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第12話・美少女姉妹のサポート   ≪キャラ挿絵≫

 呼び止める間もなく、『マレンゴ』に乗った長田たち三人の男の背は小さくなっていった。


「お待たせしてすみません……瀬戸さん」

 男たちと入れ替わるようにしてで俺の方に近寄って来た女性が頭を下げながら、綺麗な声で言った。


「あ、いえ……」と、俺はぶっきらぼうに答えながら、目の前にいる女性をしげしげと眺めまわした。

 

 やや紫がかった長い黒髪をポニーテールにした肌の白い女性だ。

 濃いグリーンの瞳は大きく、鼻も高くシュッとしていて、端正な顔立ちだ。

 身長は163、4センチほどだろうか? それでも女性にしては高い方だ。

 

 薄いベージュのワンピースの上に、白と黒の模様が入ったカーディガンを羽織っていたが、線が細いわりに出ているところはしっかり出ているのがわかる。

 何とも魅力的なスタイルだ。


 正直、女性がサポートしてくれると聞いても、どうせおばさんだったというオチが付くと思っていたが、いい意味で裏切られた。

 まさか俺と同年代の若い娘、しかもこんなに容姿端麗な子が来るなんて……。

 俺はしばらく言葉を飲み、ただ彼女に目が釘付けになっていた。


「あの~、瀬戸さん?」

 あまりにもまじまじ見られ恥ずかしくなったのか、彼女は頬を桜色に染めて、少し照れくさそうな仕草をした。


「あ、ああっ……ご、ごめん。あの、君がその、俺のここでの生活をサポートしてくれるという……?」


「ええ、そうです。琴浦美咲ことうらみさきと言います。字はこう書きます。よろしくね」

 美咲と名乗った女性はまず細く綺麗な指を前に出してきたので、俺は掌の汗をズボンで拭いてから、その手を握った。女性はその後、ポシェットからメモ帳とペンを出し、名前の漢字を教えてくれた。


「ね~、ヒナキもいるよ~!」と、後ろから別の女性の声がした。琴浦美咲さんの声よりも幼い声だ。

 

 美咲さんの背後からピョンと横ステップで現れたのは、オレンジがかった茶色いセミロングの髪の女の子だった。

 肌は少しだけ焼けていて健康的な感じがする。

 そして満面の笑みを浮かべ、いかにも明るく元気そうな印象を与えた。

 

 ピンク色のパーカーの下に着ている白いインナーシャツは胸元が大きく開いていて、谷間が見えている。

 身長は160未満といった感じだが、胸はかなりふくよかなようだ。モコモコした生地のスカートから伸びた太ももも悩ましい。


「え~っと、瀬戸……カケル君! ねぇ、カケル君、待ったぁ?」

 セミロングの髪の彼女は親し気に訊いてきた。


「あ、いや、それほど待ってないよ」と、まるでデートの約束時間に遅れてきた彼女に返すようなセリフを言う。

 

 美咲さんがやや苦笑を浮かべ、もう一人の子の背中に手を添えて言った。

「ごめんね、瀬戸さん。この子は私の妹の……」

 そこで本人が手を挙げて、快活に自己紹介をした。

「ヒナキだよ~。琴浦ヒナキ! ヒナキちゃんかヒナちゃんって呼ばれたいなぁ」


 美咲さんはまたメモ帳にすらすらとペンを走らせ、『雛季』という漢字を書いて見せてきた。


「何だ、姉妹だったのか、君たち……。言われてみれば顔立ちは似ているな……」

 

 雛季(ひなき)と名乗った妹も、濃いグリーンの瞳が大きく、顔立ちが整っている。

 姉の美咲さんが美人タイプなのに対して、妹は年齢が下だからなのか、あるいはその性格が一層幼く見えさせているのかわからないが、美人というよりは可愛いらしいタイプだ。

 しかし胸は……やはり大きい。 

 

 そんな頭の中の邪念のせいで間ができ、慌てて言った。

「……ああ、俺は瀬戸翔琉。え~っと……カケルって呼んでくれ」


「大体のことは聞いているよ、瀬戸……あっ、カケル君……。それじゃあ、私のことも美咲って呼んでね」


「そう言うなら……じゃあ、美咲……?」と、俺がはにかみながら呟くと、彼女も恥ずかしそうに俯いた。

 

