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街のフロンティア2

「ここです」


 俺たちは大通りに面した、大きな木造の建物の前にやってきていた。しかし、石造りの家が多いこの街で木造は珍しいな。


「ここが商人ギルドか?」


「はい、ここです。でもマスターは少し気をつけて下さい。商人ってのは嫌な人間がおおいですから」

「そうか、まぁ気を付けるよ」


 まぁ、商人なんて金儲けに命を懸けている人間だしな、キースとかも言ってたが、卑しい人間も多いのかもしれない。


「では行きましょう」


 そういって、俺たちはその建物の中に入っていく。中には、丸いテーブルが、たくさんあり、そのテーブルでは人々が、話したり、酒を飲んだりと、楽しそうに過ごしていた。

しかし、俺たちが入った瞬間、その喧騒は一気に静まった。


「あのーアイリさん、どうやら歓迎されてないようなんですが」


「大丈夫です。マスターはとりあえず偉そうにしていてください」


 大丈夫とは、どういうことだ。この目線は何か、よそ者でも見る目だぞ? このままここに居たら何かされてしまうのではないのだろうか。いや、襲われてもこの人数なら何とかなるのだが。


「冗談はやめてください。うちのマスターはこう見えて、意外に小心者なんです。あんまりからかわないでください」


「「「「ぷ、はっははは」」」」


 一斉に笑いだす商人達。何? 俺からかわれてたの? マジでビビったじゃないか。日本人はそういうところが敏感なんだぞ。


「すいません、マスター。こういう連中なんです」


「すまんな、王様。俺たち王様なんてもんと、生まれてから接したことがねーからよ。あ、処刑とかは簡便な」


 なんか話してみると意外にフランクだ。外面上は凄く親しみやすぞ、まぁ顔に張り付いている笑顔は、すぐに偽物と分かる薄っぺらいものだが。


「いやいや、気にしないでくれ。俺は別に王様とか、そういうの苦手なんだよ」


「マスター、少しは王様としての自覚を!」


「分かった! 分かったから」


「お前ら夫婦みたいじゃねーか!」


「じょ、冗談は、よ、よしてください! マスターと私が夫婦だなんて」


 野次相手に、顔を真っ赤にして否定をするアイリ。ああ、分かったこいつらを嫌な人間と言ったのは、ただ単におもちゃにされるからってことか。アイリは真面目だから、こういう冗談にすぐ引っかかるからなぁ。


「はっはは、そんなおめかしして、デートか?」


「や、やめてください!」


「そうなんですよ。かわいいでしょ?」


 いつも俺は怒られているので、少し反撃してみる。こういう時に反撃しておかないと、次、いつ反撃できるのか分からないからな。


「か、かわいい? ふしゅう」


 なんか、頭から湯気が出ている。怒り過ぎて、頭が沸騰してしまったのか? しかし、すぐに叩かれでもするかと思ったら、なんか動かない。怒り過ぎて、体が動かないというやつだろうか?


「あのーアイリさん。ごめんなさい?」


「あ、失礼しました。少し止まってしまいました。って、私たちはあなたたちと話に来たんじゃないんです。ユーナは居ますか?」


 我に返ったのか、すぐにしゃきっとして、立ち上がるアイリ。


「あー、姉御なら奥の部屋だ。あんまり寝てないらしいから、刺激しないようにな。風船みたいに割れちまうぜ」


 笑いに包まれる一帯、そのとき後ろのドアが開かれる。中から出てきたのは、綺麗な女の人だった。


「聞こえとるわ! ジーラ、あんた今度お仕置きな」


 綺麗な外見とは裏腹に、ガサツな口調だ。これは関西弁か? こんな世界で関西弁を聞くとは思わなかった。


「げぇー、マジかよ姉御!」


「マジや! あ、あと姉御ゆーたから、お仕置き二倍や」


「うげー、まじかよぉー」


 楽しい場所だな。なんか同じような仲間が集まり、好きな話をする。その話を仲間が笑い、どんどんその輪は広がっていく。多分ここはそういう風にできたのだろう。ある意味学校のようなものかもしれない。友達か、懐かしいな。もう懐かしいと癒えてしまうほど昔になったのか。いや、それぐらいにこちらの世界に染まってしまったという事かな。


「おーう、アイリやん。どしたの? そしてお隣さんはなんや、王様やん。いらっしゃいな」


 なんというか、商人というのはみんなこんな感じなのだろうか。まぁこんな人間だから商人になったと言えるのか。


「ユーナ、久しぶりです。でも今回は挨拶だけです」


「なんや、かったいなぁ。まぁ部屋に入り―や、お茶ぐらい出すで?」


「おう、んじゃお邪魔するか」


「いいのですか? マスター」


「ああ、これは挨拶と同時に顔を覚えてもらうための訪問だしな。お茶の一つや二つ、付き合ってこうぜ」


「なんや、話せる男やん。ほら、いいお茶が入ったんや、はよーきーや」


 俺たちは、奥の部屋へと入っていく。中は俺の執務室と変わらないぐらいに、資料や書類がうず高く積まれていた。


「ちーっと散らかってるけど、それは堪忍な」


「何がちょっとですか! だからいつも普段から整理しなさいと言ってるじゃありませんか!」


「分かった、分かったから、明日からやるさかい、あんま怒鳴らんといてな!」


 仲良く話している二人。二人の話し方から、とても仲がいいことがうかがえる。しかし、二人とも美人だから絵になるな。アイリは勿論、ユーナさんも結構なかわいさだ。

 ウェーブのかかった茶色い長髪に、接しやすい、朗らかな顔。そして、その顔には、幼さを隠すように、メガネが掛けられている。そして特筆すべきは、そのスタイル! アイリよりもでかい胸! その胸の破壊力は爆弾級だ! 俺の周りにはちびっこばかりだったからな。キネアの姫もちびっこだったし。ここにきてお姉さんキャラは凄く新鮮だ。


