大戦のフロンティア4
気まぐれで大変申し訳ないのですが、更新を再会致します。
一応長い目で完結を目指しては行きますので、
再度、応援頂ければ幸いです。一旦は数日に一回目安で更新します。
「どういうことだ?」
俺はそうつぶやいていた。戦場は未だ混沌としている。ガイロンとアストガルド、その二つは未だどちらも退かぬ戦いを繰り広げている。
だからこそ可笑しいことがあった。
「ガウスのおっさんがいない?」
あのおっさんのことだ、絶対この戦場にいないわけがない。戦場に紛れて見えないのか? いいやそんな事はありえないだろう。あの人は道だ、戦場に道ができれば見失うことなどありえない。
「どう思う?」
となりのアイリへと声をかける。
「わかりません。彼の王なら戦場には喜々として突っ込みそうですが」
「そうだよな」
だからこそ腑に落ちない。接点は少ないが、それでもあのおっさんは後ろに引きこもって戦うなんてことできるわけがない。しないのでがなく、できるわけがない、だ。
「出れない?」
シロナがそう呟いた。
「出れない?」
出れない理由があると? おっさんが戦いに出れない状況? そんなのはありえないだろ。
「違うんじゃないか?」
後ろのバレルのおっさんがそう呟いた。
「違う?」
出れない以外に何があるのだろうか?
「もういない?」
カルアがそう呟いた。
いない? あのおっさんが? やられた? 考えられない。でも、アストガルドにはあの《武神》がいる。
「それはやばいな」
あのおっさんが死ぬところなど想像が出来ないが、今この状況が全てだ。
「旗を掲げろっ!!」
焦る気持ちを押さえつけ、戦乱へと突っ込む準備をする。
「もう考えてもしょうがない。どっちにしろ突っ込むしかないだろ」
「ええ、横から食らいつくしかありません。ガイロンの戦況は逼迫してます。ここで、食い破りましょう」
「分かった! よし突っ込むぞ!」
先陣、馬に乗った部隊のみで突っ込む。歩兵部隊はもう少し時間がかかるだろうが、今ここで隊列を直している時間はない。
アストガルド右翼に食らいつくようにして突撃をする。広く、ガイロンを包囲するようにして広がっていた軍、そこに横撃を入れたことにより、右翼軍はボロボロになる。
「できるだけ混乱を招いてください! ここでは殲滅よりも攪乱を目的に」
敵左翼に深くくい込む。簡単に、奥へ奥へと突っ込んでいける。
「少しまずいです!」
「どうしてだ?」
「食い込みすぎです! このままではこちらが分断されてしまいます。それに何か嫌な予感がする……」
「分かった! 撤退だ!」
これ以上深く潜ると、撤退すらも難しくなる。個人的にはこのまま突っ込んで将の一人でも打ち取りたいところだが、考えるのが苦手な俺が深く考えたところで意味はないだろう。
こちらも自分で崩しかけていた軍を再編する。崩れかけた左翼を撤退するのはそこまで苦労をしなかった。
「先にガイロンに合流か?」
「そうですね。現状の把握が先になります」
「分かった。再編! 陣形を組み直し、防戦維持! そのままガイロンの左翼付近に合流」
もう少しで日が沈む、そうなれば一端仕切り直しだろう。
「しかし、可笑しいですね」
「どういうことだ?」
「対応が遅すぎます。タイミングが分からないにしても、最も予想される展開なのに、なぜか驚いて対応が遅れていました」
「想定してなかったんじゃないのか?」
「そんなな安易な人間ですか?」
六首会議の姿を思い出す。神経質そうに、何もかも周りに注意を向け、そして常にイライラしているような。
「ありえない」
そんな人間が、何も考えないのはありえない。
「私もそんな人間がこんなに大きなことを成そうとするとは思えません」
「じゃあ、罠?」
再編成が終わり、再度陣形を組み直す。そして少しの移動を挟み、ガイロンの左翼側につく。
「左翼側が肥大してしまうが、しょうがないでしょう」
戦場は今や、両方の将の指示によって膠着状態になっている。
「ふむ嫌な予感はそういうことですか」
「どういうことだ?」
「本軍を見てください」
遠く、人一倍精強な兵が集まる場所を見る。そこに見えてしまった。見えなければ良かったとさえ思った。遠くても分かる。ひと目で分かる、明らかな殺意。
そこには《武神》が居た。
「食い込み、逃げれなくなった所をあれで一気にってことですね」
「そうみたいだな」
ギラギラとしたその目。常にこちらを狙っているのがまる分かりだ。
「今日はこのままでしょう。先に《王道》への合流を優先しましょう」
「分かった。アイリ、シロナ。指揮頼んだ。カルア、おっさん、アウラ、本軍行くぞ」
「おっけーお兄ちゃん」
ゆっくりと本軍を目指す。今起こっている事実を確認しなくては。
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小さなテント、そこに俺たちは案内される。
