白髪のマスターも、雰囲気を壊さずいい感じだし、マスターたちには悪いが、いつも客で混みあっていないというところもいい。
今日も俺たち以外にはいなかった。
肝心のコーヒーもいい味だ。
それこそナポレオン(ボナパルト)が称賛しそうだな、と思う。
そして……。
「お二人とも、剣の腕は上がりましたか? 疲れたでしょう? ゆっくりしていってくださいね」
注文の品をすべて運び終えたウエイトレスが優しい声で言って、微笑んだ。
何と言っても、この星野鈴音さんというウエイトレスが可愛かった。
薄い水色という珍しい色のセミロングの髪をしていて、左右の耳の上あたりから紺色のリボンの端が飛び出している。
小顔にやや憂いを帯びた瞳。可愛らしい鼻に小さな口。
年齢は美咲と同じ一七歳だと聞いているが、その顔立ちと、メイド服のような制服に包まれた154~5センチぐらいの小柄な体によって、年齢よりも幼く見える。
「ありがとう」と、カウンターの方へ下がる彼女に向かって手を振る。
締まりのない顔をしていたのだろうか、向かいに座る美咲が冷めた目をこちらに向けながら、やや怒ったようにコーヒーカップを荒くソーサーに置いた。
美咲の隣では雛季が幸せそうな顔でパンケーキに食らいつき、その前では鮫川もピザパンにかぶりついていた。
美咲がわずかに不機嫌になったことを除けば、本当に穏やかな時間が流れていた。
そんな中、入口の扉の上に付けられた鈴が小さく鳴って、腰を曲げたお婆さんが入ってきた。
「いらっしゃいませ~」
すぐに星野さんが内股気味に小走りで寄って行き、お婆さんに手を貸して席へ案内する。
しかしお婆さんはその手を払うかのように一人立ち止まった。
曲がった背中をゆっくり伸ばし、床に向けられていた視線をカウンターの向こう側へ上げた。
カウンターの中には食器やコーヒー豆の袋などが並ぶ棚があり、その横の飛び出した柱の上の方には大きな鏡のようなものが取り付けられてあって、お婆さんの視線はどうやらそこに注がれている。
「……何じゃ、今日もついとらんのかぁ? テレビジョンは」と、お婆さんがかすれた声で呟いた。そ
俺は目を丸くし、「テレビジョン?」と口元で繰り返す。
星野さんは小さく頭を下げた。
「ごめんなさい……。魔法術者不足なので……」
困り顔で謝った星野さんに対しお婆さんは、考古学者が土の中から見つけ出したかのようなシワシワの手を横に振った。
「いやいや、いいんじゃ。お嬢ちゃんや旦那さんのせいじゃないんじゃ。しかし、残念じゃのぉ。テレビジョンが私の唯一の楽しみだったんじゃが……」
「すみません……」ともう一度頭を下げた星野さんに背を向け、お婆さんはゆっくりと外へ出て行った。
閉められた扉の鈴の虚しい音だけが、静まった店内にしばらく残る。
「はぁ~、帰っちゃった……」
星野さんは溜息交じりに言って、うなだれた。
俺はかしこまって再び同じことを口にする。
「……テレビジョン? テレビのことだよな? あれってテレビだったのか?」
こっちの世界に来てから、琴浦姉妹の家でもその他の家でも、テレビというものが置いてあるのを見たことがない。
その他、元いた世界では当たり前にあった家電も見かけない。
魔溜石の力を利用する『魔神具』と呼ばれる最低限の道具はあるが、それ以外の文明の利器は中央本部によって使用を制限されているはずだった。
美咲は頷きつつも、申し訳なさそうな表情を見せて答えた。
「娯楽は市民の労働の妨げになるって中央本部が規制しているって言ったけど、実はテレビという物がなくはないんだ。中央本部に認められた通信魔法術者が作った番組や映像、音声は流すことができるの。もちろん流す前にも中央本部の審査が入っているって言うけど……」
「人形劇とか、面白いものもあるよね~。雛季もこのお店でよく観てたよ~」
「カケル君の言う通り、あのパネルがそうなの」と、美咲があの鏡のような物を指差した。
「魔溜石が付いていて、映像や音を流すことを可能にしているの」
「そうだったのか……。まさか、テレビがあるなんて……」と、心底驚いて言った俺の後に、鮫川も続いた。
「音楽やスポーツが観られたら、多少は暇つぶしになるな」
「一応、どこかでそういうイベントがある場合、放送されたりするけど……。君たちの時代はもっと色々な番組があったんでしょ?」
逆に訊いてきた美咲に、鮫川がピザパンをかじりつつ答える。
「ああ、ネット配信も入れたらなんでもあるな。瀬戸の好きなエロもある」
「フ、フザけんなっ! そもそもそういうのは18禁だろ!」
