060、残る者と旅立つ者
筆者執筆AI修正
紅孩公国の港。狐火和国行きの船が間もなく到着する頃、スキアはニーチェ、サンと握手を交わしながら言った。
「今までありがとう。そして、本当にここに残るんだな?」
サンは少し照れくさそうに笑う。
「ここは、ずっと長い間いたから、第2の故郷みたいになったんです。もう放ってどこかに行くって出来なくて……」
ニーチェもにこやかに続ける。
「国民の方たちも私たちを受け入れ、信頼して下さっています。それに応えるために、私たちはここで暮らす選択をしました。サンも私も長い間考えて出した結論です。スキア様には後押ししていただけると嬉しいです」
レインは二人に笑顔で言葉を送った。
「うん、頑張って」
スキアは静かに微笑む。
「お前たちならどこでも上手くやれる。頑張れよ」
ニーチェは深く頭を下げ、サンは元気よく返す。
「ありがとうございます。我が主」
「ありがとう。お嬢も元気で!」
スキアは踵を返し、船へと向かう。付き従うレイン。港に残る二人は手を振り、見送った。
船上に移動すると、海風が二人を包む。夏の日差しでやや汗ばむ肌に、心地よい風が吹き抜けた。しばしの沈黙のあと、スキアは言葉を紡ぐ。
「旅に出てからずっと一緒だったからな。当時は私に付き従うだけだった彼らが、自立して活動している。正直、感慨深いよ」
レインは静かに頷いた。
「うん。二人とも、すごく成長した。きっと、レン嬢も喜んでる」
「そうだな。連狼も、二人がいるから修復師として活動できると言っていた。街を守っているのは案外、サンたち自警団かもしれないな」
「みんな揃って守ってるんだよ。自警団も、修復師も、縫界衛士も。どれも欠けたら国民は守れない。だから大事」
スキアは風に目を細め、頷く。
しばしの間、二人は海を見つめた。やがてレインが口を開く。
「兄さんは、なんで狐火和国へ?」
スキアは肩越しに答えた。
「連狼から、古き友が修復師として活動していると聞いた。白雪とも旧知の仲らしい。一度、しっかり挨拶をしに行きたくてな」
レインは得心したように頷く。
「なるほどね」
そしてスキアは思案したことを、素直に口にした。
「レインは俺と一緒でいいのか? 紅孩公国でも人気だったろう?」
レインは少し考え、スキアの目を見て答えた。
「兄さん一人じゃ心配。考えが暴走した時にブレーキが必要」
スキアは驚きながらも、安堵のように微笑む。
「ありがとう。その一言だけで、自分を律することが出来る」
レインはくすりと笑い、瞳を輝かせる。
「それで良し」
二人は信念を胸に、新たな地「狐火和国」へと向かうのだった。
スキアが紅孩公国に訪れてから約3年。
地域限定修復師が浸透した国を見て、もうやることはないと旅立ちを決意。
サンとニーチェは長年苦楽を共にしたスキアとレインのもとを離れ国に残る。
いかに彼らが紅孩公国に根付いていたかが分かりますね。




