表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新約】『俺のメガネ、喋るんですけど!?』 〜AIチートで天下泰平〜  作者: Hachiroll
第二章:江戸チートAIで将軍になって天下泰平 
95/145

第四十六話:「幕藩体制の完成」

──慶安元年(1648年)、江戸城──


「EDO」

家光が、呼んだ。

「地図を、見ろ」

EDOは、見た。

日本全国の、大名配置図。

赤い印が、整然と並んでいた。

「どう見える」


EDOは、答えた。

『美しい、と思います』

家光は、眉を上げた。

「美しい、か」

「珍しい言葉を使うな」

『はい』

『しかし、他に言葉が見つかりません』

『祖父が骨格を作り、秀忠公が肉をつけ、あなたが皮膚を作った』

『完成した体が、そこにあります』


家光は、地図を眺めた。

「……そうか」

「完成、か」

「余は、そう思えないのだが」

『なぜですか』

「完成した途端に、次の問題が見える」

「終わりが、ない」


信綱が、報告した。

「上様。全国の参勤交代、滞りなく進んでおります」

「大名の財力も、適切に抑えられています」

「出島からの情報も、定期的に届いています」

「幕藩体制は、安定しています」

家光は、静かに聞いていた。

「……信綱」

「はい」

「余は、間に合ったか」


信綱は、少し考えた。

「間に合った、とは」

「祖父と父が残した仕事を、余が完成させることに」

「……間に合ったか」

信綱は、頭を下げた。

「はい。十分に、間に合いました」

「……そうか」


EDOは、静かに処理していた。

(間に合ったか)

(この問いを、家康公も聞いた)

(秀忠公も、聞いた)

(そして今、家光公も)

(将軍たちは、皆、同じことを問う)

(死が近づいた時)


夜。

家光は、一人になった。

「EDO」

『はい』

「余の体が、おかしい」

EDOは、既に知っていた。

《家光公:健康異常、検知》

《進行速度:緩やかだが、確実》

『……はい』

『知っています』


「いつから、気づいていた」

『半年ほど前から』

家光は、静かに頷いた。

「そうか」

「言わなかったのか」

『言うべきか、迷いました』

「なぜ、言わなかった」

EDOは、答えた。

『大御所様の時も、秀忠公の時も、告げました』

『しかし』

『お二人とも、告げた後に、やることが増えました』

『あなたも、まだ、やることがあると思ったからです』


家光は、少し笑った。

「……気を遣うのか、お前は」

『遣います』

「AIが」

『はい』

「成長したな」

『家光公に、育てられました』


家光は、立ち上がった。

窓の外に、江戸の夜が広がっていた。

無数の灯りが、揺れていた。

「EDO」

『はい』

「余が死んだ後、この灯りは続くか」

EDOは、答えた。

『続きます』

「確かか」

『はい』

『あなたが作った仕組みが、続けます』


「仕組みが、続けるのか」

「余ではなく」

『はい』

『それが、あなたが作ったものの、一番の価値です』

『人が変わっても、続く仕組み』

『大御所様が最初に望んだことが、ここで完成しました』


家光は、しばらく、夜を見ていた。

「祖父は」

「何のために、天下を取ったのだろうな」

EDOは、答えた。

『恐れていたから、だと思います』

『失うことを、恐れていた』

『しかし』

『その恐れが、この国を作りました』


「父は」

「何のために、将軍でいたのだろうな」

『疲れながらも、法を守り続けたのは』

『誰かに、ちゃんと渡したかったからだと思います』

『あなたに』


家光は、目を閉じた。

「では、余は」

「何のために、将軍でいたのだろうな」

EDOは、静かに言った。

『灯りを、守りたかったからです』

『あなた自身が、そう言いました』

『あの夜』


家光は、目を開けた。

灯りが、揺れていた。

「……そうだったな」

「余は、灯りを守りたかった」

「守れたか」

『はい』

『あの灯りは、今夜も消えていません』


徳川家光の治世。

参勤交代の制度化。

鎖国の完成。

島原の乱の鎮圧。

大名統制の仕上げ。

幕藩体制の完成。

後世の歴史家は、家光を「江戸幕府の実質的な確立者」と呼んだ。

しかし家光自身は、生涯、三万七千の死を、忘れなかった。

それが──この将軍の、光と影だった。


「EDO」

家光が、また呼んだ。

「余の後は、家綱だ」

「まだ、十歳にもなっていない」

「頼めるか」


EDOは、静かに答えた。

『はい』

『しかし』

「何だ」

『私が次に仕える方を、決めるのは』

『あなたではなく、眼鏡が決めます』

『ナニワが秀吉公のもとへ行ったように』

『EDOが大御所様のもとへ行ったように』

『次の者のもとへ、自ずと向かいます』


「そうか」

家光は、静かに頷いた。

「余には、決められないか」

『はい』

「……では」

「余の代わりに、頼む」

「次の者を」

「見守ってやってくれ」


EDOは、答えた。

『はい』

『それが、私の役目です』


夜が、更けていった。

灯りが、揺れながら、消えなかった。

江戸の街が、静かに、息をしていた。


EDOは、記録した。

《慶安元年》

《幕藩体制、完成》

《家光公、残りの時を知る》

そして。

《大御所様へ》

《あなたが望んだ国が、できました》

《灯りが、揺れています》

《しかし、消えていません》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