第22話 お祭りワッショイ
~春日はなside~
7月を迎えると、京都市はある大きなイベントが行われる。
八坂神社が主催の新・祇園祭で、毎年多くの地元の人や観光客でにぎわう。
妖魔大王さまも毎年妖怪たちを連れて参加するんだけど、本来なら人妖神社の大炎上で参加が厳しいとされてきた。
それでもおじいちゃんや両親、ヒメギクちゃんの協力でお祭りに間に合った。
そして私は…巫女としての責務を果たす。
「春日さんのお嬢さん、とってもお似合いですよ。」
「巫女装束なんて1年ぶりかも…。」
「去年は平安館女学校は創立2000周年で大忙しだったもんね。今日は夏の占いをよろしくね!」
「はい!」
「はな、すごくカッコいいよ。」
「ヒメギクちゃん!」
「はなの乗る馬の調子は万全だよ。最初は私に対しては警戒しているのか威嚇したりしたけど、すぐに私に懐いちゃって…今ではすっかり友達だよ。」
「実はあの子、私以外には懐きにくくて、お父さんやお母さん、おじいちゃんですら扱えなかったんだ。それでおじいちゃんが、あの馬を扱える者が流鏑馬の相棒だって言いだして、あの子はかなりの位の高い馬で自分が認めた人じゃないと乗せないんだ。それ以外は暴れて無理矢理降ろそうとするんだ。他の候補の男の人たちは落馬して骨折したり、乗馬恐怖症に陥ったりしたけど…私には何故かすぐにおとなしくなってくれたんだよ。」
「きっとはなの妖魔の力があの子には感じたのかもね。」
「ヒメギクちゃんも妖魔大王の一人っ子だから気を許したのかも。あ、そろそろ時間だから行くね。」
「頑張ってね、はな。」
本来は人妖神社は西暦時代にはなかったけれど、新暦を迎えてすぐに建てられた歴史の比較的浅い神社で、ご先祖様が京都中の神社を回って仲良くなり、気が付けばいろんな神事の手伝いをするようになった。
私は支社で巫女として下半期の流鏑馬をする。
本当は男の人がやる神事だけど、私が一番早く出来た上に一番安定しているため、例外として後継者が現れるまではこなす約束になっている。
八坂神社の神主さんが饅頭を差し入れし、他の多くの神主さんや宮司さん、巫女仲間のみんなも訪れた。
月光花のみんなはどうしているかな…?
~紺野るりside~
私たちは全員が仕事がオフになりましたので、新・祇園祭に参加します。
多くの殿方たちが派手な絵が描かれた神輿を担いで神社へ移動したり、篠笛や篳篥、琵琶、笙などの楽器で演奏したりと賑わっていました。
「そう言えばはなはどうしているのかしら?」
「はな先輩は人妖神社の巫女としての神事を果たすために別行動ですね。」
「ひまわりの情報か?」
「うん。はなは流鏑馬の天才で、女の子ながら男子顔負けの弓と乗馬の技術があるんだよ。」
「それは見てみたいね。西暦時代から続く伝統的なお祭りに人妖神社が新たに携わる。本当に長い歴史を感じるよ。」
「それはそうと花柳先生は?」
「花柳先生は八坂神社の神主さんと話があるって言ってそっちへ行ったよ。」
「花柳先生も日本文化人の多くと親交があって、神社の神主とまでなんてすごい人だ。そんな多忙な先生にご指導をいただけてありがたい事だ。」
「そうでございますね。それに…皆さん浴衣が素敵でございます♪」
「大和撫子たる者、浴衣を着こなせないでどうするんだ。なんて花柳先生に言われたからね。私なんて似合わないと思うけど。」
「すみれは男子用の浴衣を着たらサマになるんじゃないかしら?」
「ふふっ、よく言われるよ。」
「つばきさんは手慣れているでございますね。」
「毎年盆踊りがあるとなぎなた部で屋台を開くんだ。なぎなた部の名物のかき氷は名産品だぞ。」
「私かき氷大好きだからよくなぎなた部のかき氷食べてるよ♪つばきもそこにいたんだね!」
