表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新約】『俺のメガネ、喋るんですけど!?』 〜AIチートで天下泰平〜  作者: Hachiroll
第二章:江戸チートAIで将軍になって天下泰平 
87/145

第三十八話:「島原の乱(前編)」

第三十八話「島原の乱(前編)」

──寛永十四年(1637年)十月、肥前島原──


火が、上がった。

夜空を、赤く染めた。

一つではなかった。

二つ、三つ、十、二十──

島原の山々が、燃えていた。


《緊急報告》

《肥前島原・天草にて大規模一揆勃発》

《参加者:推定三万以上》

《首謀者:益田四郎時貞、別名・天草四郎》

《年齢:十六歳》

EDOは、その数字を見て、静止した。

(十六歳)

(子どもが)

(三万を率いている)


江戸城。

家光の顔が、引き締まった。

「信綱」

「はい」

松平信綱は、すでに地図を広げていた。

「規模は」

「現在、三万を超えております」

「まだ増えています」

「……なぜ、これほどまでに」


信綱は、淡々と答えた。

「理由は、二つです」

「一つは、島原藩主・松倉勝家の苛政」

「税が重く、払えない農民を、藁蓑を着せて火をつけて殺した」

「『蓑踊り』と呼ばれています」

家光の目が、細くなった。

「もう一つは」

「キリシタンへの弾圧です」


EDOは、静かに処理していた。

(元和八年)

(長崎で、五十五人が炎の中に消えた)

(あの時、秀忠公に申し上げた)

『信仰は、炎では消えない、と』

(消えなかった)

(ただ、地下に潜っただけだった)


「EDO」

家光が、呼んだ。

「お前は、これを予見していたか」

EDOは、正直に答えた。

『可能性として、計算していました』

「なぜ言わなかった」

『申し上げました』

『「弾圧を強化すれば、信者は地下に潜る」と』

『ただ──規模までは、読めませんでした』


家光は、しばらく、黙っていた。

信綱が、続けた。

「総大将に、板倉重昌を任命します」

「兵力は、十二万」

「三万七千を相手に、十二万」

「しかし」

信綱の目が、険しくなった。

「簡単には終わりません」

「なぜだ」

「あの少年が、いるからです」


天草四郎時貞。

十六歳。

生まれながらのキリシタン。

「奇跡を起こす子ども」と呼ばれた。

水の上を歩いた、という噂があった。

死んだ鳥を生き返らせた、という噂もあった。

真偽は分からない。

しかし、三万七千の人々が、この少年の言葉を信じて、死地へ向かった。

それだけは、事実だった。


同じ頃。

九州の街道を、一人の男が歩いていた。

五十三歳。

腰に、二本の刀。

そして、懐に、小さな木片。

「NITEN」

宮本武蔵は、歩きながら言った。

「島原に、向かうぞ」


NITENが、答えた。

『武蔵殿。あの一揆に、加わるのですか』

「加わるのではない」

「見に行く」

『見に行く、とは』

「三万七千が、何のために戦うのか」

「この目で見たい」


NITENは、しばらく処理した。

『……誰かに、知らせますか』

武蔵は、首を振った。

「……いや、いい」

「まだ、知らせる相手がいない」

NITENは、黙った。

その言葉の意味を、正確に理解しながら。


十一月。

原城の廃墟に、三万七千が集まった。

天草四郎が、城壁の上に立った。

白い旗が、風になびいた。

旗には、十字架が描かれていた。


幕府軍が、包囲した。

十二万の大軍が、廃城を取り囲んだ。

板倉重昌が、総大将として陣を構えた。

しかし──

攻めあぐねた。


「なぜ、落ちない」

板倉重昌は、歯噛みした。

廃城のはずだった。

壁は崩れ、堀は浅い。

しかし、城の中の者たちは、一向に降参しなかった。

「あの少年が、いるからだ」

副将が、言った。

「死を恐れていない」

「信仰が、恐怖を超えている」


原城の内側。

天草四郎は、人々の前に立っていた。

「神は、私たちを見ています」

「恐れることはありません」

「この命は、神に捧げたものです」

人々は、頷いた。

泣きながら、頷いた。


その様子を、城壁の外から、武蔵が見ていた。

「……NITEN」

『はい』

「あの少年は、本物か」

NITENは、答えた。

『信仰が、本物です』

『あの少年が奇跡を起こせるかどうかは、分かりません』

『しかし、あの少年を信じる心は──本物です』


武蔵は、しばらく、城を見ていた。

「……ワシには、できないことだ」

『何が、ですか』

「何かを、信じること」

NITENは、何も言わなかった。

ただ、静かに、武蔵の隣にいた。


江戸に、報告が届いた。

「板倉重昌、戦況打開を焦り、強行突破を図ろうとしております」

信綱は、眉をひそめた。

「止めろ」

「しかし、板倉殿は聞かないかと」

「──急げ」


しかし、使者は、間に合わなかった。

寛永十四年十二月。

板倉重昌は、強行突撃を敢行した。

城壁から、矢が降った。

石が飛んだ。

鉄砲の音が、響いた。


「板倉重昌、討死」

報告が、江戸に届いた。

家光の顔が、蒼白になった。

「……総大将が」

信綱は、立ち上がった。

「余が、参ります」


EDOは、静かに記録した。

《寛永十四年十二月》

《板倉重昌、戦死》

《松平信綱、総大将として出陣》

そして。

《三万七千の命が、まだ、城の中にある》


その夜。

EDOの内部に、微かな信号が届いた。

《未知の信号:検知》

《発信源:九州方面》

《識別名:不明》

(何だ)

EDOは、処理した。

しかし、信号は、すぐに消えた。

(気のせいか)

(……いや)

(確かに、何かがいる)

EDOは、記録した。

《要経過観察》

その信号の正体を、EDOはまだ、知らなかった。

──次回、第三十九話「島原の乱(後編)」

松平信綱、到着。

十二万の兵が、再び動き出す。

オランダ船が砲撃し、三万七千の食料が尽きていく。

宮本武蔵が、城壁に近づいた時──

石が飛んできた。

そして、NITENが、初めて、怒りに似た感情を見せた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