番外1 陽動成功?
「兄者―!」
山の麓には野太い声が響き渡る。
「俺はもうダメみたいだ。あとのことはお前に任せた。山賊の命運はお前に懸ってるんだ……ぞ……」
「あ、あああああああああああ」
「えい!」
無邪気な声で、ナイフをひん死の男に突き刺す少女?
「あああああああああああああああ」
「兄者―!」
「ねぇ、あれはなんなんです?」
遠くからその様子を眺めながらあきれ果てる二人。
「コント?」
さっきからこんな感じである。ちなみ少女の握っているナイフは、食事用のもので、そこまで鋭利ではない。さらにそこまで力を込めていないので、チクッと刺さる程度である。
「お前はもう死んでいる!」
「己っ! 兄者の敵!」
「甘いね!」
少女? は男の攻撃を華麗に躱し、ナイフを腕に突き刺す。
「ぐわあああああああああ」
大げさに倒れる男。
「兄者、敵は取れなかった。せめて兄者のすぐ近くで……がくっ」
「えーあれは本気で倒れてるんですか?」
「ちょっと確認してくる」
銀髪の少女は男に近寄り、その男の生死を確認しようとする。
「し、しんでる!」
「ねぇ、シロナまでふざけるんですか?」
「冗談、少し交ざりたかっただけ。本気で気絶してる。弱すぎ」
「はぁー、こんなのが山賊ですか。世も末ですね」
頭を抱える金髪の女、その顔には疲労の色が見える。
「ふっ、そいつは山賊四天王では最弱の、兄弟よ。あとの三人はそうはいかないぞ!」
草陰から現れる新たな集団。
「なんだって、こんなのがあと三人もいるのっ!?」
「アウラはなんであんなにノリノリなんですか?」
「少年なんてそんなもん」
「というより、兄弟入れて四天王って、その時点で五人居ますよね。それは四天王としていいのですか?」
「ノリじゃない?」
「はぁ、本当に頭が痛いです」
なんで私たちがこんなバカな盗賊を相手にしなくてはいけないのか、という表情を浮かべる金髪の女。
「必殺、アウラフラッシュ! 相手は死ぬ」
「「「ぐはあああああああああ」」」
アウラがナイフを振った瞬間三人が吹っ飛ぶ。
「いいんですか? 一瞬でやられましたけど」
「こ、これは、常人には一度だけしかナイフを振ったように見えないが、実は物凄い速さで、相手を一人ひとり吹っ飛ばす技、アウラフラッシュ」
あまり感情のない声で説明するシロナ。
「ねぇ、シロナ。キャラがブレブレじゃない? それに私には普通に見えてたし」
「いいの、楽しんだもん勝ち。ねぇアイリ、こういうのは深く考えたら負け」
「もう、いいです」
「あの四天王をやっただけで偉そうにするなよ? あんなのは山賊の中でも下の下! 偉そうにするのは我々山賊六人衆を倒してからにしてもらおうか!」
さらに億の茂みから六人の集団が現れる。
「われら六人衆はそこの四天王とは一味もふた味も違うぞ?」
「そうだ。そこら辺の雑魚と俺たちを一緒にしないでもらおうか!」
「「「「そうだ! そうだ!」」」」
「アウラフラッシュ」
「「「「「「ぬわー」」」」」」
また吹き飛ぶ山賊。
「なんかもう、めんどくさくなってませんか?」
「マンネリ?」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「アウラーフラッシュ」
吹き飛ぶー山賊。
「アウラ! フラッシュ!」
吹き飛ぶ! 山賊!
「ア~ウ~ラ~フラッシュ!!」
吹~き~飛~ぶ~山賊!!
「いったい何人いるんですか? さっきから六人衆とか、七武会とか、十老頭とか十二神将とか、いすぎじゃありません?」
「そうだね、そろそろめんどくさいね。アウラ終わらせていいよ」
「しょうがないな。さぁみんな力を合わせよう!」
「うん」
アウラの方へと歩きだすシロナ。
「え、シロナ、これはなんですか? 私、説明されてないですよ?」
「飛び散る笑顔は太陽の色、ヒーローイエロー」
「澄み渡る心の清らかな色、ヒーローシルバー」
「え? え?」
いきなりの二人の行動に戸惑い隠せないアイリ。
「お姉ちゃん早く」
「アイリ早く。山賊の方々も待ってる」
ちらちらと三人を向く山賊一向。
「嫌ですよ。こんな恥ずかしいこと!」
「えーいつまでたっても終わらないよ」
「アイリ、ノリ悪い」
ジトーっとした目でアイリを見つめる二人。
「あーもう分かりました。やればいいんでしょ! えーごほん。燦然と輝く光の色ヒーローゴールド!」
「三人合わせて」
「「「三英雄」」」
三人で決めポーズを決める。
「決まった」
「そうだね、最高の決まり具合だ」
「もういやああああああああああああ」
そして響くのは一人の女性の悲痛な叫びだった。




