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聖母のフロンティア6

「どういう事だ!?」


「分かりません! 何か攻撃を受けているようです」


 俺たちが最初見たときの賑やかな街並みはもう見る影もなく、今やこの街は街と呼べるものではなくなっていた。

 それに俺たちのいた城は無残にも崩れ、そこには瓦礫を残すだけになっている。俺たちを殺すために城ひとつ使ってしまうとは、太っ腹な奴だな。


「マスター上を見てください! なんですかあれは!?」


 アイリの指さす方向に目を向けると、空中に何やら人影が見える。しかし空中に人が浮かぶなんてあり得るか? しかもそれは人と言うには少し異形すぎる。


「あれは……天使?」


 そう、言葉が一番しっくり来る形をしていた。大きな翼を有し、空を飛んでおり、美しい姿をしていた。

  しかし、この世界の天使は、祝福や希望ではなく絶望を運んでくるようだが。


「天使? それはなんですか?」


「あ、ああ、俺たちの世界の神様の使いだよ」


 どうやらこの世界には天使の文化はないようだ。まぁこの世界では聖神教会なんてものもあるし、神様自体の概念はあるのかもしれないが、俺の世界と同じように天使などは出てこないのか。


「こんなのがマスターの世界にはいるのですか?」


「いいや、実際にはいないよ。居るかもしれないみたいな感じ、ほとんど誰も信じてはいないけどね」


「そうですか、私たちの世界でいう魔族や、亜人みたいなものですか」


 まぁ実際には少し違うとは思うのだが、同じようなものだし、そう解釈してもらった方が分かりやすいしいいか。この世界で魔族や亜人は実際に存在したようだし。


「しかし、現状が把握できない。何が起こっているんだ?」


「ハハハハハ、これこそが我が王の策よ!」


 瓦礫の中、狂気的な笑いを浮かべる人間が一人、このような騒がしい状況の中、その笑い声は不思議と響き渡っていた。


「《聖母》はいただく! それこそが我がアーカディアの目的! 《聖母》なんてもの我らの手になくてはッ……」


 次の瞬間には、アーカディアの大主教の首は吹っ飛んでいた。


「少しうるさいわい」


 ガウスのオッチャンが一瞬で首を吹っ飛ばしていた。


「ふむ、全軍を持って、我たちを倒そうとしていたところをあの異形の者たちに邪魔されたというところか。世の中うまくはいかんようじゃのう」


「そうだな、私たちはやることがあるんで、先に失礼する」


「おう、《武神》よ、また会いまみえる日までさらばじゃ」


「ああ、さらばだ」


 そういって、《征服王》の一派は消えて行ってしまった。


  正直俺にはまだこの状況を理解できていない。頭の中の整理なんて途中で止まったまんまだ。


「瞬時に決断せよ、理解できないことはいい、しかし悩んだままでは死ぬぞ。やるべきことだけをするんだ」


「しかし、この状況をどうにかしろってのが無理だろ!」


「嘆くだけなら、民でもできる。王ならば何かをなさねばならんのだ」


 相変わらずガウスのオッチャンは難しいことを言う。しかし、ここで倒れているだけでは何も始まらないか。俺は考えて答えが出るタイプでの人間ではないしな。


「さて、我も動くかな行くぞ」


「おい、待ってよオヤジ!」


「はぁ、もう」


 そういって、ガイロンの一派も消えて行ってしまった。


「ふぅ、おまえらはここら辺の救助を頼む」


 真っ白な頭でなんとか覚悟を決め、焦る気持ちを押し付けて、冷静に指示を出す。


「マスターは?」


「決まってる、助けてくる」


 もう、許せない。こんなことをやらせるトーチを、そしてこんなことの片棒を夕実に担がせてしまった自分を。


「はい、わかりました。行ってらっしゃい」


 アイリはゆっくり優しい笑顔を俺に向ける。


「おう、行ってくる」


 俺は抑えていた気持ちを爆発させた。





          ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 どこに居る? やつならどこに行く? こんな状況だ、中心地は避けるだろう。それに奴らにとってもこれは想定外の事だろう。あんな城を崩したぐらいで俺らが死ぬとは思っていないだろう。あいつのことだ、他の策もあったが、今回の騒動でそれは出来なかった。

 だったらどうする? こんな状況、もう俺たち全員を殺すのは無理だ。だったらもう全力で逃げるはずだ。


「いた」


 俺混乱の中、綺麗に並ぶ大量の足跡を追い続けた。こんな状況なのに兵士があの天使モドキに抵抗して居ない。という事は何か他の目的をもって動いているという事だ。それは国を守ることよりも大事なこと、そんなの今の状況ではひとつしか思いつかない。


