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第20話 コンテスト

~紅葉もみじside~


るりさんからの提案で、学校では先輩後輩だけど、アイドルとしては対等な関係でいるようになり、私とはな先輩は戸惑いが隠せませんでした。


はな先輩は引っ込み思案でなかなか自分の意見を言えない方で、私自身もどうしても最年少の立場を気にしてしまいます。


ですがそのモヤモヤを払拭する仕事が、はな先輩とひまわり先輩と一緒に訪れました。


「芸能人格付けコンテストですか?」


「うん。前のライブでテレビ局から和のアイドルとしてオファーが来たんだ。」


「私たちの格付けの項目は書道だって。はなは得意だよね、書道。」


「得意というか…何というか…。」


「そう言えばはな先輩は中等部でも表彰されていましたね。どんな作品なんですか?」


「それは収録してからのお楽しみ♪」


「それで撮影場所はどこですか?」


「神戸にある六本木テレビの支局スタジオだよ。」


「関西で収録なんですね。わかりました。」


こうして私たち3人は花柳先生の送迎で神戸に向かい、支局スタジオにお邪魔します。


そこには名だたる和風タレントの皆さんが楽屋で待機していました。


私たちは花柳先生と一緒に挨拶に回り、収録のシステムの説明を受けます。


そして説明会を終えた直後に、与えられたテーマで書道をするというシンプルなものでした。


それをプロの先生が評価し、才能の有無を審査するものでした。


本来は本社の六本木テレビスタジオで収録のはずですが、ドラマ撮影が遅れていてスタジオに空きがなかったからだそうです。


本日のテーマは四字熟語、それも好きな四字熟でした。


テーマが決まったので、カメラに撮られながら筆を手にしました。


「今回のテーマは?」


「やはり切磋琢磨ですね。実は川崎に私のライバルがいます。そのライバルに負けないアイドルになりたいと思っています。」


「なるほど…奥が深いですね、アイドルって。」


「はい。」


アナウンサーの方に声をかけられながらも持ち前の集中力で字を書きます。


切磋琢磨という字は画数も多く、より集中して細かく書かなければ墨を無駄にすることになります。


全て書き終えた私は書道の先生こと墨田いちえさんに提出し、スタジオで採点を待ちます。


続いて書道三段所有の俳優さんの神谷涼太さん、シャンプーでコンビ芸人をしている赤間蓮太郎さんも書き終えてスタジオに合流しました。


ひまわり先輩はどうやら一番乗りで、自信ありげに鼻歌を歌っていました。


はな先輩が遅れて合流し、ついに収録の時が来ました。


「さぁ始まりました!関西芸能人格付けコンテスト!司会は通天閣の島田慎一でお送りします!今回は急遽関西で撮影しております!では今回の格付けを審査される皆さんです!」


「どーもー!シャンプーの赤間蓮太郎でーす!」


「神谷涼太です。」


「月光花の春日はなです…。」


「日向ひまわりでーす!」


「紅葉もみじと申します。」


「今日は可愛い女の子が3人も!おっちゃん張り切っちゃうよ!おや、もう審査が決まったようです!では先生!」


「はい、皆さん素晴らしい作品ばかりでした。本当に学校で習ってらっしゃったんですね。」


「そんなに凄かったんや!では最初に凡人から行きましょう!では凡人4位は…シャンプーの赤間蓮太郎です!」


「嘘やーん!自信あったのにー!」


「先生!」


「はい。書かれた四字熟語は背水ノ陣ですね。これはどういうことですか?」


「何かカッコええな思て。」


「じゃあ意味は分かってへんの?」


「意味なんて考えてへんかったですわ!w」


「おーい!」


「そう!そこがね露わになってるんですよ!赤間さんは文字の響きだけで決めつけて、中身を感じなかった。文字は確かに美しいんですが、魂が空っぽだったんですよ。これを私に出そうとは…からくり人形と違いますか?」


