閃光のフロンティア3
「お兄ちゃん!」
まぁ戦闘の結果がどうなったかは、今の状況を見てもらえばお分かりいただけるだろう。
「いや、そんなにくっつくなよ、歩きずらいだろ」
俺の右腕を抱き抱えるようにしてくっつくアウラ。いくら相手が男だと分かっていても、この体制は少しばかしよろしくないというか。
「アウラ! マスターから離れなさい! 迷惑をかけるんじゃありません!」
「邪魔ダメ」
「お姉ちゃんには関係ないでしょ! シロ姉にも! お兄ちゃんもいいよね?」
いやそんな上目使いで見られても、ここは舐められないためにもはっきり言うべきだな。
「別に、大丈夫だよ」
かわいさには屈するしかない気弱な男だよ俺は、しょうがないだろこんな目で見られちゃ。
「マスターっ! 甘やかしてはいけません。この子はすぐに調子に乗るんですから」
「なに? お姉ちゃん嫉妬でもしてるの? お姉ちゃんもしたいならすればいいじゃん」
「なっ!? わ、私はそんなことしたいと思ってません!」
「私はちょっとしたいかも……」
「シロナっ!?」
「はっはっはシロ姉は素直だね、お姉ちゃんも素直になれば?」
「だから私はそんなこと思っていません」
「もう素直じゃないんだから」
「少し素直になるべき」
「二人とも!」
「はははっ、お姉ちゃんが怒った」
「アイリが怒った」
何を言っているか全く分からないが。なんというか、一人増えるだけで一気に騒がしくなるな。この腕に抱きついているのがあの《閃光》だとは信じられないな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「うがああああ! 『閃光』っ!」
「一の奥義『一加』」
二人の技が放たれた。
「マスター!!」
「主!!」
二人の声が聞こえる。大丈夫だ。アウラが何処を狙うかは分かっている。アウラは一度もこの鎧を貫通できていない。ということは確実性を持たせるため、多分鎧のない頭を狙ってくると思う。
「あああああああああああああああああああ」
狙い通り、アウラは頭を狙ってきた。俺はそれを迎撃するように拳を置いておく。俺は必至に踏ん張る。閃光とはこの現状を鑑みる限り、超高速の突進だ。さらにナイフを突き立てるようにすることで、突破力を高めている。全く見えないし感じることもできなかったから予測でしかないが。
「うああああああああああああああああああ」
重なる絶叫、二つの技の威力は同等。あとはもう根性で乗り切るしかない。
「負けるかあああああああああああ」
拳にさらに力を入れる。俺には帰らなくちゃいけない世界がある。こんなとこで負けてたまるかよっ!
最後の力を踏ん張る。今持てるすべての力をすべて込める。
いつまでも続くかに見えたその近郊は唐突終わる。アウラのナイフがその高威力の技同士の衝突に耐えられなかったのだ。
「あああああああああああああああああああああ」
ナイフを砕きそのまま、拳がアウラの顔面を捉える。
「はぁはぁ、勝ったか?」
俺は倒れるアウラを見届けながら安堵の声を上げる。
「ッ!」
「まだだ。まだ。僕は負けられない。僕の居場所を守らなくちゃ、僕の存在を守らなくちゃ」
必至にアウラが立ち上がる。そうかおまえも自分の存在に疑問を覚えているんだな。自分が居ていいのか分からないんだな。
「大丈夫だよ、お前はここに居るよ。アウラ、君は俺が認めよう」
ただ居てもいいと、ただここに存在してもいいと言ってくれる人が欲しかったのかもしれない。俺がそうだったから。
「僕は居てもいいの? 僕は僕で居ていいの?」
「ああ、君は《閃光》なんかじゃない。君はアウラだよ。君はアウラ・クロスフィールドだ」
彼は認めてもらえないのであれば消えてしまった方がいいと思ったのだろう。俺が新しい世界に逃げようとしていたのと同じように。
「ああああああああああああああああああああああああああ」
