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Overline ~落ちこぼれ魔法使いは、実は天才!?~  作者: 空野流星
前編 エピローグ
66/144

全てを失った男

夢を見ていた。


それはぼんやりとしていて、目覚める頃には忘れてしまう儚い夢。


手で触れると消えてしまいそうで……


いつからだろうか?

とても曖昧で、宙に浮いているような浮遊感。


それでも意識ははっきりしていて、なんとも不思議な夢だ。


でもそれはすごい幸せで。


僕はずっとその夢を見ていたかった。


だって、目が覚めたら――全て失われてしまうから。



現実がまた僕に襲い掛かってくる。


嫌だ、目覚めたくない。



”目覚めなさい”



ずっと夢を見ていたい。



”前に進みなさい”



でもこれは、やっぱり夢で――



現実は、あの日僕は――



”ごめんなさい”



誰かの謝る声が聞こえた気がした。



―――


――


―



「んっ……?」



冷たい雫が頬を滴り落ちる。



「ここは?」



太陽が雨雲で隠れたおかげで、なんとか瞼を開く事ができた。

周りを見渡すと、半壊した校舎の瓦礫が散らばっていた。

体は鉛のように重い。

おそらく魔源(マナ)の使いすぎによる症状だろう。



「レイ?」



そうだ、レイはどこに?

確か最後の魔法を放った時に――



”ごめんなさい”



あの誰かの声が思い出される。


コツン、っと左手に何かがぶつかった。

ひんやりとした感触



「――レイ」



そこにはレイが横たわっていた。

その体は温かみを感じられない。

そして何故か、血まみれの健司の生徒手帳を握っていた。



「――」



ポツポツと、雫が瓦礫へと滴る。

あぁ、僕は――


全てを洗い流すかのように、雨が降り注ぎ始めた。



「――帰ろう。」



そうだ、帰ろう。

みんなで……



”この日僕は、全てを失った。”



―――


――


―



目が覚めたら葉助は眠っていた。

その鼓動は、今にも止まってしまいそうなくらい弱々しい。

おそらく、魔源(マナ)を使いすぎたせいだ。

このままではおそらく死ぬだろう。


選択肢なんてなかった。

だって、彼に生きていて欲しかったから。



「よぉ……」


「健司!」



そこに現れたのは血まみれの健司だった。

傷を見る限り、彼はもう――



「葉助のやつ、やばいんだろ?」



その言葉に黙って頷く。



「俺の魔源(マナ)、使えよ――コイツならいけるだろ?」



その瞳に強い意志を感じた。

二人で葉助に手を掲げる。


”ごめんなさい”


一人にしてしまう事への謝罪。

でも、貴方に生きていて欲しいから。


だから――



”ありがとう”



―――


――


―



「オォォォ……」



この匂い、この空気、間違いない!

私は帰ってきたのだ、セレ二ティアに!


しかし、体中の傷は癒える気配がなかった。

黒き鎧は砕け、本来の体がむき出しになっていた。

だが、まだチャンスはある。

時間をかけて、また力を蓄えればいいのだ。


私には、かの世界で得た知識がある。

この知識を行使すれば、セレ二ティアを掌握するのも容易い。

そしていずれはロキアも我が手に――



「誰だ……?」



足音が聞こえる。



「……」


「お、お前は!」



なんということだ!

何故ここに!



「この裏切り者が!」


「これが運命だ。」



認めない、私は認めないぞ!

こんな最後はぁぁ!



「ユニ――」



男の剣先は、無慈悲に黒島に振り下ろされた。

この世の物とは思えない、憎悪の表情を浮かべながら……



「ここから始まる、レイ。」



男は二ヤリと、唇を吊り上げた。

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