「トォォォォチィィィィイィィ!!」


 兵士の集団の中に、あの嫌味な野郎を見つける。


「ヒッ!? 誰だ?」


「てめぇを絶対にゆるさねぇ!!」


 俺は後続から兵士たちを切り崩していく。流石にこの状況だ、兵士たちも混乱しており、さらには後ろからの攻撃、そうやすやすとは対応できないようだ。


「夕実を返せ!」


 行軍速度を上げる兵士たちを無理矢理ちぎっていく。どんなことがあろうとお構いなしだ。そこらへんの兵士に俺が止められるわけがない。

  しかし、その強硬突破も、夕実たちが居る中心付近で止められる。


「若き王よ、これ以上は進ません」


「もう止まるがいい」


 俺の目の前には、二人の巨躯の男が馬に乗り現れた。この国の称号持ち、《調和》のアダムス・フォーク将軍、《指揮者》のクラマ・アドウス将軍多分この二人だろう。受ける印象が他の兵士とは全く違う。


「どけ」


 もうこの怒りを抑えておくことなどできない。俺と夕実の間に立ちはだかるのであれば、誰であろうとぶっ飛ばす。


「この若さでこれとは、恐ろしきものだな」


 どっちがどっちだかは分からんが、そんなのは関係ない、どうせ二人とも倒さなくてはいけないのだから。


「これ以上好き勝手はさせ、グホォ」


 俺は、速攻で片方の男を吹っ飛ばす。


「クラマ!?」


 どうやらいま吹っ飛ばしたのが、《指揮者》だったようだ。顔が拉げてしまっているが、きっと大丈夫だろう。称号持ちがこんなことぐらいで死ぬとは思えない。


「どけ」


 ゆっくりと《調和》との距離を詰める。


「なっ?」


「どけっ!!」


 俺は問答無用で、奴の顔面にこぶしを突き出す。


「クッ」


 しかし俺の拳は奴の獲物である青龍刀みたいなものに阻まれる。籠手と刀がぶつかり合い、火花を散らす。

  俺はその状態から無理矢理蹴りを放つ、奴はそれを避けようと無理な体制になり馬から落ちる。


 俺はその一瞬をみのがしはしない。一気に落ちたところへ距離を詰め、奴の顔面へ拳を繰り出した。

 綺麗に拳の形にめり込む奴の顔面、流石に当分は立ち上がれないだろう。


「一瞬にして、我が国の将軍を? しかも称号を持っているのに?」


 もう何もかもが無駄だ、最速、最短の距離で、奴をぶっ飛ばす。俺は一気にあのむかつく面の野郎がいる場所まで加速した。


「ブヘッ」


 兵士をかき分け、奴の顔面にとりあえず一発お見舞いする。気絶されても困るので、あくまで軽くだが。

  三メートルぐらい後方に吹っ飛ぶトーチ、奴はあとでどうとでもできる。今は夕実が最優先だ。


「おい! 夕実! 大丈夫か?」


 俺は夕実の肩を揺らし、彼女に問いかける。


「ん?」


 しかし帰ってきたのは生気のない返事だけだ。こんな状況になっても、以前の彼女に戻る気配はない。


「しっかりしろ! おい!」


 あまり時間がない。今は将軍と宰相が吹っ飛ばされて混乱しているが、ここは敵軍の真っただ中、あまり悠長に構えている時間はない。


「クソがッ!」


 ゆっくりと起き上がるトーチが視界の橋に映る。夕実を何とかするより、奴から解決法を聞いた方が速そうだ。


「てめぇ! 夕実にッ!?」


「『共鳴』」


 一瞬体がくらっとする。なんだこれは!?


「これだけは使いたくなかったが」


 なにか自分の体が自分のものでなくなるような感覚に陥る。


「マジかよ、こんなに抵抗されたのは初めてだ。だけど無駄だ。この技は誰も抵抗することができない」


 意識がどんどん遠くなる。奴の言葉が体全体にしみわたっていくようだ。もう、だめだ夕実が、こんなにも近くに夕実が居るというのに、俺はここで終わるのか?


「クソがッ」


 ゆっくりと意識がなくなって……


「ハッ!?」


 意識が切れそうな瞬間、辺りに爆音が響く。何かが爆発したかのような音が俺の耳に届く。


 そして目覚めた俺の目の前にはあの《武神》が立っていた。


何事もなかったかのように続きを投稿する人間のクズです。


完結はさせたいです。頑張ります……

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