第6話 1番でありたい!
「……え?」
「あー、だからそんな仲良いんだ?」
沙月の言葉に、はい! っと元気よく頷く美雨ちゃん。
確かに、改めて見れば顔が似ているような気もするけど……。双子? 本当に?
「そう、アタシら仲良し姉妹」
2人は方を組みながら、ギャルピースをこちらに向けてくる。
なんだよ、2人とも可愛すぎるだろうが!
「へぇー、双子ってことだよね」
「あ、いえ! 違うんです! 私の誕生日が4月2日で、日向が3月31日なんです! ほぼ1年差なんですけど、学年は同じで……」
なんだって!?
双子だと思って話を聞いていたけど、そんなの、凄い奇跡じゃない!?
ありがとう神様。この2人に出会わせてくれて。
「凄い確率だよねそれ。仲良いのも納得だな」
でも、姉妹なら良かった。
もしかしたら恋人同士なのかもなんて思ってしまったけど、ただの私の勘違いだった!
「そうなんです! 私たち、本当に奇跡の姉妹なんですよ! 昔から好みも似てて、ほとんど双子みたいなもんなんですけどね!」
なんだろう、惚気られている気分だ。
「そうそう、アタシら好みが一緒だからさ。惚れる相手も同じってワケ」
頭に感触がある。なんだ、これは?
見上げてみると、そこには日向さんの綺麗な手が乗っかっていることに気づいた。
ポンポンと頭を撫でると、その手は離れ言ってしまった。
「じゃ、また明日ね。雪ちゃん」
「また明日! お話しましょう!」
「うん、また明日ね」
「え……? あ、え? また明日……」
何故、誰も何も触れないんだ??
私は今、頭を撫でられたのに!!!?
え、え、なんで??? もしかして日向さん私の事好き?? でも、ごめんなさい。私には美雨ちゃんがいるの……。いやでも、美雨ちゃんは他に好きな人がいるし……!!
「頭、撫でられてたね」
「そうだよ! なんで誰もそのことに触れないの??!」
くすくすと笑う沙月と、また家に向かって足を動かし始めた。
「あんな綺麗な人に撫でられるなんて、面食いの雪はさぞ嬉しかったでしょ」
「よくわかったね。でも、それなら美雨ちゃんの方が良かったなとか思ったり」
「あーあ、日向さん可哀想」
「あ、いや、別に嫌だったとかじゃなくて!」
身振り手振りで誤解だと表現すると、沙月はまた笑っている。
そんなことよりも、美雨ちゃんに妹がいるということが知れたのはとても素晴らしい成果なのでは??
「ねぇ、沙月。今の私はとても気分が良いから、話聞いてよ」
「……はあ。家、あんま片付いてないけどいいよね」
「ありがとう、沙月」
2人で沙月の家へと向かい、玄関の扉を開く。
お邪魔します、と言葉を発するが、何も返事はなかった。
「あ、今親いないんだよね。すぐ帰ってくるとは思うけど」
「そうなんだ。嫌われちゃったのかと思ったよ」
いつもならいらっしゃい、と優しく声をかけてくれるはずが、返事がないとびっくりしてしまう。
嫌われてしまったのかと思ったが、そうでは無いということが分かり、胸を撫で下ろす。
本当に、本当に良かった!
「ちょっと返事がないだけで気にしすぎ」
沙月の部屋は2階にある。階段を登り、『沙月』と書かれた札が下げられている扉が目に付いた。
「なんか久しぶりに来た気がする」
「それ、3日前も言ってた」
ドアノブに手をかけ、沙月が扉を開いた。
目の前に広がる景色は、とても綺麗と呼べるものではない。
小さい頃から沙月は片付けが苦手らしく、私は家に遊びに行く度に部屋の片付けを手伝っている。
沙月の家に来た時のルーティンはこうだ。
1、親御さんと挨拶する。
2、沙月の部屋を片付ける。
3、片付けが終わったと同時に沙月のお母さんがお菓子を持って部屋を訪れる。
「よし、やろう」
まずは床に散らばった服やゴミを片付ける。
今日はまだ床が見えている分やりやすい。
少しずつ沙月も片付けが慣れてきたようで、ここ数年は直ぐに終わらせることができるようになっていた。
今日も今日とて、いつも通り素早く終わらせることができた。
「やっぱり、1家に1台は雪が必要だ」
「沙月が片付け出来るようになれば良いだけでしょ」
綺麗な部屋は空気が違う。
2人で床に寝転がり、ここに来た目的を忘れながらも、まあいいかとこの時間を楽しむことにした。
「あら、やっぱり来てたのね」
ノック音と共に現れたのは、綺麗な女性。
「お母さん。帰ってたんだ?」
手にお茶菓子を持った沙月のお母さんが、ニコニコと笑顔で立っている。
さっきまでは居なかったはずなのに、片付けが終わった途端現れるなんて。本当に、この人は怖い。
「お邪魔してます」
「ふふ。怖がらないで? 母親の勘ってやつよ」
なるほど。母親って凄いんだな。
お茶菓子を机に置くと、直ぐに部屋を出ていってしまった。
「で? 何するんだっけ」
「忘れちゃったけど、このまま寝転んで過ごすのも悪くないね」
沙月とは昔からの知り合いというのもあって、そばに居ると落ち着く。
私の心の安定剤となっているのは、間違いなく彼女だ。
だからこそ、頼りすぎては行けないと私もわかっている。依存しすぎてしまえば、お互いに苦しくなってしまうから。
「あ、そういえば。好きな人って仲良いの?」
「え……。あー、仲良いよ」
沙月の好きな人。きっと、素敵な人なんだろうなとは思う。でも、やっぱり少し寂しい。
私は自由気ままに恋をしているくせにこんなことを言う権利なんて無いけど、沙月には恋人ができないで欲しい。
……なんて、そんな我儘言えるわけないけど。
「ふーん。私とどっちが仲良いの」
「何その質問。嫉妬?」
ニヤニヤと話す沙月を見て、ムスッと口を膨らませる。
そうです!! 嫉妬ですー!!
「別に? ただ、私が1番沙月と仲良いと思ってるから」
「そう。私も雪が1番仲良いと思ってるよ」
う、嬉しい!!
沙月がこんなことを言うなんて珍しい。今の私は喜びが隠せていないだろう。
「ふ、ふーん! ならいいけど!」
「ホント、雪は可愛いね」
「なっ!!?」
愛おしいものを見るような沙月の目に、不覚にもときめいてしまった。
どうせ、いつものようにふざけているだけなはずなのに。
ドクドクと激しく鼓動する心臓の音が聞こえないように、私はゆっくりと深呼吸をした。




