始業のフロンティア2
俺たちG組と呼ばれた生徒たちは、さきほどまで入学式を行っていた体育館まで来ていた。入学式のものは完全に取り払われており、今やもう、殺風景な体育館の風景が広がっている。
「しかし、何をするんだろうね? 入学式の日なのに勉強でもすんのか?」
隣の変態が、床に胡坐をかきながら、喋りかけてくる。ブルマで胡坐をかいているせいで、ちょっと見たくないものが見えそうになる。というか、なんかもう着なれてる感が出ているのが、逆にむかついてくる。
「さすがに体育館まで来て、勉強はないとないと思うよ?」
「そうだよなぁ、おいリューマ、お前はどう思う?」
「さぁ? 俺には予想がつかん。体育館だから、なんか遊ぶんじゃね?」
「そうかー、まぁ最初だしな。仲をよくするためにはいいな。あの先生、意外にいいやつみたいだな」
「うーん、でもそんな雰囲気ではないと思うんだけどなー」
たしかに、なんか遊ぶような雰囲気ではないな。どちらかというと殺気だっているような。
「お前らー、うるさくすんなよ。今から授業するからなー」
体育館の舞台の上、だるそうに座り、だるそうな声で、声を響かせる。
「お前らは、この学校での立ち位置を覚えておけ。お前らG組は、武力が特化しているクラスだ」
俺が居るという事は、何か特殊なクラスだと思っていたが、そんなクラスだとは。まぁ、俺が指揮官とかのクラスに入っても、どうしようもないとは思うが。でも、どうなんだろう? 王様としては、そういう知識もあったほうがいいのか?
「だからって、お前らは勉強しなくていいわけでもないぞ?」
まぁ、戦場では莫迦は生き残れない。このような学校に来る人間は、一兵士として終わるような人間は居ないのだろう。
「ふむ、俺たちはこの学校では最強という事か」
「どっちかっていうと、莫迦って言われている感じだと思うけど」
「なんだと!? おい、先生! バカにすんなよ?」
「はーい、変態は黙ってろよ」
「変態で何が悪い!」
俺、マジでこいつと一緒に居るのが嫌になってきた。
「ほら、ラー君、あんまり迷惑かけないの!」
なんか、エルは完全に保護者だな。まぁ、こんなのと一緒に居れば、そうならざる負えないな。
「じゃあ、あんまり焦らしてもしょうがないな。じゃあ、最初の授業始めるぞー」
授業か、俺は元の学校の授業しか知らないから、この世界の教育というものを見たことがない。なので結構楽しみだ。
「お前ら、闘り合え」
「は?」
えっと、やりあえ? どういう事だ? いきなり戦わなくちゃいけないってことか?
「じゃあな。あ、トウドウ、お前は少し来い」
俺は、混乱した頭のまま、教師の元へと急ぐ。
「なんでしょうか?」
「本気は出さないでいただきたい。さすがに学生であなたの相手は無理です」
「敬語はやめてください。学校で教師に敬語を言われると、少しむず痒いです」
「そうですか、では、敬語はやめるな」
「はい、その方がいいです。で、なんで戦わなくちゃいけないんですか?」
「ああ、このクラスには、少し特殊な人間が多くてな。全貌を把握しておきたいんだ」
なるほど、まぁ戦えば、一番実力は分かりやすいが。
「やけに直接的ですね」
「まどろこっしいのは嫌いなんだよ」
ふむ、まぁ何事もめんどくさいという感じの人だ、そういうとは思ったが。
「ほら、じゃあ、お前も戦ってこい。くれぐれも本気を出すなよ?」
「はいはい、それなりにやりますよ」
俺は、戦闘が繰り広げられている方向へと急ぐ。体育館は、今やもう大乱闘だ。どうやら血気盛んな奴が集められてようで、先生がやりあえと言った瞬間から殴り合いが始まっていた。
「おーう、リューマ、なんだったんだ?」
二、三人をボコボコにしながら、こちらに話しかけてくるランス。こいつ、結構強いな。
「いや、別になんでもないさ」
「ふーん。あ、エル、そこ気を付けろよ」
「分かってるよ!」
エルもそこそこやるようで、この乱闘の中、怪我一つ負わず、四方八方から来る攻撃を防いでいた。
「しかし、ぶっ飛ん出るよな」
「あ? 何が?」
「だって、いきなり戦い合えだぜ? 普通の学校じゃあり得ないだろ」
「そうか? 俺学校とか行ったことねぇからわかんねぇや」
ああ、この世界には小学校とかの施設はないのか。こりゃあ、教育にも本気で力を入れないといけないな。
「しかし、こいつら弱いな。本当にここは武力特価のクラスかよ」
ランスは涼しい顔で、そんなことを言う。たしかに、そこまで強くはないが、弱いってほどではない。多分こいつらは、小さなころから色々な努力をしていたんだろう。
「てめぇ! 『ダブルスラッシュ』」
しかし、一応称号持ちの俺としては、ただの雑魚でしかない。
「無駄ッ!」