 俺は照れをごまかすように声量を上げて訊いた。

「あ、あのさっ! 俺はいつ帰れるのかな? あいつら何も教えずに、いきなり放り出すんだもん、参ったよ。君たちはそういうこと、あいつらから聞かされてないかな?」


「う~ん……少しは聞かされたけど……。私たちも、あの人たち……中央本部の人たちと深く関わっている人間じゃないから、秘密にされていることが結構あるの」

 姉の美咲が困惑した顔を見せると、隣にいた妹の雛季まで腕を組んで「う~ん……」と、小さくうなった。


「どうにかして帰れないのか?」


「私たちの力では、今のところ……。とにかく、後は私たちの家に行ってから話しましょう」

 そう言ってから、美咲は通りに目を向けた。帰りの馬車を捕まえるためらしい。


「君たちの家に行くのか?」と尋ねると、雛季が俺の両肩に手を掛けて顔を寄せた。

「そうなの! カケル君はこっちに家がないでしょ?」


「当分は私たちの家に寝泊まりしてください。うちの両親もOKしてくれているので」


「親御さんの了承済み……。そ、それはありがたいな。まぁ、すぐに元の家に帰れることを信じているけど……」

 何だか気恥ずかしくなって二人から顔を背けている間に、俺たちの横で二頭立て四輪の馬車が停まった。


 姉、美咲が幌の前に座る運転手に行き先を告げてから、「さぁ、乗って、カケル君。料金は気にしないでいいからね」と言って、見本のようにステップに脚を掛けて最初に幌の中に入った。

そして顔を出し、俺にも乗るよう促す。

 後ろから妹の雛季にも背中を押され、俺は生まれて初めて馬車に乗った。

 

 幌の中には木で作られたコの字型のベンチがあり、一番後ろの席に座った。

 このタイプは安価な乗合馬車なのだと、左前に座っていた姉の美咲が説明してくれる。右前に雛季が着席したところで、馬車は走り出した。

 

 二人とも座ると邪魔になるらしく、ベルトに吊っていた剣の位置を変えた……。

 そうなのだ! さっき彼女たちに見とれている間、当然その腰の剣も目に入っていた。やはり看過できそうにない……。


「あ、あのさ……その剣は? あの『キャッスル』とかって言う場所にいた連中もみんな佩刀していたんだが、こっちでの流行なのか?」


「う~ん……流行と言うか、一部の人には必需品?」

 剣の鞘を見下ろしながら、美咲は穏やかな口調で言った。


「本物……だよね?」


「もちろん……あ、でも、君が思っている剣とは少し違うかも……」


 男たちの剣の鞘が黒や茶系の色だったのに対して、彼女の鞘は赤であり、雛季の鞘はクリーム色っぽく、女性らしさが出ている。

 

 しかし、剣は剣だ。

 護身のためにしろ何にしろ、相手を攻撃する時のために携帯しているのだろう。

 それが必需品になるって……ここはそんなに物騒な世界なのだろうか?

 そんな場所で、いつまで続くかわからない生活……嫌すぎる。


 剣を使用した時の男たちの気迫、そして目の前にいる彼女の真剣な表情からして可能性は低そうだが、わずかな期待を持って訊いてみる。

「この街、と言うかこの惑星って言った方がいいのかな……こっちで剣を使ったスポーツが人気だったり? まさか、背中を掻くために? 剣の先にカメラを取り付けて自分を撮るとか?」

 

 自分でもバカらしくて途中から苦笑いを浮かべた。

 もちろんそれを聞いた姉の方は眉根を寄せた。妹の方は笑ってくれていたが。


「もちろん、本当に使うのよ。あっ、でも心配しないでね、カケル君。対人に使うわけではないの。う~ん、そうね……狩りよ、狩り! ここでは狩りをして生計を立てることが多いから、多くの人が剣を普段から携えているの」

 美咲は相好を崩したのだが、心配を掛けさせたくないからそう言ったような気がした。

 

 どっちにしても、狩りで生計を立てるのが一般的というのなら、それはそれで心配になる。

 ここでは街並みと同様に、昔ながらの生活が営まれているのだろうか……?

挿絵(By みてみん)

挿絵・琴浦雛季(左)、琴浦美咲(右)

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