2.国王よりも…
翌日、俺とイリーナは国民と共に畑を耕すという事をする。ジョニーとセリーヌは家で勉強。
俺は国民に慕われていると思う。……多分。
「こくおー、あ、おうひさまもいっしょだ!」
なぜ?“こくおー”で、おうひは“さま”なんだ?
「おうひさまー、きょうもべんきょーおしえてー」
馴れ馴れしいな。
「うふふ、いいわよ。確か文字は読めるようになったのよね?今度は簡単な計算が出来るようになるといいわね。他の子とも競争よ!」
「おれがいちばんにできるようになるんだ!」
「おれだ!」「わたしだもん!」
子供は“競争”って言うと張り切るよなぁ。
「国王様、おかげで平民たちの識字率が上がっています。ありがたいことです」
「お、おう」(俺はイリーナがとられて寂しい……)
「国王様も自らが畑仕事をしてくださり、国民としてなんと嬉しいことか!」
拝まないでほしい。
「今日はどこを耕すんだ?」
「今日は野菜の収穫を手伝ってください」
「野菜……。俺は食事に出たものしか見たことがない。勉強になるな」
「たいしたことじゃないですよ~」
その日の収穫は大漁。
「国王様、お口に合いますかわかりませんが、たくさんありますので一部持っていってください」
「いいのか?国王が国民の食を奪うようなことをしては……」
「違います、違います!このままでは傷んでしまいますので、国王様にも是非とも採りたてのものを食べて頂きたいのです」
「うーん、そのような理由ならばありがたく頂戴しようか……」
(どうやって持って帰ろう?)
「セドリック様~!」
この声は!愛しの我が妻イリーナ!
「「「こくおー!」」」
うん、元気な子供達だな。
「今日の畑仕事は終わりましたか?」
「今日は耕すのではなく、収穫を手伝った。それでな、採りたての野菜を頂いたんだ」
「まぁ!うちのあの子達、野菜嫌いですけど食べるでしょうか?」
「おうひさま、おうひさま!とりたてのやさいっておいしいんだよ」
「物知りなのね」
「えへへ。おうひさまにほめられちゃったぁ」
(くそっ、ナマイキな!)
狭量と言われようと、そう思うのだ!…独占欲?ふんっ、何とでも言え!
「心配するなよ、イリーナ。美味しいならうちの子供達も食べるだろうな」
うちは贅沢はしてないんだ。ただ……料理人は雇っている。
イリーナは料理できないし、もちろん俺もできないし……。
で、料理できる人間が誰もいないから必然なのだ!
「ワーグ!今日、手伝った所から礼に野菜を貰ったからたーんと使ってくれよな」
この男は、俺の幼馴染。
公爵家の三男だから昔はすこーしヤンチャだったんだなぁ。
今や更生してうちで料理人してる。いやぁ、人生ってわからないもんだ。うん。
「「ワーグの料理好き!」」
と子供達に愛されて(?)いる。羨ましい。
あぁ、うちは一応城なんだけど、使ってないところは普段は使っていない。謁見の間とか?応接室でいいじゃん。
謁見の間はデビュタントの時に使うくらいかなぁ?年一回に大掃除みたいな?シャンデリアに蜘蛛の巣張ってるんじゃないかな?
食堂?ないない。城だけど、4人家族が生活するのに必要なところしか掃除とか頼んでないし。
ワーグは厨房は自分で掃除してるなぁ。「ここは俺の城だ!」って。
「ずいぶんとイキがいい野菜だな?」
「俺が収穫した!」
俺はドヤ顔だったと思う。初めてだったし。
「陛下、というかセドリック……その顔はどうかと思うぞ?つまり、今日収穫してきたんだな?これらの野菜は有難く使わせてもらう」
ワーグは笑顔で鼻歌交じりだ。
「え~、今日はお野菜なの?」
「殿下、ワーグの料理です。驚くほど美味しく作りますよ!王女殿下も!そんな膨れた顔してないで!」
「うん、ワーグを信じる!」
ワーグの信頼度、高いなぁ……。いいなぁ、子供達に慕われて…。お、俺だって慕われてないわけじゃないぞ!そこは重要!!
「あとねぇ、ワーグには“殿下”じゃなくて、“ジョニー”って呼ばれたいんだ」
さすがにワーグが目を丸くしてるぞ?どうするんだ?ワーグ?
「では、これからは“ジョニー様”と呼びますよ。いいですか?」
「じゃあ、私も私もー!」
セリーヌがぴょんこぴょんこオネダリしてるぞ。どうするんだ?
「王女殿下は“セリーヌ様”と呼びますね」
「「やったー!!」」
喜んで双子は厨房から自分たちの部屋まで走って行った。
「おい、いいのか?」
「そっちの方で帝王学やら淑女教育してくれや。俺のとこで息抜きできればいいじゃん♪」
ま、そうだなぁ。と俺は思う。
かつて、この城で帝王学を学んでいた時の息抜きも必要だったからな。
確か、庭に来た鷹と遊んでいたな。今そいつは立派な伝書タカになってるけど。俺はタカ狩りもできるし。
その日の夜に出た野菜料理は、双子は野菜嫌いのはずなのに完食した。
ワーグ・マジックが炸裂☆コドモタチ ハ ヤサイ ヲ クリアシタ☆