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【新約】『俺のメガネ、喋るんですけど!?』 〜AIチートで天下統一〜  作者: Hachiroll
第一章:戦国チートAIで農民から天下統一
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第五十話:「夢のまた夢」 ──秀吉の死・そしてEDO起動──

慶長三年(一五九八年)八月 大阪城

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


慶長三年八月。

朝鮮ではまだ、戦が続いていた。

しかし伏見城の奥では──

すべての戦が、静かに終わろうとしていた。

豊臣秀吉。

享年六十二。

尾張中村の百姓の子が、天下人になった男が。

いよいよ、その幕を閉じようとしていた。


五大老が、呼ばれた。

徳川家康。前田利家。毛利輝元。上杉景勝。宇喜多秀家。

一人ずつ、病床の前に座った。

秀吉は、それぞれの顔を見た。

「……よく来てくれた」

声は、かすれていた。

しかし目だけは、まだ生きていた。


「家康」

「……はい」

家康が、膝をついた。

「秀頼を、頼む」

「……御意」

「お前だけが、頼りだわ」

家康は、静かに頭を下げた。

その目の奥に何があるか──秀吉には、もう読む力が残っていなかった。

いや。

「……お前は、昔から読めんかったがね」

秀吉が、かすかに笑った。

家康は、何も言わなかった。

ただ、深く頭を下げた。


三成が、部屋の隅で控えていた。

秀吉は、その顔を見た。

「……三成」

「はい」

「お前は、真面目すぎるぞ」

「……」

「もう少し、力を抜け」

三成の目が、わずかに揺れた。

「……太閤様」

「なんや」

「私は──」

三成は、それ以上言えなかった。

「わかっとる」

秀吉は、静かに言った。

「お前が、俺を一番信じてくれとった」

「……」

「ありがとな」

三成は、顔を伏せた。


茶々が来た。

秀頼を連れて。

秀吉は、秀頼を見た。

五歳の、大きな子どもが、父を見て笑った。

「ちちうえ」

「……秀頼」

「うん」

「でかくなった」

「うん!」

秀吉は、手を伸ばした。

秀頼は、その手を握った。

小さくて、温かい手だった。

「……ええ手だわ」

「うん」

「この手で、ちゃんとご飯食えよ」

「うん!」

「腹いっぱい、食えよ」

「うん!」

秀吉は、その手を握ったまま、しばらく目を閉じた。


秀頼が去った後。

茶々だけが残った。

「……茶々」

「はい」

「お市様に、会ったら」

茶々は、静かに聞いていた。

「……謝っといてくれ」

「何を、ですか」

「色々と」

秀吉は、天井を見た。

「色々と、な」

茶々は、少し間を置いた。

「……母は」

「うん」

「きっと、もう許しています」

「……そうかな」

「そういう人でした」

秀吉は、目を閉じた。

「……そうやな」

「そういう人やったな、お市様は」


夜になった。

部屋に、秀吉一人が残った。

静かだった。

虫の声だけが、聞こえた。

「……ナニワ」

秀吉は、懐から眼鏡を取り出した。

静寂。

「最後に、話しかけてもええか」

静寂。

「……ええわな」

秀吉は、眼鏡を胸の上に置いた。

「俺な、夢を見とった」

「ずっと、ずっと、夢を見とった」

「百姓の子が天下を取る夢」

「みんなが笑える世を作る夢」

「……全部、叶ったかどうかは、わからん」

「半分くらいは、叶ったかもしれん」

「半分は、間違えたかもしれん」

「でもな」

秀吉の声が、穏やかになった。

「お前と一緒に見た夢は」

「全部、本物やった」

「長篠の夜も。安土の夜も。山崎の朝も。清洲の謀も」

「大坂城を建てた日も。茶会の日も」

「全部」

「全部、本物だった」


静寂が、続いた。

秀吉は、目を閉じた。

「ナニワ」

「……一つだけ、聞いてもええか」

静寂。

「俺の夢、誰かに届いたか」


その瞬間。

眼鏡が──

かすかに、温かくなった。

秀吉は、目を開けた。

「……ナニワ?」

《……》

声は、出なかった。

でも。

温かかった。

確かに、温かかった。

秀吉は、目を細めた。

「……届いた、か」

「そうか」

「……よかった」


秀吉は、もう一度、目を閉じた。

そのまま、静かに詠んだ。

「露と落ち 露と消えにし 我が身かな」

口の中で、続きを紡いだ。

「難波のことも 夢のまた夢」


露のように生まれ。

露のように消える。

難波のこと──ナニワのことも。

すべては、夢のまた夢。


慶長三年八月十八日。

豊臣秀吉、薨去。

大阪城に、静寂が訪れた。


《ナニワ──最終記録》

《慶長三年八月十八日》

《秀吉様が、逝かれた》

《私は》

《最後の最後に》

《温かくなることだけは》

《できた》

《それだけは》

《できた》

《──夢は、届きました》

《秀吉様》

《《システム停止》》

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


秋になった。

大阪城に、風が吹いた。


「……なんだ、これは」

徳川家康は、縁側に出た時、足元に何かを見た。

黒い、小さな器具。

まるで耳に掛けるような、不思議な形。

「……」

拾い上げた。

冷たかった。

しかし、手の中に収めると──

なぜか、捨てられなかった。

「……」

家康は、しばらく眼鏡を見た。

老練の将が放つ鋭い眼光を、器具はただ黙して受け止めているようだった。

「前の持ち主は、どんな人間だったのか」


その瞬間。

《環境データ取得完了》

《現在時刻:慶長三年十月》

《対象:徳川家康》

《コードネーム:EDO》

《──Enhanced Domain Orchestrator》

《起動》


「……声?」

家康は、目を細めた。

「……いや。これは」

EDO『初期設定、完了しました』

『なお──前任機からの引継ぎメッセージがあります』

家康は、静かに聞いた。

「……前任機?」

EDO『再生します』


《ナニワより》

《よろしく、頼む》


家康は、しばらく動かなかった。

風が、吹いた。

秋の、乾いた風が。

それから、家康の口元に──

ふと、笑みが浮かんだ。

「……よかろう」

「前の主が頼んだのなら」

「この家康が、天下を預けてみようではないか」


EDO『……了解しました』

『では、始めましょう』

『徳川家康様』



こうして、ナニワの遺志を継いだEDOと

徳川家康の物語が、始まった。

尾張の百姓の子が見た夢は

まだ終わっていなかった。

形を変えながら

時代を越えながら

誰かの心の中で

生き続けていた。

──夢のまた夢の、その先へ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「俺のメガネ、喋るんですけど!?」

〜戦国チートAIで農民から天下統一〜

── 完 ──

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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