初陣のフロンティア1
「おいてめぇ! もっとあっちに行けよ!」
「何よ! オカマ差別はよくないわよ!」
「差別じゃねーよ! 純粋に狭いんだよ!」
俺はゲイルの筋肉に圧迫されながら荷馬車の上で、右に左にと揺れていく。
「しょうがないじゃない! 第一この荷馬車が狭すぎるのよ! ……ハッ!? まさかこれを狙ってたのね!?」
「狙ってねーよ! というかおまえの筋肉邪魔なんだよ! もっと萎め!」
「萎めって何よ! どうやってやるのよ!」
「もう筋肉なんてちぎって捨ててしまえ!」
「はいはい、二人とも静かにしてください」
前の方で馬の手綱を取っているアイリが、あきれた声で注意してくる。
「アイリはいいさ、オカマの筋肉に圧迫されてないんだから」
「しょうがないでしょう。村から持ってきた馬車と馬は子供たちだけでいっぱいなんですから、こっちに荷物を置くしかないでしょう」
村にあった馬車二台は、おっさんとシロナが手綱を握り、馬車の方には子供がぎゅうぎゅう詰めにされている。アウラは、まぁ走った方が馬より速いという訳の分からない人間なので、先に王都に戻ってもらっている。
「だからってこれは酷い。オカマで筋肉の人間なんかと、誰が密着したがるんだよ!」
主に俺はゲイルの右乳首に顔をうずめる形になって荷馬車に乗っている。これなら疲れてもいいから走った方がマシだ。
「あら酷いわ! 今のは完全にオカマ差別だわ!」
「ちげーよ。お前が嫌なんだよ!」
「なんてこと! キッー!」
「もう、二人ともあんまり騒がないでください! 馬車が壊れてしまいます」
「私はあなた熱で壊れてしまいそうだわ」
「キモイわっ!」
俺は思いっきりゲイルの腹部へとこぶしをぶち込む。クリーンヒットしたようで綺麗にゲイルの巨体が吹っ飛んでいく。
「決まった」
俺は拳が綺麗に決まったことに感動を覚える。
「マスター! なんかそんな満足した顔してないで! ゲイルさんが川の中に落ちてしまいましたよ!」
「いいよ。別に」
これで少し荷馬車が広くなった。いやー筋肉に圧迫されないというのはいいなぁ。
「たーすーけーてー」
ゲイルが川に流されていく。どうやらあまり泳ぎは得意ではないようだ。そういえばあいつ山賊だったもんな。泳げなくてもしょうがないか。
「ふむ、オカマの川流れか。風流だな」
「何を言ってるんですか! 早く助けないと!」
「えー、マジで?」
「マジです!」
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「ふぅ、死ぬかと思ったわ。私初めてカマ神様に会ったわ」
荷馬車の上にはびしょびしょのオカマが一人。
「そんな大げさな。というかカマ神ってなんだよ!?」
「そんなことはどうでもいいの。早く助けなさいよ! 本当に死ぬかと思ったじゃないの!」
「ふむ、まぁ今回はやり過ぎたな」
さすがにこれはやり過ぎたかもしれないな。幾らゲイルがキモイからってこれはやり過ぎかかもな。
「分かればいいのよ。じゃあお詫びのチューね」
「死ねッ!」
今日の名言――オカマは二度飛ぶ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なぁ、俺たち今からどこ行くんだ?」
「なんでもでっかい街に行くんだって!」
「村じゃねーの?」
「都? だとかなんだか言ってたよ」
「みやこ? なんだ誰かの名前か?」
「ねぇ、キース兄ちゃん。都って何?」
「都とは国の中心になる街のことだ」
いらいらしながらもしっかりと子供の質問に返答するキース。
「へーわかんね。お兄ちゃんもっとちゃんと説明して」
「難しいよー。しっかり説明してよー」
「あーうるさい! なぜ誇り高きグイン家の僕がこんな子供の世話などっ!」
馬車の中では子供たちとキースの騒がしい声に満ちていた。
「少しは静かにしろよ」
「「「はーい」」」
「僕はうるさくないっ!」
一際騒がしいキースの声が響く。
「やはり騒がしいな」
「いいんじゃない?」
「しかし、なぁ」
「みんな不安。だから」
「まぁ、そうだろうな。なんせあの子たちは村以外の世界を知らない」
「子供は未知に期待と不安を寄せる」
「この道しかなかったとはいえ、子供たちには負担をかけるな」
「そんなのはどうしようもない。これも運命」
「王は英雄を集める」
顔を曇らせながらつぶやくバレル。
「それが本当かどうかは分からない。でも力があるものは責任がある」
「その責務から逃げることは出来ない……か、私は戦うことしかできないのか」
「それも分からない。でも答えは出てるはず」
「出てるはずか、そうなのかもしれないな」
「だから都に来るんでしょう? あなたなら受けなくても子供を養うくらいはできる」
「逃げたい。いや逃げたくないんだろうな。この力から」
「…………」
言葉を詰まらせ、表情が曇るシロナ。
「この世界は本当に残酷だよ」
その時、前方からものすごいスピードの物体が接近する。それは轟音を立てながら二人の目の前で止まる。
「アウラ? どうしたの?」
「戦争だよ。ヒロノキアが戦争になってる!」