「18禁?」と首を傾げる雛季の目の前に、「何でもない!」と慌てて手を振る。
美咲は訝しがりながら、一度深く息を吐いて言った。
「もちろん、そういう君たちの知っているテレビと比べたら、種類も内容も少なくてつまらないものかもしれないけどね……」
「ま、まぁ……でも、ないよりはいいよ。多少楽しみができたな」
苦笑いをしながら俺が言うと、星野さんが遠慮しがちに俺たちのテーブルに寄ってきた。
「……それが、さっきお婆さんに言ったように、ここでも当分は観られないのです。前までこの店では通信魔法に強い魔法術者に働いてもらっていまして、それでテレビ番組を流せていたんですが……その人が中央本部の別の仕事に駆り出されてしまったんです」
星野さんの寂し気な声音に合わせて、カウンターではマスターが頷いている。
「それまでは、今のお婆さんのように放送を楽しみにして来てくれるお客さんが結構いたんですけど、みなさんすっかり足が遠のいてしまったようで……」と、星野さんが続けた。
「そうなんスか……。でも、まぁ、この静かな雰囲気の方が俺は好きですけどねぇ……」
そう口走ったところで、星野さんの切ない苦笑いとマスターが白い目でこっちを見ていることに気がつき、慌てて撤回、ごまかすために訊いた。
「あ、ああ、いや、もちろん客がいっぱい来るに越したことはないでしょうけど……あの、他にはいないんですか? その通信魔法に強いって人」
「通信魔法は高度なものになると、魔法術の力も結構必要になってくるの」と、美咲が代弁した。
「だから扱える人の数も限られてくる……」
「ああ……そう言えば、親父さんからもらった魔法術の本にもそんなこと書いてあったな……」
「その上、今、中央本部では彼らを集めて、地球との交信に全力を注いでいるらしいですから……」
そう呟くように言った星野さんに、見開いた目を向ける。
「地球との交信に……ですか?」
頓狂な俺の声に、星野さんは逆に驚いた表情で小さく頷いた。
二人の間で、美咲がはかなげな笑みを浮かべて言った。
「……ごめん、カケル君。君たちにはあまり余計な心配かけたくなかったから言っていなかったんだけど……『キャッスル』にある、地球との交信を行っていた通信機器の大部分に何らかのトラブルが生じて、やりとりができなくなったらしいの」
「そ、そうなのか?」
「あくまでも、『キャッスル』に出入りする衛兵や、天川のような情報屋を介して流れている噂では、と言うことだけどね……」
「交信をしていたことすら知らなかったぜ……ゲプッ」と、鮫川がエチケット違反のゲップをかましてから、つっけんどんに訊いた。
「それで、通信魔法でのやりとりに切り変えたわけか?」
「うん。こっちの魔法術者と地球側にいる魔法術者が通信魔法でやりとりして、お互いの近況を伝えあっている状態が続いているの」
その後、美咲がコーヒーでのどを潤している間に星野さんが言い継いだ。
「でも、機器を使うのとは違って、人の手で一からやるわけですから何かと不便でしょうし、通信魔法のできる魔法術者の人手が多くかかるそうで……。この店で働いていた人も駆り出されているというわけです」
「……市民の娯楽は後回しってわけか」
俺は腕を組み真剣な表情を繕う。
斜の席で雛季も腕を組み、ケーキを頬張りながら発言する。
「ほんほに、ほう~(本当に、もう~)。はのひみがへっひゃうよ(楽しみが減っちゃうよ)……モグモグ」
美咲は雛季の口元に付いていたクリームをナプキンで拭ってあげてから言った。
「まぁ、地球との交信は重要なことだろうから仕方ないのかもしれないけど、あまりそれだけに魔法術者の力を使われてもね……。君たちにとってもマズいよ」
「ああ、なるほど。そっちに魔法術者や魔溜石を回している分、俺たちの帰還が遅くなっていくのか……クソッ」
俺は思わずテーブルを叩いた。カップやスプーンが音を立てる。
卓上に肘をついて組んだ俺の両手に、美咲の暖かな手が重なってきた。
美咲は「カケル君……」と、心配そうに呟く。
彼女たちに心配はさせまいと(雛季は残していたイチゴを口に入れ至福の表情を浮かべていて、とても俺たちの心配をしてそうではないが……)、俺は作り笑いをして嘯く。
「いやぁ……ある程度覚悟はできているから、しばらくはこっちで生きていく気になっているけどね」
「それにはこいつだな」と、鮫川が腰のベルトに吊るしていた『エイト剣』をわずかに持ち上げた。
「こいつを強化しねぇと。それには今までのような訓練も必要だが、やっぱ魔溜石を増やさねぇと。モンスターをぶっ倒して」
「そうだな……」と俺も頷く。




