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第21話 もう一度時代劇

~冬野つばきside~


すみれが父と一緒に撮影していた時代劇の収録をすべて終え、そのすみれが今度は主演として新しい撮影が行われる。


そしてなぎなたの経験がある私は、すみれの推薦で相方を演じるようになる。


「道場むすめ」というタイトルで、なぎなたを扱う鶴姫と、杖道を嗜む舞姫が京の街の悪人グループを成敗する作品になる。


その撮影が始まり、私は慣れない町娘衣装を着る。


「うん、つばきさん町娘衣装似合うね。」


「君も似合うじゃないか。今回はこの衣装で殺陣をするのだな。」


「そうなるね。薙刀でも竹で作られたものだから殺生よりは成敗になるね。」


「そして私たちが演じる二人の正体は…」


「将軍の実の双子の娘で、町人(まちびと)の声を直に聞くために変装している…だね。」


「だからこそ私たち二人で変装しているとばれない様にしなければならない。時代劇でよくある正体が凄い人だな。」


「うん。それを私たちが演じるのだから、恥じない様にしないとね。」


「すみれちゃん!つばきちゃん!撮影開始します!」


「はい!それでは行くぞ!」


「はい!」


「では町の子どもたちがさらわれるシーンを行きましょう!よーい…(アクション!)」


「お父ちゃん!お母ちゃん!助けてー!」


「十兵衛!十兵衛ぇー!」


「どうしてうちの子が…!」


「この小僧を生かしておくわけにはいかぬ…!我がお代官様の子を脅かす存在は粛清せねば…!」


「はいOKでーす!」


先程の乗馬をして子どもをさらった人の役をしているのは、乗馬が趣味の時代劇俳優の船越政則さんで、子どもを担いで馬に乗るのははじめてだと言っていた。


だが慣れている乗馬で安定した手綱(たづな)さばきだったので、私たちはただただこの人を成敗する役なのかと緊張が走った。


監督は気配りが出来る方で、よく緊張している私たちにお茶を恵んだりしてくれる。


そのお茶の心で緊張が解け、私たちの事も知ってもらえた。


その上で私たちが町を歩くシーンを撮影する時は、言葉こそ優しいが情熱があり厳しい撮影になった。


次に茶屋でお団子を食すシーンに入る。


「鶴姫、そういえばこの町はおかしいと思わないかい?」


「舞姫もそう思うか?他の町では子どもの賑やかな声が聞こえるが、どうもこの町にはその声が聞こえないな。」


「ここの茶屋の女将さんに聞いてみよう。あの、失礼します。私たちはただの旅人です。この町には何故子どもたちの姿が見当たらぬのでしょうか?」


「ああ、この町はね…。子さらいの町と最近悪評があってね。代官様のご子息がとても我儘(わがまま)で、自分の権力を脅かす子どもたちをさらって行方不明にしているのよ。しかも怪しい篠笛が聴こえたら最後、子どもたちは馬に乗せられてどこかへ連れ去られるの。」


「なるほど…では証拠を確かめる必要なありますね。舞姫、夜のこの町の調査のために宿を借りよう。」


「それがいい。どこか夜に泊めてくれる宿はありませんか?」


「それならうちの亭主がやっている雅(みやび)の宿にお泊りください。ここからそう遠くはありません。」


「かたじけない。あ、食し終ったからお会計をしないと。」


「いくらですか?」


「一人で6文になります。」


「はい。」


「毎度ありがとうございます。」


「はいOKでーす!つばきちゃんは少しずつ撮影に慣れてきたかな?」


「はい、慣れてきました。」


「すみれちゃんはさすがに時代劇撮影に慣れているね!さすが藤野源次さんの子だ!」


「父の子に生まれたことを誇りに思います。」


「では次は夜だね。その前に去り際の撮影に行きますか!」


肝心の殺陣は夜にもう一度撮影し、先に最後の身分を明かした後の去り際の撮影をする。


最後は町人たちに見送られ、子どもたちが手を振って宿のご主人がお礼を言い、茶屋の女将さんが名前を訪ねる。


そのシーンで私たちは、今後定番になる「名を明かすほどの者ではございませんよ。私たちは…ただの名もなき旅人ですから。」と言って立ち去る。


そして最も華になる夜の殺陣の時間が訪れた。


「父上、僕が邪魔な子どもたちをさらい、誰も逆らわない様にする作戦は成功ですね。」


「うむ、お前が大きくなり、この町を支配して我が家に大きな富を与えるのが夢じゃ。百姓ごときが富を得ようなんて百年早いものよ。ガハハハハハ!」


「突然失礼する!」


「何者だ!」


「ほう、ただの町娘ごときか。随分若いのう。これ息子よ、この子たちをお嫁さんにするのはどうだ?」


「よく見たらいい女ですよ父上。どうだ、将来我が家のために我が妻にならぬか?」


「ひとつ…人の悪しき心を叩き」


「ふたつ…ふたりで裁きを下すもの」


「我は徳川鶴姫。10代目将軍の娘なり。」


「同じく10代目将軍の娘、徳川舞姫。」


「まさか…上様の双子の娘…!」


「嘘だ…!上様の娘がこんな町に来るはずがない!」


「この町の繁盛のために父上は貴様に任せてきたが…まさか私利私欲のために町の子どもをさらい、自分の子を出世させて支配しようとはな。」


「そしてそのご子息もかなりの我儘だと聞いた。そこまでして自分たちだけ富が欲しいのかい?」


「だったら君たち、僕たちが人さらいをしたって証拠を見せてよ。」


「それなら…そこにいる物置きを覗いてみるがいい。」


「そこに決定的証拠が入っている。」


「な…貴様…!何故縛られている!」


「申し訳ありません…お代官様!この小娘どもが手綱を手裏剣で切り、落馬したところを突かれ、居所を掴まれました…!」


「もうそこまでだ。観念するがいい。」


「もはやこれまで…出合え!出合え!」


私は慣れ親しんだ竹のなぎなたで敵を薙ぎ叩き、すみれは慣れ親しんだ六尺棒で相手を翻弄しながら叩いたり突いたりする。


すみれに習った殺陣を実践し、そしてザイマ一族との戦いを参考にして動くなどをした。


日本刀こそないが、人を殺めずに悪を裁けと父上に命令されている設定で、いかに罪を償うために執行猶予を与えるかが分かる。


撮影を終えた私たちは監督の車で家まで送ってもらう。


昔は未成年は夜に仕事は出来ないとなっていたが、警察に申請して大人の保護者役がいて、車で家まで送迎すれば問題なく仕事が可能になっている。


そして私たちは疲れ果てた上に、監督の車の運転が心地よくて眠りについた。


つづく!

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