「ぐうの音も出まへん…w」


「では3位の発表です!3位は…紅葉もみじさん!」


「はい、紅葉さんは切磋琢磨ですね。あなたは本当に気持ちが前面に出ていて、本当に切磋琢磨し合っているライバルがいるんだなって思いました。文字も美しく描かれています…が。まだ本格的な筆に慣れていないのかな?墨がやや不安定で力の入り具合いがバラバラだったね。今までは墨汁で書いてたけれど、本格的な墨で書くのははじめてかな?」


「はい…お恥ずかしながら…。」


「さっきの赤間さんより全然いいよ。これからも頑張って。」


「ありがたいお言葉ですね!では秀才の2位は…神谷涼太さん!」


「ええっ!?僕ですか?」


「書道一段がまさかの2位!?先生!」


「はい、本当に非の打ちどころがないくらい美しい字ですし、七転八起という素晴らしいテーマを書かれました。これは私も俳優にするのが惜しいくらいですね。ただ一つだけ欲を言えば…せっかく縦で書いているのだから簡単な文字を大きくシンプルにすれば見栄えもよかったと思いますね。」


「あー…バランスでしたかぁ…!」


「じゃあ最後に…1位の天才は誰なのか!?」


「私かもしれないな…。」


「緊張するよぉ…。」


「1位の天才は!?春日はなさんです!」


「え…?」


「えー!自信あったのにー!」


「じゃあ最下位の残念賞は日向ひまわりさんやね。」


「そんなー!」


「日向さんの字はこちら!」


「うわ…!」


ひまわり先輩の字を見ると、まるで小学生の高学年の字みたいにシンプルすぎていて、しかも何度も墨をつけ直した跡がくっきりと残っていました。


私みたいに巻物に筆で書くような経験がひまわり先輩にはなかったのかもしれません。


先生も学校の授業レベルだと酷評し、素人ばかりの授業では通用しても書道の世界は甘くないと私自身も痛感しました。


そして春日先輩は…


「春日さんの字はこちら!」


「うわっ!こりゃ勝てへんわ!」


「春日はな…思い出した!毎年人妖神社で正月に行われる流鏑馬(やぶさめ)と同時に書き初めで毎年世界中から賞賛を受けていた若き巫女の人だ…!生まれてからずっとやってたんじゃあ敵わないか…!」


「それにね、はなって書道では学校一なんだよ!幼稚園の頃からずっと見てきたからね!」


「どや顔でそう言うけど、アンタ最下位やで?今まで本当に春日さんの字を見てたんやないの?」


「それ言わないでー!」


「それはさておき…先生!」


「これは参りました…!私以上のクオリティですよ!テーマは一期一会、これは何か意味があるのですか?」


「はい、えっと…幼なじみのひまわりちゃんと出会ってから、ずっと一緒に遊んでて、アイドルに誘われて…。最初はアイドルに興味がなく、絶対無理だって思ってました。でもいざやってみると、みんなも応援してくれるし、優しい仲間にも出会えました。だから…感謝を込めてこの四字熟語にしました。」


「シンプルな文字だからこそ遊び心もあるし、一画ごとに丁寧さと繊細さを感じます。それに墨の(つや)も自然で素晴らしいです。完敗しました。」


「あの…そう言えば隣の楽屋で、はな先輩がインタビューするスタッフに…少し静かにしてください!って大声で説得してたの聞こえました。はな先輩って、普段は引っ込み思案だけど、書道になるとすごい集中力なんですね。物音一つ立てても気付いてませんでした。」


「もみじちゃん…それ言わないで…!恥ずかしいから隠していたのに…!」


「それでスタッフさんがビックリして急に出入りしない方がええでって言ってたんや…!見事天才に選ばれたのは春日はなさんでした!」


はな先輩の意外な一面を見れて、私はまた仲間の事を知ることが出来ました。


ひまわり先輩は残念ランクになった事がショックだったのでしょうか、悔しそうにかき氷を楽屋で食べていました。


はな先輩は書道と流鏑馬、ひまわり先輩は囲碁や将棋、そしてオセロで戦局を読み戦況を変えるのに長けていて、個性的な皆さんと共にアイドルをやれて、私は幸せかもしれません。


つづく!

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