「ということはひまわりは常連だったのか。なるほど、だから浴衣の着付けに慣れていたのだな。平安館女学校の夏服はミニ浴衣ではあるが、正統派の浴衣はそうそう着ないのでな。」
「確かにそうかもしれませんね。ましてや京都は盆地故に夏は灼熱の暑さですからね。」
「私は毎年はなと一緒にお祭りがあったら参加してるんだ。でも今年のはなは何て言っても…」
「巫女としての責務ですね。となればはな先輩の勇姿をご覧になりましょう。」
「賛成。」
はなさんの勇姿を一目ご覧になろうと私たちは人妖神社の支社に向かいました。
私もそうですが、皆さん浴衣に慣れ親しんでいて、夏服では裾が短いとはいえ、長めの正統派の浴衣にも苦戦はしませんでした。
それぞれのイメージカラーに合わせて新しく皆さんと一緒に購入し、新鮮な浴衣でお祭りに参加出来たことを嬉しく思います。
ヒメギクさんは人妖神社のお手伝いとして残念ですがご一緒出来ませんが、きっとはなさんを陰で支えてくださるでしょう。
人妖神社の支社に着いた私たちは、時間になる前に一番よく見える位置を確保しました。
多くのマスコミの方々が脚立を高く立てて撮影の準備をしたり、アナウンサーの方々が中継実況をしたりしました。
「さぁここであの浴衣美人の方に聞いてみましょう!」
「浴衣美人…るり先輩じゃないかしら?」
「いいえ、つばきさんかもしれないでございまよ?」
「わかばの事じゃないか?」
「私でないのは確実だね。」
「私も最年少ですから違うと思います。」
「私の事かな?」
「それはないだろう(わね)(でございます)(ですね)(と思うよ)。」
「みんなひどーい!」
「浴衣美人の皆さん!今日は八坂神社と合同で行われる新・祇園祭の流鏑馬で初の女の子が神事を行う事についてどう思いますか?」
「どうやら皆さんの事でございましたね。」
「私たちってやっぱりアイドルなのね。」
「はい!私の幼なじみの子が今回の流鏑馬を行います!きっと見ているみんなを圧倒させますよ!」
「おお…ではその子のお名前をお願いします!」
「名前は…春日はな先輩です。私たち京都のローカルアイドル、月光花の仲間です。」
「月光花…!?あの花柳小次郎がプロデュースするあの…!?ではそのメンバーの子が流鏑馬をするんですね!テレビやネットの前の皆さん!史上初の女性なだけでなく、まだ未成年かつ地元のローカルアイドルが流鏑馬を行います!ご覧ください!」
~春日はなside~
「いよいよだね。」
「うん…。」
「やっぱり心配?失敗するのが怖い?」
「正直…怖いかも…。でも…ザイマとの戦いと比べたら、少しだけ不安じゃないかな。」
「やはりあなたは春日家の末裔だね。さぁ、人間と妖怪の絆を占う流鏑馬をしましょう。」
「うん。」
(お嬢ちゃん、俺様の上に乗りな。今日は俺様だけでなく、アンタも主役なんだからよ。アンタは俺様が選んだ主だからな。誇りを持って一矢撃ってこいよ。)
「サクラオー…ありがとう。それじゃああなたに乗るね。」
(おう!)
サクラオーは元々は人間界の馬ではなく、初代春日家の神主が代々かけて共に過ごした妖怪の馬で、この子は210代目くらいになるのかな。
見た目は普通の馬だけど、走る姿は神々しく見た人の心を魅了し、悪しき心を祓うと言われている黄泉馬と呼ばれる妖魔界の馬なんだ。
そんなこの子と一緒に、私は本番に臨んだ。
そして…
「はっ!」
カタン!
「おーーーーーーーーーっ!」
「あと6つ…はっ!」
カタン!
次々と的に矢を射て7つ目も難なく真ん中に命中し、今年の下半期も人と妖怪の仲は良好という占いが出た。
新・祇園祭は何日もかけて行われる神事で、私の流鏑馬が終わってもまだまだ続く。
流鏑馬を終えた私は仲間のみんなと合流し、マスコミのインタビューも受け、今後は自由行動になる。
そして私たちの夏を終え、新・祇園祭の終了と共に、人妖神社支社である会議が行われる。
つづく!




