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EndingStoryⅡ:バイパー、最後の恋?

 その日バイパーは城に呼び出されていた。


「お、お初にお目にかかります国王様」


 なぜここに呼ばれたのかわからないバイパー。

 こっそりひっそりとずっと生きてきた彼にとって場違い極まりないこの場所に緊張して声も上ずり、震えも止まらなかった。


「そなたがバイパーか」


 レパード王の声も威圧的な恐ろしいものに聞こえていた。

 もちろんレパード王はそんなつもりはない、いつものように元気よく、明るい大きな声を発しただけだ。

 バイパーが怯え切っていることに気付かないはずはない。


「そう怯えるなバイパーよ。取って食うつもりは無い……今日は礼を言う為に呼んだのだ」

「れ……礼……?」


 自分がレパード王になにかをした覚えなどないバイパー……わけがわからず混乱していた。


「実は少々へまをしてしまったことがあってな?それを救ってくれたのがそなたがイサネに渡した薬だ、覚えはあるだろう?」

「あ……はい……イサネさん……僕の思いを……」

「死ぬほどまずかった!!むしろ死ぬかと思った!死んでいたかもしれん!!!はははははは!!!」


 レパード王なりの冗談だったが笑っているのは王だけ。

 上げて落とされた気分を味わい、血の気が引いていくバイパー。どんな使い方をしたのだろうと泣きそうになる。礼とは『お礼参り』のことなのだろうと……終わりを覚悟した。


「それがなければ世界は終わっていたかもしれぬ。」


 その声は王の声だった。


「直接的に力を添えることは余は出来なんだが……見届ける事が余の務めであったと今は理解しておる。その一端を担ったそなたに礼を……それと、ささやかながら褒美を用意した。受け取って貰いたい。」


 絶望の涙ではなく、うれし涙がバイパーの目からこぼれ落ちる。

 声が出せないでいたが、コクコクと頷いた。


「まずは余の命を救ったこと、大義である。」

「あ、ありがたき幸せにございます……!」

「そして褒美……なのだが」


 近くの兵を呼び寄せ耳打ちをするレパード王。一旦下がった兵がぞろぞろと美女を引き連れて戻ってきた。


「これはひとつめの褒美ですバイパー殿」

「ひとつめ……?フャァァァ!」

「グラウから聞いてな?見境なく女性に手を出す悪い癖があるから身を固めさせた方がいいと……褒美という形で呼び出すのはいささか女性たちに失礼にあたるやもと思ったが、余の命を救った男ならと立候補してくれた女性たちを今日招待したのだ。」


 バイパーの目が輝く……許されるならここにいるすべての女性たちと暮らしたいと思っていた。


「ありがとうございます……先日心奪われた人がいたのですが見た目の麗しさに惑わされ……ふたりきりで過ごした時その……実は男性だったものをみてしまって……またひとりになっていたのです……」

「そ、そうか……それは……ブフッ」


 レパード王はうっかりふき出してしまった。すぐに咳払いをして息を整える。


「……それともうひとつ、これが一番の褒美になればと――」

「全員じゃダメですか?!」


 レパード王の声を遮り、女性たちをできる限り自分の腕に収めながら興奮した様子で鼻をスピスピ鳴らしながら懇願した。


「う……ううむ……乙女たちが良ければ……」


 レパード王の問いかけに女性たちは頷き、次々にバイパーの頬にキスをしていった。


「ありがとうございます!ありがとうございます!!さぁ!麗しい乙女たち!僕についてきて!!」


 女性たちに囲まれながら謁見の間から出ていくバイパー……展開の速さにレパード王はついて行けず、最後の褒美の説明をする前に黙って見送ってしまった。


「なるほどグラウ……お前はおそらくイサネを獲られるかもと危惧したのだな……くくっ!」


 はぁっとため息をついて頭を抱えながらも、笑っているレパード王はひとり言のように呟いていた。


「イサネの周りには愉快な者が集まるようだ……さて……それはそれとしてバイパーの一族に通達をせよ」


 隣に立つ兵に文書を渡したレパード王……そこに書かれているのは一族にとって最上級の朗報であった。


「彼の生きてきた世界は暗闇であっただろう。だが、これからは表に立ち、余を救ったようにたくさんの人々を助ける医療の分野で活躍をしてもらうこととする。彼らの用いている薬の技術は毒を生み出すものではないのだからな」


 レパード王はバイパーだけに限らず、一族すべての者へ……王室直属の薬師として働けるよう配慮をした。

 そんなこととはつゆ知らず……バイパーは自分を慕う女性たちと共に街へ下り、中心から少し離れた場所にある屋敷へ案内されていた。


「ここは王が用意してくださった新居ですわ……遠慮なさらずお入りになって?」

「……すごい!ここが僕たちの愛の巣なんだね!」


 これを恋と呼ぶべきかはわからない……けれど、バイパーは愛し愛される喜びをやっと手に入れることができた。最後の恋として……無事に生涯を終えることができればいいのだが……。
















 ――バチンッ!!


 end

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