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外伝1:強さの形

 一人の男が薄暗い部屋の中、パソコンの前で何やらぶつぶつと呟いている。


「やはりバカしかいない。なぜ僕の考えが理解されないんだ? おかしい、おかしすぎる」


 その男はやせ細った体型に、神経質そうな顔、ボサボサに伸ばした髪、服はよれよれで、部屋の中は汚れきっていた。


「こんな世界は僕の世界なんかじゃない。あり得ない」


 一人パソコンをカタカタといじりながらそんなことを呟き続ける。


「畜生、なぜ僕は認められないんだ? なぜ誰も僕を認めようとしない? 僕こそが一番優れているというのに」


 この男の言うとおり、画面の前で一人で呟いている男は優秀なのだ。しかし優秀すぎた。人は自分と違うものを嫌う、その違いが大きければ大きいほど。羊の群れの中に誰も狼を歓迎しようとは思わない。


「クソっ、クソっ、クソっ! こんな世界は要らない。僕を必要としてくれる世界以外いらないんだ!」


 その時彼が操るパソコンに一通のメールが届く。


「あん? 何だ? メール? この俺にメールなんか来るわけねぇ、どうせなんかの出会い系のやつだろ」


 男には友達と呼べる人間は居なかった。クラスの誰も彼のメールアドレスを知らないし、その男もクラスメートのメールアドレスを誰一人として知らなかった。

 しかし、男は気になってメールを見てしまう。もしかしたら誰かがメールを送ってくれたのではないか、という淡い希望を捨てきれなかったのである。


「新しい世界へご招待?」


 そんな件名のメールが一つ届いていた。


「クソっ、やっぱりかよ! メールまで俺のことをバカにすんのかよ! こんなもん削除だ!」


 男はそのメールを削除する。少しは期待をしていた分、彼のショックは大きかった。

 そしてまた彼のパソコンにはメールが届く。『新しい世界へご招待』というメールが。


「なんだよ……これ、クソっ何かウィルスにでもかかったのか? いや、ちゃんとセキュリティソフトは入っているし大丈夫なはずだ」


 男はまた淡い期待を抱く。これは本当に新しい世界へ連れて行ってくれる招待状なのではないか? と。普段の彼ならそんなことは微塵にも思わないだろう。しかし今の彼は身体的にも精神的にも参っていた。


「マジなら早くやった方がいいよな、だって新しい世界へいけるんだろ」


 そうして男はメールを開く、そのメールの中にはいくつかの質問とそれに回答するための欄があった。


「名前か、まぁ本名じゃなくてもいいんだよな」


 その男は最初の欄に、アカツキと入れる。その男が唯一友達だった子に呼ばれていたあだ名だ。


「次は国の選択? なんだ? これからシュミレーションゲームでも始まるのか?」


 色々な国の名前や説明が乗っている。その国の中にその男好みの国を一つ見つける。


「超大国、アストガルド。名もなき世界で人口、国土、文化のどれをとっても最大を誇る世界随一の大国。しかし、兵には恵まれず、有力な兵は今や《武神》の一人となった。うんこれがいい、特別な奴なんていらない。兵なんてのは僕に従っていればいいんだ。そう、僕が特別であればいいんだ」


 男はどんどんと質問を進めていく、そしてようやく最後の質問に辿り着く。


「これで最後か、意外に長いな。で最後の質問は『どんな王になりたいか?』そんなものは決まっている。みんなが僕に跪き、崇め、讃える。そんな王様になりたい」


 アカツキと書いた男は全ての質問を終える。そうしてメールの送信ボタンを押す。それと同時に男は気を失ってしまう。この世との別れも言えぬ間に。



           ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



「目覚めよ、おい主よ。起きんか!」


「うおっ!? なんだ? 朝か?」


「朝じゃないわい、しゃっきりとせんかい」


「ってお前は誰だ!? そしてここはどこだ?」


 男は昨日の記憶をたどってみる。しかしパソコンを弄っていたいた記憶しか思い出せない。こんな冷たい石畳の上で寝ていた覚えなんて男には全くなかったのだ。


「ふむ、ここはアストガルドからすこし西にいった召喚の祠と呼ばれている場所だ」


 その一言で男は理解する。ああ、新しい世界へとやってきたのだと。


「そうか、じゃあきみは誰だい?」


「ふむ名乗り遅れた。某は《武神》アレク・グロリアだ」


「僕はアカツキと呼んでくれ。そうだな早く連れて行ってくれ、僕の国へと」


「我が主の仰せのままに」


 男は跪き、王のへと応える。


そうして男もう一人の王は戦乱の世へと足を踏み出したのだった。

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