表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ポスドクは異世界イングランドで無双する  作者: 橋平 礼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/65

朱色の絆 ――ウィリアムの赴任と未踏の平和

 アイルランドの占領が完了した後、エースがこの地の「統治代行」として指名したのは、意外な人物だった。  

 兄、ウィリアム・ランカスター。

 かつてエースに決闘で敗れ、脳筋ながらも真っ直ぐな気性を持つ彼は、エースが最も信頼し、かつ「使いやすい」武の象徴だった。


「兄上。アイルランド軍の指揮と、現地の治安維持を任せます。……お目付け役として、父上も同行してくださいね」


 エースの言葉に、同行していた父ヘンリは複雑な表情を浮かべたが、ウィリアムは意気揚々と胸を叩いた。

「任せておけ、エース! 私は搦手は苦手だが、正面から向き合って連中を従わせるのは得意だ。……それに、お前の作ったこの『魔導蒸気鎧』、最高に馴染むぞ!」


 エースは兄に、単なる軍事権だけでなく、大規模な「産業政策」の実行権を与えた。

 アイルランドの広大な大地に、イングランド式の農法と、ワット製の自動農機具を導入する。現地の有力者(都督・刺史)たちには、自治を認める代わりに、これら最新技術の管理を義務付けた。


 結果として、アイルランドの生産性は数ヶ月で倍増し、貧困にあえいでいた民衆は、イングランドの統治を「救済」として受け入れ始めた。

(政治はエリザベス、軍事はクロムウェル、経済はワット、そして現地の治安と武力行使はウィリアム。……完璧な組織図オーガニゼーションだ)


 エースは、エディンバラからダブリンへと繋がる海底魔導ケーブルの敷設計画を眺めながら、アンナに語りかけた。

「史実では数百年続いた紛争を、わずか数ヶ月で経済的安定に変換できた。アンナ、これが論理の勝利だよ」

「はい、エース様。ウィリアム様も、戦場よりも復興現場で生き生きとしていらっしゃいますね。……でも、少し寂しそうでしたよ。『弟が遠くへ行きすぎてしまった』と」


 エースは少しだけ視線を伏せたが、すぐにいつもの冷徹な理知を取り戻した。

「……僕は止まるわけにはいかないんだ。この島国を一つにまとめたのは、あくまで序章に過ぎない」


 アイルランドの緑豊かな丘陵地帯に、イングランドから輸出された蒸気機関の白い煙がたなびく。

 かつてローマがハドリアヌスの長城で区切り、クロムウェルが暴力で蹂躙したこの地は、今、エース・ランカスターという一人の少年の数式によって、未だかつてない平和と繁栄を享受し始めていた。


「イングランドを支配し、スコットランドを呑み込み、アイルランドを掌握した。……大ブリテン連邦、完成だ」

 エースの視線は、ついに海を越え、ヨーロッパ大陸へと向けられた。  フランス王国の野心、ハプスブルク家の権威、そしてローマ教会の呪縛。

 それら古き理が支配する世界を、エースは自分の「論理」で解体する準備を整えていた。

「さあ、アンナ。次は大陸コンティネントだ。世界が僕をどう呼ぼうと構わない。……僕はただ、この世界の定数を、僕の理想に書き換えるだけだ」


 イングランド、スコットランド、アイルランドの三つの王冠を影で操る二十歳の「覇王」。

 エース・ランカスターの進軍は、もはや一つの国家の枠を超え、世界史そのものを破壊し、再構築しようとしていた。


(魔法はどこへ・・・・)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