第一話「ココハ、クダモノワールド」
――空は青かった。
雲は浮かび、太陽は照り、風が吹いている。
少なくとも、俺はそう思っていた。
「……ここ、どこだ?」
見渡しても、見覚えのない景色だった。
大地には巨大な果物のような建物が並び、見たところどうやら都会のようだ。
そして何より。
「……なんで噴水に俺は落ちてんだ?」
俺は頭を掻いた。
自分の服を見る。びしょびしょだ。
茶色の濡れた髪。
グレーの冒険服。
そして、なぜか頭には薄紫色のバンダナ。
そして腕には血とその傷で描いた文字。
《チキュウ・ジン》
「俺……何してたんだっけ」
思い出そうとする。
だが、記憶が妙に曖昧だった。
その時。
「おーい!」
声がした。
振り返る。
そこにいたのは同い年くらいの男の子だった。
「なんか凄い水の音がしたけど大丈夫か?」
「…………?」
俺は首を傾げた。
(水の音?)
「ひょっとして俺、空から落ちてきた?」
「恐らくそうだけど」
俺は数秒黙った。
「いや、そんなことありえる?じゃあ俺死んでるって事!?」
その俺に笑いながらその男の子は噴水に佇む薄紫のバンダナの少年。つまり俺へ手を差し伸べた。
「生きてるよ」
その笑みで少し俺は安心する。
「俺の名前は多分"チキュウ"。よろしく」
「俺はアボガド。よろしく」
そうして"二人"は仲良くなった。
そのあと、チキュウはこの世界『クダモノワールド』について知っていく。
「地球という惑星を公転するもう一つの惑星。それがここ。クダモノワールドさ」
アボガドの自信のある説明を聞いていたチキュウは果物モチーフの建物が並ぶ街を歩いている。
街中にはブドウリスがトコトコと歩き、アップルウサギが群れていたりもした。
「街中に動物がいる!?」
「はは。何がおかしいの?やっぱり記憶喪失してるんだねチキュウ」
「そう……らしいな。この世界じゃこの光景が当たり前なんだろ?おかしいの」
チキュウとアボガドは仲良く笑っていた。
ーーその時だった。
「警報だ!チキュウ!気を付けて!」
虚空を見るとそこには電子文字が浮かび上がっていてこう書かれていた。
《警報:ナイトメア・強》
「ナイトメア……?」
チキュウが首を傾げ、アボガドは言う。
「大丈夫。ヒーローが来る。」
その時目の前に瞬時に現れた怪物。
目は紅く充血し、禍々しいデザインの本の形をした黒い巨大生命体。
それがナイトメアという存在だとチキュウは咄嗟に勘付く。
「ヒーロー?何言ってんだよ。と言おうとしたが前言撤回。
なんでも良いから助けてくれ!!」
そして二人の元へ一人の少年が現れた。
黄色のフードを被り、全体がバナナ色のチキュウとアボガドと同い年くらい。
「ナイトメア・強……!なんでも良い。今俺は忙しいんだ」
「お前その感じ、その魔力。魔女の者だな?」
「魔女の気配がわかるか。ナイトメア・強の中でも強い側だなお前」
バナナフードの男の子は生意気な態度を取る。
ナイトメア・強はそれに苛つくこともなく淡々と言う。
「魔法無効すれば魔女など取るに足らない」
《マホムロア》
ナイトメアは冷静だが、毅然としその呪文を口にする。
ーーだが、バナナはニヤリと笑う。
「それは閃光の動きを見破れたらの話だろ?」
その発言の後、バナナの周りに光が集まる。
それが一つの透き通る光の剣と化してバナナの手に握られる。
「《バナナ・一閃切り》」
ナイトメアからしたら、バナナが剣を構えた瞬間からもう斬撃が終わっていた。
「速すぎる!!」
チキュウは思わず目を輝かせそう叫んだ。
「あ、サインとか無いから。じゃあな」
バナナはそう言うと走って行ってしまった。
「普通の走りも速いのね」
チキュウの感想がポツリと溢れる。