こうしてこの戦いは幕を下ろす。幼き少年のわがままはここに終わったのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「これで俺はお役御免となるのかな?」
ヒロノキアまであと少しといったところまでやってきた。俺はこれから元の世界に戻るために頑張らなければ、きっとあいつは俺が急に居なくなってピーピーと騒いでいるだろうしな。
「考えをお変えになるおつもりはありませんか?」
「残念だけど俺はこの世界の人間じゃないから、元の世界に戻らないと」
ここまでやってきて申し訳ないが、俺はこの世界の住人じゃない。それに王様なんてやったら元の世界に戻るどころじゃなくなっちゃうしな。
「そうですか、そこまで言うならもう何も言いません。では私たちは元の世界に戻るお手伝いをしましょう」
「いいよ、そこまでしなくても。これから忙しくなるんだろうし、俺もそこまでお世話にはなれないよ」
「いいえ、連れてきたのは私たちです。私たちにも責任があります」
ふーむ、付き合いは短いが、こうなったらアイリさんが折れないのは分かっている。別に俺が早く帰れるようになるならいっか。
「まぁ、アイリさんがそこまで言うなら手伝ってもらおうかな」
「そうですか、良かった」
ほっと胸を撫で下ろすアイリさん。どうやら結構責任を感じていたみたいだ。俺もこの世界はそこそこ楽しんでいるから、別にいいのに。
「あ、そういえば……聞きにくいことを聞くのですがいいですか?」
アイリさんが申し訳なさそうにしてくる。
「ん? なに?」
「そのマスターの奥義とはどんな技だったのですか? 私にはただ殴ったようにしか見えなかったのですが?」
「私も気になる」
ふーむそのことか、でもまぁ敵ではないし多少なら教えても大丈夫かな。
「うーんあれはただのカウンターだよ。ただまぁ色々とタネはあるんだけど」
あまり説明したくないこととかもあるしな、といってもタダのカウンターであることに違いはない。まぁ相手の動きに合わせて間接や筋肉を固めて、迎え撃つカウンターなのだ。故に相手の威力が高ければ高いほどこの技の威力は強くなる。といってもあんまり強いと俺が耐えられなくなってしまうのだが。
あと説明したくないことといえばこの流派の名前が『藤堂最強無敵流』とかいうふざけた名前だということか。爺のネーミングセンスは、全くよく分からん。
「ふーむ、タダのカウンターにしてはものすごい威力でしたね、あの『閃光』をうけきるんですから」
「そうだよ、お兄ちゃん凄いよね。いくら僕の装備がただの服で、ナイフもそこら辺の安物で、スキルの準備時間が足りなくて、さらにはスキルのレベルが1だったとは言え、英雄のスキルを受けきれる人なんてそうそういないよ」
なんという悲しさ、いやまぁいいんだ勝ちは勝ちだし、現にアウラも俺のことを認めてくれたみたいだし。
その時草むらからボロボロの鎧を着た人間が飛び出してきた。
「その鎧は、ヒロノキアの兵士ではないですかっ! どうしたのですか!?」
どうやらその人物はヒロノキアの戦士のようだ。しかし何があったらこんなにボロボロになるというのだ。
「《剣聖》様ですか、やっと見つけた」
「そんなにボロボロになって、何が起こったのですか?」
「ヒロノキアでクーデターが起きました。エリシル・ノワールを筆頭に、『議会』の貴族派が、国を軍事的に乗っ取ろうとしています。これに我々、民衆派はカノン・クラウザー様を筆頭に抵抗していますが、戦力の差は歴然。もうどうしようもないところまで来ています」
「はっ? クーデター?」
野郎、俺たちがアウラを連れてくることに成功した瞬間にこれかよ。というかなんでアウラを連れてこれたって分かったんだ? 黒服の生き残りでもいたんだろうか?
「分かりました。マスター、ヒロノキアまで急ぎましょう」
「ああ!」
俺たちは走り始める。戦場へと向かって。




