大力のフロンティア8
俺は踵を返しておっさんの方へと向かう。流石に少し心配だ。まだやられてないといいんだが。
「待ちなさいよ。私はまだやれるわよ!」
のそりと立ち上がる巨漢。体は血だらけだが、まだ元気いっぱいといった様子だ。
「あー、やめとけ。あんまり動かなければ、多分気絶するぐらいで済むと思うぞ」
「何を言って……!?」
立ち上がった巨漢が轟音を立てて倒れる。ゲイルはまた立ち上がろうとするが、思うように力が入らないようで、途中まで立っては崩れるということを繰り返している。
「体が……痺れて、それに呼吸が」
ゲイルの口が酸素を求めてパクパクと動く。
「だからあんま動くなって、体が痺れてなんか雷にうたれたみたいだろう? 肺に思いっきり衝撃をぶちかましたから息ができねーだろ」
「……」
「あー、筋肉とか厚くても意味ねーよ。これ鎧とか貫通させる技だし、だからいくら厚い筋肉があったとしても無駄」
俺もこれをやられた時はマジで死ぬかと思ったからな。爺のやろう、ぜってぇ殺す。
「まぁ、俺が強かったってことで、ちょっと寝ててくれや。お前個人に怨みはねーが、お前らのやったことは許せねーからな」
俺はゲイルに最後の一撃をくらわせる。殺してはいないが、多分一日ぐらいは起きねーだろうな。これが俺にできる精一杯だ。あとは村人に判断を任せよう。
「さーて、おっさんは大丈夫かな」
結構時間がかかってしまったからな、おっさん本当にまだ殺されてねーかな。いや最初からこの技を使えばよかったんだが、なんか楽しくなっちまったからな。
こういうのが俺の少し悪い癖なのかもしれない。
ふむ、さっさとおっさんのところに行きたいが……流石にこのままゲイルを置いておくのも可哀そうか。スキルを使った結果、元々履いていたズボンも無残な姿になっているし。
やはり現実は漫画みたいに上半身は破けて下半身は無事みたいにはいかないか。いや、元々上は着てなかったんだけどさ。
今思うと俺も全裸のカマと笑いながら殴り合っていたのか、かなり変な絵だな。
「ふーむ、乙女なゲイルに、この姿は可哀そうだよな」
まずは下半身丸出しなのをどうかしないとな。うーん、俺もズボンを二枚持ってるわけないしな。上着とかあればいいんだが、さっきの戦いでボロボロになっちまったしな。
「あ! そうかいい案を思いついた」
俺は寝ているゲイルを力任せに立たせて。
「うおりゃっ!!」
俺はそのゲイルを地面に突き刺した。
「ふむ、これで下半身は安心だ」
乙女なゲイルはこれで守られた。流石俺だな。こんな名案を思い付くなんて俺はやっぱり天才かもしれないな。
「ちょっと待てよ?」
この地面に突き刺さったカマの絵面は少し可哀そうだ。なんてったって乙女だしな。こんな地面にカマが咲いている状態はよろしくないだろう。
「あ、そうか。こうすればいいのか!」
俺は地面に刺さったゲイルを無理矢理引き抜く。
「うりゃあ!」
そして俺はそのゲイルを逆にして、頭から地面にぶっ刺した。
「これで安心だな」
犬神家みたいになったが、まぁ顔は見えないし、これでゲイルのプライドは本当に安心だな。
「しかし……ぷっ、くはあはははは。流石にこれは我慢できねー! こりゃあ傑作だ」
俺は我慢できずに、吹き出す。最初はちゃんとゲイルのことを思っていたが、途中から完全に楽しむためになってしまっていた。
「名付けて、カマの一輪挿し。いかん、いかんおっさんだ」
忘れていた。おっさんの増援へと行かなくては、まだ死んでないといいが。
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「おいおい、マジかよ」
そこに広がっていた光景は、想像を絶するものだった。
地面に転がっているのは赤い肉塊。何をどうすればそうなるのか分からない。
そして色もない質素なシャツだったはずのおっさんの服装は真っ赤で、奇抜な服装になっていた。
周辺にはそのボスらしきものの破片が飛び散っていて、そのどれもが何か無理矢理引きちぎられたような感じだ。人間を力任せに引きちぎるってどういうことだよ。
「もう終わりか、やはりこの程度か。つまらん」
見下ろすおっさんの目は冷たく。深い深い闇を持っていた。




