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45.主人公なのかねえ

 それから村長は数軒の家を回り五人ほどの男を集めてきた。

 全員百七十センチくらい、エイティ達より背は低い。それでもそれがこの世界の村人で屈強と言われる男の大きさなのだろう。

 男達は木製の鍬や鋤を持っていた。村長も同じような木製の鍬を抱えている。武器らしきものは腰に差したナイフのみだ。

 村長と五人の男はそのまま橋の方に歩き出した。ネカハに場所を聞いていたのだろう。迷いもせずに進んで行く。

 ドーリとエルイ、盾持ちの一人を馬車の警戒に残して他の護衛の三人が揃って着いていく。


 ドーリはエイティ達の所に行くまでに色々な確認を取っている。

 メギョアの討伐証明部位や、食べられる部分が無いので埋めるしかないことを聞いたりした。

 人型だから食べるのを避けるかと尋ねると、臭いがきつくて食べられないと教えられた。人型かどうかは関係ないらしい。

 エルイの護衛達は三人でも、相手が十匹で連続でなければ何とか出来るそうだ。代わりの見張りとして連れてきているらしい。

 さすがに強い冒険者とは言えども、メギョアを四十匹も倒して疲れている筈のドーリ達をそのままにする気は無いようだ。

 五人の男達はメギョアの処分に連れて来ている。それと見張りの練習をさせるつもりだそうだ。エルイの護衛達とドーリ達が去った後のことを見据えてだろう。


 しばらく歩いてエイティ達の待機している場所に着いた。

 ドーリが離れてから半刻余りと言ったところか。

 エイティ達三人は果樹園の端に座り込んでいた。いつでも対応できるように武具を構えたままだったが。


 エルイと護衛達、村長と連れてきた五人の村人は、倒されて積み上げられた四十体のメギョアを見て呆然としていた。

 ネカハから話を聞いていたし、ドーリからも詳しい状況の報告もあった。しかし実際に目にするとやはり驚きだった。

 エルイの護衛達ですら、さすがにこんな数を見たこともない。


 まず護衛達が気を取り直してエルイに話しかけた。

 そしてエルイが村長を促す。

 最後にようやく村長が五人の村人に穴を掘るように指示を出す。

 穴を掘っている間に護衛達はメギョアの討伐証明部位を剥ぎ取っていった。


 ドーリはエイティ達にネカハや護衛達に聞いたメギョアの情報を伝えた。


「なるほど。連携を取らないのも逃げ出さないのも、特におかしくはないのか」

「十匹の集団も考えられるんだね。この辺りでは有り得ないと思えるけど」

「キングやクイーンみたいな統率者も居ないんだよねえ。なら四グループが連携取らないのもおかしくないよねえ」

「スタンピードもねえってことだしな」

「ならば十匹の四グループは偶然なのか?」

「それは無いと思うよ」

「ありえねえな」

「ないよねえ」


 個々の事例を挙げていけば、有り得ない話ではない。

 だがそれが四グループ時間差で襲って来るなら、何らかの意図があることは間違いないと彼等は考えていた。


「サモナーみてえなのが居たんじゃねえか」

「サモナーなら状況の把握くらい出来るんじゃないかなあ。最初の十匹が呆気なく倒された時点で戦術考え直すよねえ」

「もしかするとメギョアの知能が低過ぎて、細かい指示が出せないだけかもな」

「あの逃げてきたフィルヴィの盗賊団ですら、この時期に行商隊が来るからって網張ってたんだよ。サモナーがいるなら村に冒険者が何人か居ることを考慮しない訳無いと思うけど」


 サモナーによる誘導も話に出たが、普通に考えると有り得ないとしか言えないようだ。お粗末過ぎるからだ。

 結局メギョアの情報を得ても役に立たなかったようだ。

 この世界について何も知らない四人には、考察のための知識も情報も足りないのだから仕方がない。


「とりあえず護衛が見張りを引き受けてくれるそうだ。エイティは休んでたほうが良いんじゃねえか」

「エイティのSPがどれくらい残ってるかによるねえ」

「半分減ってたら五時間の休憩は必要だと思うよ」

「体感だと残り六割弱だろう。後半は抑えたし、ドーリが戻るまでの探知も熱源だけにしたからな。お前等はどうなんだ?」

「僕は最初の挑発だけだから数パーセントしか使ってないよ」

「俺も挑発だけだしな。一割も減ってねえ」

「やっぱり遠距離の僕等がネックだねえ。僕は二割近く減ってるしさあ」

「とりあえずエイティとゴローとドーリは休憩して貰える? 僕が見張りしてるから。二時間くらいでドーリと交代で良いと思うよ」

「果樹園の真ん中に行くか。ここよりは静かじゃねえかな」


 ドーリは疲労回復のために仮眠を取ることをエルイに伝えた。そして彼等は果樹園の中ほどに入って休憩を取るのだった。

 途中でドーリに交代を行ったが、特に何も起きずに回復が出来たようだ。

 四時間足らず、この辺りの時制では二刻くらいの時間が経っていたが、メギョアの襲撃が昼前だったためかまだ十分に日は高い。

 既に四十体のメギョアの遺体は埋められ終えているようだ。


 果樹園から出てきた彼等を迎えたのはネカハであった。

 メギョアを埋める村人やエルイの護衛、そしてエイティ四人達の為に食料や水を持って来ていたようだ。

 村長とエルイは村に戻っている。実際にメギョア四十体を目にして、ネカハやドーリの報告が嘘でないことが判明したからだろう。村人への説明と可能な限りの荷の買取を行う事にしたらしい。

 入れ替わりにネカハが送られてきたそうだ。確かに今更彼女に知らせる必要もないだろう。給仕役にはうってつけだ。


 エルイの護衛で残っていたのは弓持ちの男が一人だった。どうやらこの男がスカウト、斥候を担当しているらしい。ドーリはその男に話しかけに行く。

 そういえばフィルヴィの盗賊団が襲ってくる前に、発した探知魔法に反応したのはこの男だけだったなとエイティは考えていた。

 ドーリは簡単に現状を聞いて戻ってきた。どうやら特に変化もないらしい。


 ネカハはドーリが戻ってくると、彼等四人に水や食事を配布していく。

 ただドーリに対してと他の三人への扱いに差が有るようだ。ドーリに対しては親しげに話しかけながらだが、エイティ達には無言で食事の載った木皿とカップを差し出すだけだった。

 その様子に他の三人はドーリに冷たい目を向けながら呟いている。


「……もしかしてドーリが主役、主人公なのかねえ」

「単に言葉が通じないからだと思う……思いたいけど」

「俺は明らかに異邦人と分かる黒髪黒目だから止むを得ないだろうが……」


 ネカハを女性と見ている訳ではない。しかしあからさまに差をつけられると内心忸怩たる思いがあるようだ。

 ドーリはその冷たい視線を感じながらも、ネカハに話しかけるのを止める様子は無い。彼しか言葉が分からないのだから仕方がないのだ。


「しばらくしたら村長殿とエルイ殿が再度こちらに来られると」

「はい。商いの話を終えたら今晩の警戒を話し合いたいって」


 ネカハは嬉しそうにドーリに答えていた。

 さすがにドーリも彼女の気持ちに気付いている。たぶん好意を持たれているだろうことに。

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