大戦のフロンティア1
そこからは忙しすぎて彼女の死を嘆く暇もなかったし、嘆くこともできなかった。
「戦況はどうだ?」
「ガイロン側がかなり不利ですね。アストガルドが《武神》を引っ張り出してるようで、流石に止まらないみたいですね」
横には《英知》であるカルア・オルトメアの姿がある。彼女も妹がなくなったというのに、悲しんでいる暇もなく働いてもらっている。
「やっぱあの人を止められる人間はいないのか」
「そうですね。しかも戦い方が温存を念頭においた戦い方をしています。次に狙われるのはこちらでしょう」
大軍隊を動かしたからには、一国だけでは満足出来ないということか。
「そのまま俺らだけでアストガルドと戦った場合は、予想で良い教えてくれ」
「私は直接《武神》を見たことがないので言えないのですが、ほぼ零ですね」
ほぼね。多分楽観的に見て零ということは勝てる要素がないのだろう。
「じゃあ、やはり。このままガイロンと協力して叩くしかないか」
「そうですね、そのために用意をしてきましたし」
軍の準備は終わっている。しかし、基本的に戦争は苦手だ。強者と戦うことは嫌いではない。でもそれは俺個人のことであって、みんなを巻き込む事は嫌なのだ。
しかし、今戦わなければ、その守るべきものを失う事になる。ならば強く心を持たなくてはならない。
「ガイロンとの連絡は?」
「もうすでに済んでいます。《策士》さんとの連携は大丈夫でしょう」
城を出る。眼下には大量の軍が展開している。
数にして三万の兵がいる。これに属国である各国の兵士を足せば五万程にもなるだろう。しかし相手の全軍は十万とも、十五万とも聞く。流石に数ではどうしようもない。ガイロンも精強な戦士を擁しているが、それでも数の暴力には抗えない。
でも、今しかないのだ。今戦わなくては守るべきものを守れないのだ。ならば今ここで覚悟を決めなくてはならない。
「ヒロノキアの屈強な戦士諸君!! 我々は未曾有の危機に瀕しているっ!! アストガルドという野蛮な国が、我々の国土を、我々の街を、そして我々の家族を踏みにじろうと愚かにも進軍してきたのだッ!! ならば、我々のやるべきことは何か!? ならば我々が取る行動は何か!? そう敵は排除しなければならない。己が家族を守るため、己が隣人を守るため!! 我らは戦わなくてはならないッ!!」
横には己の信頼する仲間が居る。《剣聖》《鉄壁》《閃光》《大力》《英知》、英雄たちの顔を見る。その顔は決意を決めた戦士の顔をしていた。
「お前らの前には英雄が居る!! お前らの上には英雄が居る。そしてお前らも一人一人が国を守る英雄である。ならば勧め、恐れるな!! この英雄たちの王がお前たちに勝利を齎そう」
うおおおおという地面を揺るがすような低い声が振動となり、辺りに響き渡る。兵士たちも、全てをかけて戦う覚悟ができたようだ。
その姿に満足し、俺は一言そう告げた。
「進軍ッ!!」
ここにフロンティア最大の戦争が始まったのだ。