その小さなテントにはテーブルが一つ、人間が四人ほど。そしてそこに《王道》の姿はなかった。
「我らが窮地をお救い頂き誠にありがとうございました」
「前置きは良い、《策士》クリア。おっさん……《王道》はどうなった?」
正面には、《策士》、《軽業師》、そしてナルカミの姿があった。いや、その姿しかなかった。
「ふぅ……我が王、《王道》ガウス・ガイロンは、《武神》と相対し、敗れました」
なんとなく分かっていた。なんとなく理解していた。
「そうか」
あのおっさんでも勝てない存在。称号持ち。それは一騎当千の力をもった存在。でもその誰もが等しい力を持っている訳ではない。普通の戦争、通常の英雄であれば十人で囲めばどうにもならない。三国志の英雄だろうと、人間の範囲内の強さなのだ。
でもこの世界にはそれはない。この世界では人間の範疇等簡単に超えられる。異世界、まるでゲームのようなこの世界では、人間の限界等はないに等しい。
極限にまで武を極めた人間。武の神様。それが武神。一騎当千等という言葉では言い表せない。たった一人で国を倒せる人間。
「どうやって勝つんだ」
知る限りで武神に立ち向かえるのは王道だけだと思っていた。大力やアイリがきっと俺たちの最大の戦力だろうが、あの二人には太刀打ちができないだろう。
「戦力、としては規格外です。我が王、最後の必殺のスキルを放ち、武神の体を貫きました」
貫いた? 先ほど遠目で見たときは万全の状態だったように見えたが。
「そうです。武神に攻撃は効きません。その攻撃は、全て治っていました。治癒という言葉ではなくどちらかというと、再生等の方が正しいかもしれません」
「体を貫いても瞬時に再生? 回復魔法みたいなものか?」
「ご主人様、回復魔法はもうありません。ありえないはずなんです」
カルアはそう言った。滅びたんだっけか? 確かにそんな便利なものがあれば良いとは思うが。
「回復系のスキルは?」
「ありえないと思われます。回復系のものは本来ありえないんです。それは魔法みたいなものですから。魔法は否定されました。回復系の称号は《聖母》ですら、アレですからね」
回復系唯一のスキルと呼ばれたんだっけ。
「隠された武神のスキルは?」
「ありえなくはないですけれど、でもそれが本当の能力ではないと思います。称号とは、人々の願いみたいなものですから。武の神が、そんな能力を願われる訳がないですから」
称号とは人々の願い。こうあって欲しい、こうあってくれというもの形に現れた姿。だからこそ俺たちは強くなれる。その名にかかっている願いが一人の願いではないのだから。
「副産物の可能性か」
そんなことがありえるのか? 世界最強の力を持っていながら、世界最高の能力すら持っている。そんな存在が、そんな存在が認められるのだろうか?
「そんな人間にどうやって勝つんだ?」
「わかりません」
「今のところ、彼が出陣したのは《王道》と戦った際のみです。何か条件があるのか、そもそも私たちを舐めているのか」
自分が出る必要もないような相手だと思っているということだろうか? それならそれで良いけどもでも結局危なくなれば出てくるというのがネックだ。何か条件があるのであればそれはその条件を探らなくてはいけない。
「でも、その条件は全く分からない」
「そうですね。流石《英知》。だから我々も攻めるに攻められず、現状維持が精一杯なのです」
爆弾がいつ爆発するか分からないと。自分たちでいつ起動ボタンを押すかどうか分からない。
「詰んでいますね」
「そうですね」
出てきたら終わる。出てこなくても物量で押される。
「どうしろと?」
「ひたすら戦力を削るしかないです。軍を維持出来るだけ、それだけの損害を与えれば。所詮は国ですから」
「人であれば止まらないけど、国であれば止まると」
「ええ、国として動くのであれば、そこは止まらなくてはいけない。問題は、どうやったらあの人が出てこないようにするか」
「結局はそこになりますね」
堂々巡り、そこに行き着く。
「《大力》、全戦力で《武神》を抑えられませんか?」
「無理だな。英雄、そこの称号、小僧を入れても数刻持つかどうかだ。一日は持たん。いや、数刻も持つかどうか分からん」
悔しいが、そのとおりだ。概ね間違ってないだろう。ハルモニアで一瞬でも戦った俺が分かる。あれは戦って良いものじゃない。
「とりあえずは祈るしかないんだろうな」
神には祈るしかないそういうことなのだろうか? そんなの、なんて理不尽なんだよ。
「分かりました、日も落ちて、両軍撤退を始めているでしょう。これからは明日の話をしましょう」
「ええ、《英知》の力をお借り出来ればと思います」
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「おっさん、ちょっと良いか?」
