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万象  作者: 桐崎浪漫
第三章 「パライソへ」
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5(ルカ)


教会の墓地は、教会や家の裏にある。

教会の塀に沿って歩くと、キャンプ場に続く山道と、墓地に向かう細い道とに分かれていて。

とりあえずオレらは 墓地に入って歩き回った。


「で、なんか 見られたりしてんの?」


「いや、今は 何もないな」


前神父の埋葬以降は まだ誰も埋葬されておらず

ジェイドは、週に 一度 点検のために墓地に入るけど、墓地で 必ず何かに見られる という訳でもないらしい。


30分くらい うろうろしてみた。

明るい月明かりの下の、白い大理石の平らな墓石や十字架。時々 鳥か何かの鳴き声。

普通の無害な霊以外は 特に何もない。


オレらとは別に 墓地を見渡していたハティが

「もう 一度 墓地の門に出る」と

先に門に向かう。


オレとジェイドも 並んで墓地の門を出ると

硬く軽い物が落ちる音がした。

なぜか ジェイドがジーパンのポケットから

メダイを落とした音だった。


「あれ? おまえ

手、ジーパンに入れてなかったよな?」


ジェイドは頷き、拾ったメダイを不思議そうに見つめてる。


ハティは 来た道の方... 教会の方ではなく

更に奥へ向かう道を歩き出した。


「この先って、何かあんの?」


「僕も 墓地までの道しか歩いたことはない。

でも多分、行き止まりだろう。

協会からも 何も聞いていない」


墓地の隣、教会から見ると墓地の更に裏には

五台くらいの車を駐車出来るようなスペースがある。

そのスペースの前までは 舗装されていた道路も

その先は未舗装のものになり

少し先は木々に覆われ、行き止まりになっていた。


空き地にも満たない道の終わりに

こっちに背を向けたハティが立っている。


相変わらずの黒いスーツ姿。

夜とはいえ ジェイドより暑苦しいよなぁ。


ハティの前には、うちの庭にも劣らない丈の草の中、円形に石を積んだ何かがある。


ハティは 振り向くと

「もう少し離れろ」と言いながら

オレらの方に向かってきた。


二、三歩 後退ると、ハティが オレらの前に立って、短い呪文みたいなものを唱える。

足の下が揺れたかと思うと、草の中の円形の石が崩れ、小石や土が大量に噴き出した。


「えっ! なんだよそれ?!

軽く爆破してんじゃねーか!」


ちゃんと予告しろよなぁ、もう。


「塞いでいたものを取り除いただけだ」


ハティが、ふう っと軽く息を吹くと

周りの土ぼこりが消えた。

三人で石が積まれていた場所に近づく。


穴だ。直径1メートルちょい くらい。

暗くて底が見えない。

小石を落としてみたけど、水の音はしなかった。


「枯れ井戸か?」


ジェイドが聞く。


「いや、道だ」


道?


ハティが言うには、穴の底には横に掘った道が続いているらしい。


「どこに続いてんの?」


オレが聞くと、ハティは穴の上に手をかざした。


「... 方向的には、向こうだ」


指差したのは、教会や墓地の背後。

キャンプ場の隣の山だ。マジかよ...


「あの山の下?」


「いや。山のどこかだが、山に道はない」


はーあ?


「何言ってんのか 全然わかんねー」


「山の地下ではなく、山のどこかに着くのだ。

しかし、そこに辿り着ける道路はない」


ふうん。


「森の中とか?」


「いや。元は人間が暮らしていた形跡がある。

滅びた山村か何かだろう」


でも道はないのか... 気になるよなぁ...


「そこに 何があるんだ?」


質問したジェイドを ハティは見つめ

「前神父の日記を探すと良い」と答えた。


「日記? 僕は 個人的なものは見ない」


ハティは軽くため息をつき

「言い方を変えよう。

教会の記録があるはずだ」と、腕を組む。


「ルカ程 必要はないが、多少の柔軟性を備えた方が良かろう。

祓魔を行うだけでなく、人間を導くという使命もあるのなら尚更のこと。

堕落でなければ、楽に生きるのは悪いことではなかろう」


ジェイドが「悪魔の甘言だ」とオレに言うと

ハティが口の端を緩ませた。

ちょっと関係が改善された気がする。


「ルカに聞いたところ、お前が この国に残ることにしたのは、前神父の意向もある と。

道を進めば、それを知ることも出来よう」


ハティは スーツの胸の内側から小瓶を出して

中身の青白い粉を穴に撒いた。

ふっ と、短い息を吹くと

穴の周囲に 青白い魔法円が描かれた。


「お前達以外の者は ここに近寄れぬようにしておく。このことに関しては、これ以上 手は貸さんがな」


とにかく、穴を調べるにしても

梯子もなければ 灯りもない。

明日、道具の準備から始めることにして

オレらは 教会の門に戻った。


「ジェイド、おまえさぁ

結局今日は 何かに見られたりとかなかったんだな」


「そうだな。何も感じなかった」


ジェイドが ハティに眼を向ける。

オレも向けてみると

「少なくとも 我が配下の痕跡はなかった」と

オレらの無言の問いに答えた。


「地界の者の痕跡は、と言った方が良いか。

地界の者が周辺に居たのであれば、巧妙に隠してもその痕跡が残る。

現に、グラムの痕跡は まだ薄く残っている」


グラム。妹に憑いた悪魔だ。


でも、それなら

ジェイドを見ているのは、一般的な悪魔ではないってことか。


けどなぁ...

オレは 子供の頃から、そういう感がある。

霊に限らないけど霊感的なやつ。

今はコントロール出来るようになったけど

どんなに見ようとしても、そいつは見えないんだよな。


それなのに、ジェイドが視線に気づいて

短くでも祈ったりすると、そいつが消えるのはわかる。何か居ることは確実なんだけどな...


「さて。読書に戻ることにしよう」


ハティは オレから買った本も受け取ると、その場から消えた。

また オレん家の書斎かリビングで 読書にいそしむようだ。


オレとジェイドは、ジェイドの家で

前神父の記録を探すことにする。


「なんか 腹減ってきたな」


「バカを言うな。コーヒーいれてやるよ」


まぁいいか。後でコンビニでも行こ。

呆れ顔のジェイドと家に戻った。

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