「で、今日はこんなところまで御足労やな。新しい王様さん」


「その王様ってやめてくれ。俺には藤堂龍馬っていう名前があるんだ。それにあんまり王様って役職も好きじゃないんだよ」


「そうなん? じゃあリューマって呼ばせてもらうわ。私はユーナ・セイリス。ここ、商人ギルドのマスターや」


 どうやら彼女はここ、商人ギルドの一番偉い人間らしい。その年でマスターとは、すごい才能だな。しかし、偉い人間には見えないな。


「失礼な! 呼ぶにしてもりゅ、リュウマ様でしょう!」


「えー、なんかそんなかたっくるしいやん。ねぇリューやん」


 なんか、リューやんまで落ちている。王様→リューマ→リューやん、ってすごい変化だな。まぁ俺は別にいいけど。


「かたっくるしくて当たり前です。実際に偉いんですから!」


「まぁ、あんまり気にしないでくれよ」


「ほらぁ、リューやんだって言ってるやん」


 抱き着いてくるユーナさん。当たってる、当たってるよ。柔らかいものが当たってるよ!


「抱き着かないでください! マスターが良くても私がダメなんです。ただでさえ、威厳というものがないんですから!」


 まぁ、俺自体偉そうにするのが苦手なんだが、こうもはっきり威厳がないと言われると、少しへこむな。俺だって結構頑張っているんだがな。


「まぁ、その話はおいておこう。しかし、ここの人はみんな親しげだな。英雄として好きというより、アイリ自身が好きというか」


 町の人々が、アイリに接する感じとは違う。街の人々は、英雄としてアイリを尊敬、敬愛しているが、ここの人間は対等というか、なんというか。


「あー私らみんな英雄や王様を、自分を守ってくれる人とは考えてないからやからね。どちらかというと、仕事のパートナーという感じやね。私たちは税を、商いをするための税を払う。あなたたちは私たちの商いの場を守る。まぁアイリとは本当の仲良しなんやけどね!」


「わっ、抱き着かないでください」


「ええやん! あ、そういえばお茶を出してなかったな、おーい、あのお茶もってきてーな!」


 すぐに、お茶を持ってきた少年が入ってきた。


「その子は?」


「まぁ、私の弟子やね。一応私も商人やしね、弟子とかも欲しくなっちゃうんよ。下がってええよ」


 そういわれると、その少年は頭を下げ、部屋から出て行った。


「弟子ですか。まだ若いのに大変ですね」


「あんたに言われとーないって感じやね。英雄とは比べものにならんよ」


「でも、あんたもそれなりに大変そうだな。この書類の量、親近感を覚えるぜ」


 この紙の束には、俺も苦しめられらからな。


「そうなんよ! こんな仕事投げ出してやりたいわ! でもそうするわけにもいかんのよ」


「そうなんだよな。だから手におえないんだよな」


「あー、なんか親近感を覚えるわ―。どう私と一緒ににげてまう?」


「あー、いいなそれ」


「もう、冗談もほどほどにしてください!」


「そんな怒んないで―な。ほら、お茶でも飲んで」


「もう……あ、でもこの飲み物おいしいですね」


「本当だ。これはお茶か?」


 色は黒なんだが、味はたしかに日本茶だ。渋い味に、落ち着く香り。なんだか懐かしいな。うちは爺と俺だったから、家の中での飲み物は専ら日本茶だったな。


「よーしっとるね。これはヒノモト特有のお茶なんや。その名もヒノモト茶。そのまんまやろ」


「そうですね。でも、なんか温かい味です」


「そうだな」


 しかし、ヒノモトと聞いたときはもしかしたらと思ったが、どうやらここにも日本のような文化を持った国があるらしい。まぁ、ここは地球と似たような世界だし、同じような文化が育ってもおかしくないのか?


「こんなお茶があるなら、ヒノモトにも行ってみたいな」


「ほな、私と行く? あなたと二人なら、良い旅行になりそうやね」


 ふむ、すごくいい誘いだ。俺もヒノモトに行けるし、ユーナさんも仕事から逃げれる。双方にいい取引だな。


「ふざけたことを言うのはやめてください。ほら、もう帰りますよ。ここに居るとマスターはダメになります」


「はーい」


 しかし、そんなことが許されるわけがないのであった。王様に自由はないようだ。


「はっはは、なんか尻に敷かれてるって感じやね。そんなんじゃこの先苦労するで」


「もう、ユーナもやめてください! ではまた今度!」


「じゃーな、ユーナさん」


「ほな、またなー。あとユーナでええよ」


 俺はアイリに引きずられながら、部屋を後にする。


「ほら、マスター次は職人のギルドに行きますよ!」


「はーい」


 俺は引きずられながら商人ギルドを後にするのだった。

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