日も落ち、あたりには静寂が支配している。この世界では星がよく見える。月明かりが明るく辺りを照らしている。
「どうした?」
「ちょっとな、今の実力を試したくてな」
「ほう」
「俺は前に奴と戦ったときからどれだけ強くなったかをな」
ゆっくりと体をほぐす。そんなに時間は経っていない。でも、確実に強くはなっている。
「戦うつもりなのか?」
「最悪そうなんだろ」
戦うにしても、逃げるにしても、その選択肢は逃れられないだろう。
「そのときはお前は逃げろ」
「逃げれたらな。今いる英雄が全員戦うことになったら逃げれるわけないだろ」
「逃げようとするかしないかで、だいぶ違う。逃げれるとういことも覚えておけ」
「分かったよ。じゃあ行くぜ」
一気に翔ける。俺より身長が十センチ程高いおっさんに殴りかかる。
下からアッパー気味に腹部を殴る。
「ふん」
その拳を大木のような太い左腕が防ぐ。
防がれるのは想定の範囲内。そのまま流れるように蹴りへと繋げる。右足がおっさんの即頭部を襲う。未だおっさんの左腕は腹部分。この速度での蹴りなら右手は間に合わないはずだ。
しかしその予想に反して、右手が俺の足を掴む。
「チッ」
体が空中に浮く。腕一本で俺の体を持ってる? いや、オッサンなら軽いもんか。
そのまま振り回されそうになる。流石にそこまでやられる訳にはいかない。左足のアキレス腱を握るように掴む。普通の人間ならそのままアキレス腱を捻って終わりなのだが、おっさんがその程度で傷つくはずもなく、何の効果もない。
俺はそのつかんだ足を支点に、逆足で蹴りを放つ。その攻撃には対応できなかったのか、俺の足を手放す。
「ふぅ」
「称号持ちとの戦いにおいて相手の行動を舐めるな。何のスキルがあるか分からない。どんな状況でもありえないと思うな」
「分かったよ」
人体の常識とかも一旦離して考えたほうが良いな。空手とか、柔道とかは見直さなくてはいけないな。
「でも動きは良いと思うぞ。普通の称号持ちならな」
「《武神》なら?」
「戦ったお前がよく分かっているだろう。私が掴む余裕が有るってことはお前は三回は死んでるってことだ」
「そうだろうな」
一瞬で死ぬ。それは分かる。武術とか、武を見る以前の問題だ。ただ殴られただけで死にかねない。
「もう一回行くぜ」
「ああ」
一旦距離を取る。ここからは俺も本気で行く。
「『四陣』」
「ほお」
ぶれて見える四陣だが、一流相手にはほぼ攪乱にもならない。このあとに続ける動きがなくてはならない。
おっさんの腕が振るわれる。轟音と共に、当たっていないというのに衝撃を感じる。
「『一加』」
しかしその動きを読んでいた。攻撃範囲の広い横薙ぎの攻撃を読み、そこに一加を置いておく。全身に力を入れる。相手の力を利用してダメージを与える。
しかし、その攻撃は俺の拳に当たることはなかった。
「チッ」
無理やり拳を止めたおっさん。
「だったら! 『三槌』」
その無理やり動きを止めた隙を突く、一瞬で移動を挟み、奥義を放つ。
大上段からの全力の振り下ろし。しかし、おっさんの全身の駆動、無理やり筋肉で動かすような動きで、俺の打点をずらされる。
「くっ」
衝撃を一点に集中できなかった打撃は威力もなくなる。そして全力で攻撃を放った俺はその後の隙を突かれ、腹へと打撃を打たれる。
「ぐはッ」
車でも何かがぶつかったような衝撃が腹を抜ける。
そのまま飛ばされるが、態勢を整える。呼吸は整わないが、ここで倒れているわけにもいかない。
目の前にはおっさんの蹴り、それを転がるようにして避ける。
地面はまずい、体を跳ね起きさせる。しかし、その一瞬が命取りになる。目の前には最悪の拳。顔の横をとおり抜けるようにして拳が通過する。
「負けだな」
「ふう、あの技は少し隙がでかいな。当たればそれなりなんだろうがな」
「そうだよなぁ。でも攻撃技がなぁ」
五の奥義までは今、なんとか形にはなっている。でも実戦で行うにはまだ早いような気がする。
「隙をなくせ、強くなればなるほど一撃が死に繋がる。お前は攻撃が好きなタイプだろう。死にたくなければ自分の攻撃を熟知しておけ」
「分かったよ」
「まぁこのまま修行をしていけば、俺のことなど直ぐに抜かすだろう」
「そうか? まだ勝てる気がしないぞ」
「そのうちだ。お前の成長力は異常だ。異世界の人間が全員そうなのかは知らないが、通常の人間に比べて異常な速度で強くなっている。そこまで心配する必要もない」
「そうか、そうだよな」
日本で爺と修行をしているときはどんなに頑張っても四の奥義をギリギリだった。しかも二人程度にしか見えなかった。爺がこの世界に来たらどうなるのか恐ろしいな。爺、二十人ぐらいに分裂してたし。
「ふぅ、勝てるか?」
「無理だな。今のままじゃな。でも戦で何があるか分かる人間などいない」
「戦の神様が微笑んでくれることを祈ろうぜ」
「そうだな」
ふぅ、気合を入れよう。明日が決戦の日だ。