俺は、普通に相手のスキルを、迎撃する。最近、化け物みたいな連中としか戦っていたので、自信を無くしていたが、俺もそこそこ強いのだ。アイリやおっさんがけた違いなだけなのだ。
「おー、お前強いな」
「お前もな」
俺たちは、そこら辺のクラスメイトをちぎっては投げ、ちぎっては投げていく。
しかし、これが武力特価か、レベルが低すぎる。そりゃあ、一般人にそこまで求めるのは酷だと思うが、称号持ちなんてものがいる世界だ、これでは少し頼りない。称号持ちが戦争において、どれだけ必要な存在か、という事を実感するな。早急に他の英雄を集める必要があるな。
乱闘なので、俺が負ける要素は皆無だ。クラス全体でかかってくれば、俺に勝ち目があったかもしれないが、一人ひとり来るのでは、何千人来ようが負ける気がしない。賢くならなくちゃいけないというのは、こういう事なのかもしれないな。戦場に出れば、集団戦が基本になるしな。
「しかし、これは無駄な戦いだな」
ランスは、クラスメイトを吹っ飛ばしながらそう呟く。
「ああ、もう、これ以上は無駄だな」
大体のクラスのレベルは分かった。ランスとエル以外は、実用レベルにはいない。まぁ、学校入りたてで、実用レベルの人間の方がおかしいのだが。
「なぁ、俺はさぁ、こんなことをしにここに来たわけじゃないんだよな」
「ん?」
「ここに来れば、俺より強いやつに会えると思ったんだが、そうでもないらしい」
ブルマの変態は、かっこいい台詞を吐いている。だが、ブルマだ。
「お前、その恰好で真面目な話をするなよ」
「なんだと? 俺はいつも真面目だぜ」
真面目な奴が、ブルマで学校に来るわけがない。ましてや、まともな奴なら、着ようとも思わない。
「まぁ、それは俺も同感だな。武力特化にしては、ぬるすぎる」
「なぁ、これ以上いたいけなクラスメイトを虐めるのはよくないと思わないか?」
「まぁ、それは言えてるな。じゃあ、どうする? 終わるまで逃げてるか?」
俺としては、そっちの方が楽でいいんだがな。学校でまで、戦闘に明け暮れたくない。学校ではウキウキ青春ライフを送りたいものだ。
「冗談、そんなつまらないことはしたくないね」
「あっそ、じゃあどうすんだよ?」
「分かってるだろ? なぁ!」
そういうと、俺の隣に居た変態から、蹴りが飛んでくる。鋭く、素早い蹴りだ。多分、そこら辺のクラスメイトなら、一撃で沈んでいただろう。だが、俺には止まってみるほど遅い蹴りだ。
「あぶねぇな! いきなり蹴るんじゃねぇよ!」
「うるせー! つまらないんじゃあ!」
「なんだよ! 俺を暇つぶしに使うんじゃねぇよ!」
そういいながらも、攻撃の手を緩めないランス。さっきまでふっと倍していたクラスメイトとは比べ物にならない蹴りだが、俺には役不足だ。
一つ一つの攻撃を、丁寧に凌いでいく。倒されはしないが、倒すのには少し骨がおりそうだ。ついさっき先生に、本気は出すなと言われたばかりだしな。
「どうすっかなぁ」
「余裕だな! おい!」
多分、手を抜いて倒しても、こいつは何度でも立ち上がってきそうだ。こいつは戦いを楽しむタイプのようだし。俺もそういうところがないわけではないので、分からないでもないが。でもな、ちょっと本気だして入学早々、大けがを負わせるわけにも行かないしなぁ、どうするかねぇ。
「オラオラオラ」
クッ、流石にそろそろきついな。しょうがない、ちょっと本気を出すか。
「オラァ?」
「甘いな」
俺は、一瞬でランスの横へと回り込む。流石に反応できるほどの能力もなく、ランスは俺を見失う。
「すまんな、少しめんどい」
俺は、正確にランスの顎を打ち抜く。
「あ? ああ」
一瞬でその体が、崩れ落ちる。正確に打ち抜いたので、確実に脳震盪だ。多分、この授業が終わるぐらいまでなら、寝てくれるだろう。
「ふぅ、厄介だ」
「ってあれ? ラー君倒されちゃったの?」
「すまん、めんどいから倒した」
「すごいねリューマ君、結構ラー君強いのに」
「ああ、この中じゃあぴか一だろうな」
多分鍛えれば、結構なとこまで行くだろう。
「ふーん、そっか」
「エルも結構やるじゃん」
エルの体には、怪我もだが、汚れすらついていなかった。
「まぁ、そこの変態と一緒に居れば強くもなるよ」
「そうかもなぁ」
「おーし、お前らの強さは分かった。今日は帰っていいぞ」
舞台の上から、また気怠そうな声が聞こえる。もう、終わりのようだ。まぁ、今この体育館に立っているのは、俺とエルの二人しかいいないのだが。
「はぁ、この学校本当に大丈夫なのか?」
俺は、頭を抱えずにはいられないのだった。
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